2026-03-05 コメント投稿する ▼
【夕やけだんだん】マンション建設で失われる絶景、開発と景観保護の狭間で揺れる地域
しかし今、この愛される景観が隣接するマンション建設によって危機に瀕しています。 この階段の名称は、1990年(平成2年)に公募によって決定されたもので、現在も荒川区のウェブサイトでは「美しい夕焼けを眺めることができる」場所として紹介されています。 しかし、マンション建設によって、かつてのように開けていた空は大きく遮られ、多くの人々が愛した「情緒ある景観」は、すでに失われてしまったと言えるでしょう。
夕焼けの名所「夕やけだんだん」の魅力
「夕やけだんだん」は、JR日暮里駅からほど近い場所にある36段の階段です。ここから見下ろすことができるのは、荒川区と台東区にまたがる「谷中銀座商店街」。古き良き日本の商店街の風景と、その向こうに広がる空に沈む夕日が織りなす光景は、多くの観光客や写真愛好家を惹きつけてきました。この階段の名称は、1990年(平成2年)に公募によって決定されたもので、現在も荒川区のウェブサイトでは「美しい夕焼けを眺めることができる」場所として紹介されています。この場所は、単なる階段ではなく、地域の人々にとって、そして訪れる人々にとっても、下町の風情と美しい自然を感じられる特別なシンボルとなっていたのです。
忍び寄る変化:周辺開発の影響
しかし、この素晴らしい景観は、永続的なものではありませんでした。この30年以上の歳月の中で、周辺には徐々に高い建物が建ち始め、以前のように開けた視界で夕日を眺めることが難しくなってきていました。開発の波は、静かに、しかし確実に「夕やけだんだん」の眺望に影響を与えていたのです。それでも、多くの人々は、かつての面影を残すこの場所の雰囲気を大切にし、訪れ続けていました。
新たな危機:隣接マンション建設の現実
決定的な変化が訪れたのは、2024年(令和6年)の春ごろでした。階段の南側に隣接する土地で、7階建ての分譲マンションと6階建ての賃貸マンションを建設する計画が本格的に動き出したのです。マンションが完成すれば、階段から商店街や夕日を望む眺望が大きく遮られることは、計画当初から明らかでした。SNS上では、昨秋ごろから「夕やけはもう見えない」「(建設中の)圧迫感がすごい」といった、景観の変化を惜しむ声が相次いでいました。長年この地で豆店を営む猪瀬武雄さん(83歳)も、「観光客が夕日の写真を撮る光景はめっきり少なくなった」と残念がっています。
住民の声と行政の苦悩
この事態に対し、地域住民からは「景観をなぜ守らないのか」といった苦情が荒川区に寄せられました。しかし、区の担当者は「建築主側は区の条例に基づき住民説明会を実施し、土地は私有財産であり、住民との話し合いで折り合いもついた以上、行政として無理に建設を止めることはできなかった」と説明します。日本においては、原則として自己所有の土地に何を建てるかは自由です。もし「夕やけだんだん」周辺が都市計画法に基づく景観地区などに指定されていれば、建物の高さ制限などに法的拘束力を持たせ、開発を抑制できた可能性もありました。しかし、荒川区はそうした指定を行っておらず、約20年前に指定に向けた議論があったものの、実現には至らなかったとのことです。建設主側も、当初の計画から階数を減らすなどの配慮を見せたものの、眺望への影響は避けられませんでした。
「ルール上は問題ない」が、失われたものは大きい
区の担当者は、「春や秋など、季節によっては商店街の上から日が沈むため、今後も夕焼けを楽しむことは可能」とも説明しています。しかし、マンション建設によって、かつてのように開けていた空は大きく遮られ、多くの人々が愛した「情緒ある景観」は、すでに失われてしまったと言えるでしょう。10年近く階段そばで雑貨店を営む女性店主(83歳)は、「現状を受け入れるしかないが、こうなる前になんとか手を打てなかったのか」とため息をついています。開発を進める権利と、地域が長年育んできた景観を守ることのバランスは、非常に難しい課題です。この「夕やけだんだん」を巡る出来事は、都市開発が進む現代において、私たちが失いたくないものとは何かを改めて問いかけているようです。