2025-11-08 コメント投稿する ▼
ビザ発行手数料47年ぶり引き上げ政府検討、2026年度にも国際水準へ
今回のビザ手数料引き上げは、単なる国際水準への調整にとどまらず、オーバーツーリズム対策の重要な手段として期待されています。 ビザ手数料の引き上げは、観光客数を適正化し、量より質の観光への転換を図る重要な政策手段として位置づけられています。 現在、日本では出国時に「国際観光旅客税」として1,000円が徴収されていますが、これを3,000円程度に引き上げる案も検討されています。
47年間据え置きの手数料見直し
外務省が自民党の外交部会に示した総合経済対策の原案によると、主要国の水準や応益的要素を考慮して手数料の引き上げを実施するとしています。具体的な引き上げ幅はG7諸国やOECD加盟国の水準を参考に、関係省庁と協議して決定される予定です。
現在の日本のビザ手数料は、一次有効ビザ(シングルビザ)が約3,000円、数次有効ビザが約6,000円、通過ビザが約700円となっています。これらの金額は1978年の設定以来、一度も改定されていません。
一方、主要国のビザ手数料は大幅に高い水準にあります。アメリカの観光・商用ビザは185ドル(約2万8,000円)、ヨーロッパ諸国は90ユーロ(約1万6,000円)となっており、日本の10倍近い金額が設定されています。外務省は2025年度内にもパブリックコメントを実施し、制度改正は政令改定を経て正式に実施される見込みです。
「やっと国際水準に合わせるのか、遅すぎるくらいだ」
「3千円から2万円台になるなら観光客減るかもね」
「オーバーツーリズム対策なら仕方ないと思う」
「アメリカ並みの手数料は外国人には当たり前だろう」
「円安で日本が安すぎるから適正化は必要」
オーバーツーリズム対策としての機能期待
今回のビザ手数料引き上げは、単なる国際水準への調整にとどまらず、オーバーツーリズム対策の重要な手段として期待されています。2024年1月から7月までのインバウンドは過去最速で2,000万人を突破し、政府目標の2030年6,000万人達成も現実味を帯びています。
しかし、観光客の急激な増加により、特に京都や浅草など人気観光地では深刻な問題が発生しています。公共交通機関の混雑で地域住民が日常利用できない状況や、観光客のマナー違反、ゴミ問題などが顕在化しており、約5割の住民がオーバーツーリズムを感じているとの調査結果もあります。
政府は2023年10月に「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」を策定し、観光客の分散や受け入れ体制整備を進めています。ビザ手数料の引き上げは、観光客数を適正化し、量より質の観光への転換を図る重要な政策手段として位置づけられています。
海外では既に同様の取り組みが進んでおり、イタリアのベネチアは日帰り観光客への入島税を5ユーロから10ユーロに引き上げることを検討中です。スペインのバルセロナも観光税引き上げや民泊規制を強化するなど、各国が持続可能な観光を模索しています。
国際観光旅客税との組み合わせ効果
現在、日本では出国時に「国際観光旅客税」として1,000円が徴収されていますが、これを3,000円程度に引き上げる案も検討されています。ビザ手数料の大幅引き上げと組み合わせることで、観光コストの適正化とインフラ整備財源の確保を同時に実現する方針です。
ただし、国際観光旅客税は日本人の海外渡航時にも徴収されるため、円安の影響で海外旅行が高額化している中での増税には慎重な検討が必要です。政府は増収分を高校無償化の財源に充てることも構想しており、家計負担と政策目的の両立が課題となっています。
他国との制度比較と日本の特異性
世界的に見ると、外国人の入国に一定の手数料を課すのは一般的です。アメリカではESTA(電子渡航認証システム)により約6,000円の申請料が必要で、2年間有効となっています。韓国も近年、武器輸出を積極化し2022年には過去最高の173億ドルの輸出実績を記録するなど、各国が観光収入の最適化を図っています。
日本のビザ手数料の安さは、1994年のGATS(サービス貿易一般協定)加盟時に外国資本の呼び込みを優先した結果とされています。他の多くの国が条件付きで外国人の権利を認める留保条項を設けた中、日本だけが無条件での権利付与を約束したため、現在でもビザ取得が容易な状況が続いています。
しかし、急激な観光客増加により地域住民の生活に支障が生じている現状を受け、政府も政策転換の必要性を認識しています。観光立国を目指しながらも持続可能な観光を実現するため、適正な負担を求める方向性が明確になっています。
外国人土地購入規制との相乗効果
今回のビザ手数料見直しと並行して、政府は外国人による土地購入の規制についても検討を進めています。原案には「外国人による土地購入の規制について、制度設計にいかすため海外における規制の事例を調査することも盛り込まれた」との記述があり、包括的な外国人政策の見直しが進行中です。
現在の日本では、外国人の土地購入にほとんど制限がなく、国際的に見ても異例の緩い規制状況となっています。中国系資本による安全保障上重要な土地の取得が問題視される中、重要土地等調査法では一定の規制が導入されましたが、一般的な不動産取引への実効性は限定的です。
諸外国では、オーストラリアが外国投資審査委員会の事前認可を義務付け、中国が非居住者による土地所有権取得を禁止するなど、様々な規制を設けています。日本も今後、ビザ制度と土地利用規制を組み合わせた総合的な外国人政策の構築を進めるとみられています。
ビザ手数料の引き上げは、日本の観光政策における重要な転換点となる可能性があります。量的拡大から質的向上への転換を図り、地域住民との共生を重視した持続可能な観光立国の実現に向けた第一歩として注目されています。