2025-06-08 コメント: 2件 ▼
自民党の「違法外国人ゼロ」公約は選挙前の人気取りか? 根拠なき治安不安と共生理念の空洞化
「違法外国人ゼロ」公約化に踏み切った自民党 だが治安悪化の根拠は不明確
自民党が、今夏の参議院選挙で「違法外国人ゼロ」を公約に掲げる方針を打ち出した。4日に開かれた「外国人との秩序ある共生社会実現に関する特命委員会」で政策提言がまとめられ、翌5日には石破茂首相に提出された。
委員長の小野寺五典政調会長は、「共生は大事だが、日本のルールをしっかり守ってもらう必要がある」と強調し、「違法外国人ゼロ」に向けた政策を夏の選挙公約に盛り込むとした。
だが、外国人による治安リスクの実態については、客観的なデータや具体的な統計は示されておらず、「印象だけで政策を進めている」との批判も強い。特に、外国人による重大犯罪件数の変動や、不法滞在者の実態などに関する信頼できる数字は、公約説明の中で一切示されていない。
繰り返される中身の薄い提言 政策というより“選挙アピール”?
提言に盛り込まれた内容も、すでに政府や入管庁が公表しているものが中心だ。2028年度中の導入を目指す電子渡航認証制度(日本版ESTA)や、難民申請の審査期間を現行の1年10カ月から6カ月に短縮する案など、「不法滞在者ゼロプラン」と重複するものばかり。
むしろ今回の自民党の動きは、「中身のある政策というより、選挙前のアピールに過ぎないのではないか」という疑念すら呼んでいる。
実際、ある自民党のベテラン議員は「有権者にも不安があり、受けがいい」と述べており、国民の不安感情に乗じて短期的な支持を得ようという意図が透けて見える。政党の政策は本来、国益や制度改革の視点から策定されるべきであり、支持率稼ぎの“使い捨て公約”となれば信頼を損なう結果となる。
共生社会を語りながら、ヘイト対策は「取り上げない」矛盾
さらに問題なのは、外国人への誹謗中傷やヘイトスピーチへの対策が提言に一切盛り込まれていないことだ。埼玉県川口市や蕨市では、在日クルド人住民への嫌がらせが深刻な社会問題となっているが、小野寺氏は「いわれのない誹謗中傷は、普通、あってはならないことなので、特にそこをわざわざ取り上げることではない」と説明。だが、それが現実として起きている今、「共生社会」という看板が空虚に聞こえるのは当然だ。
同様に、河野太郎前デジタル相や新藤義孝元大臣などが難民認定申請中のクルド人を「偽装難民」と断じた言動も、事実上放置されたままだ。正当な申請者まで社会的圧力の中で追い詰められている現実と、自民党の対応との間には大きな隔たりがある。
治安維持と保守的秩序の確立は必要 だが「排除」ではなく「責任ある管理」を
保守的な視点から見ても、治安の維持と国民の安全は最重要課題である。ルールを守らない者に対して毅然とした対応を取ることは当然であり、違法滞在への対処が曖昧であってはならない。しかし、それは「排除」の論理ではなく、「透明で公平な制度運用」を通じて実現されるべきだ。
また、外国人労働者や技能実習生に依存している日本の労働市場にとっても、移民政策の整備と人道的な対応は不可欠であり、単なる厳罰化では問題の解決にはつながらない。
重要なのは、ルールを明確にし、それを着実に適用することであり、選挙目当てのスローガンではなく、法治国家としての信頼を守ることだ。秩序ある共生とは「排斥」ではなく「公平な参加と責任」によって築かれる。
ネット上の反応
「結局は“選挙前に強硬姿勢アピール”ってだけだろ」
「不安だけ煽って、数字も根拠も出さないのが最悪」
「真面目に働いてる外国人が一番損する政策」
「“共生”って言うならヘイトスピーチにも対応しろ」
「このままじゃ日本の移民政策はどんどん国際的に孤立する」
「違法外国人ゼロ」は耳触りの良いフレーズだが、それが「数字なき脅し」や「一時の選挙アピール」に堕してしまえば、共生社会どころか、分断と排外感情を助長しかねない。
政治が果たすべき責任は、選挙のたびに人気取りの標語を振りかざすことではなく、現実と向き合い、制度を持続可能なものとして構築し続けることだ。日本社会の秩序を守るためにも、冷静で整合性のある政策運営が今こそ求められている。