2025-06-11 コメント投稿する ▼
沖縄県、宿泊税条例案の提出を見送り 市長会が抗議「積み上げた議論の趣旨に反する」
沖縄県の宿泊税、6月議会提案を見送り 県市長会が抗議「議論の積み重ねを無視」
沖縄県が導入を目指してきた宿泊税について、県は6月定例県議会への関係条例案の提出を見送った。これに対し、県市長会会長を務める石垣市の中山義隆市長は11日、県庁を訪れ、「これまでの協議や検討を踏みにじるものだ」として、抗議文を大城肇副知事に提出した。中山市長は、宿泊税の早期導入をあらためて強く要請した。
条例提案の見送りは、県が制度設計の見直しを進めていることが背景にあるとみられるが、市町村側は「唐突」「一方的」と強く反発。協議を重ねてきた現場からは、地方自治の信頼を揺るがしかねないとの声も上がっている。
突然の提案見送りに「プロセスの軽視」と反発
今回の見送りについて、中山市長は「これまでのプロセスをないがしろにした行為」と強く非難。抗議文では、昨年11月に検討委員会が意見を取りまとめて以降、県と関係市町村が協議を重ねて制度設計を進めてきたことに触れ、「その積み重ねを否定するような判断は到底容認できない」と批判している。
「事前に調整や通達もない唐突かつ一方的な発言だった」
「積み上げてきた議論の趣旨に反する」
「これまで協議してきた制度で、速やかに宿泊税を導入すべきだ」
と述べ、協議の成果を反故にするような県の対応に不信感をにじませた。抗議書は玉城デニー知事宛てに提出され、同席した宮古島市の嘉数登市長、名護市の渡具知武豊市長も中山市長の立場を支持した。
県は制度見直しを示唆 「課税免除」「使途自由化」も検討
玉城知事はこれまでに、宿泊税について「県民を対象から除外する方向で検討したい」と発言しており、観光振興に限定しない「法定外普通税」としての徴収の可能性にも言及している。
この方針転換に対し、市長会側は「税の意義が不明確になる」と懸念を表明。抗議書では、「観光振興目的の宿泊税は、地域の未来をつくる財源であり、住民・事業者・観光客の三者の満足度を高めることが目的」と強調し、制度の趣旨を再確認するよう求めた。
また、修学旅行生への課税免除に加え、「学校教育の一環として行われる活動」も免除対象とするよう配慮を求めている。
「宿泊税は観光地の持続可能性を支える制度であり、導入の意義は変わらない」
「一度仕切り直すのではなく、これまでの協議を尊重し、予定どおり進めるべきだ」
と、地方の意向を丁寧にくみ取るよう訴えた。
市町村主導の税導入支援も要請 県は方針に揺れ
抗議書では、もし県が「法定外普通税」としての導入を目指すのであれば、県としての観光目的税(宿泊税)導入を断念し、市町村が独自に導入する場合の支援に回るよう求めた。市町村が観光客受け入れに伴うインフラ負担を担っている実態に対し、県が責任を果たしていないと感じる首長も少なくない。
会談後、中山市長は報道陣に対し、
「大城副知事は『できるだけ早く宿泊税を実施できるよう取り組みたい』と述べていた」
「八重山出身の副知事は離島の現状を理解している。知事にしっかり助言してもらいたい」
と語り、今後の対応に期待感を示した。
SNSでも賛否の声 「遅すぎる」「拙速すぎる」
宿泊税をめぐる今回の混乱について、SNS上でも様々な反応が見られる。
「もう何年も議論してるのに、いまさら制度見直しって遅すぎる」
「観光客に負担を求める前に、県の歳出を見直すべきじゃないか」
「市町村とちゃんと話し合わずに決定を引っ込めるのは無責任」
「住民を免除するとか、曖昧な制度にするなら一度仕切り直すべき」
「観光業の現場を見ている人の声が、もっと尊重されるべき」
今回の見送りは、宿泊税を「観光地の未来をつくる財源」として捉えてきた関係者にとって、大きな後退と受け止められている。今後、県が制度設計をどう進めるのか、市町村との協調関係をどう立て直すかが問われる。