2025-01-14 コメント投稿する ▼
2023年11月の経常収支、3.3兆円の黒字 3カ月ぶり高水準
貿易収支の黒字転換
貿易収支は979億円の黒字で、5カ月ぶりに黒字転換しました。
輸出:半導体製造装置や非鉄金属などの輸出が増加し、全体の輸出額は8兆9104億円(前年同月比+2.8%)。
輸入:原粗油や半導体など電子部品の減少により輸入額が8兆8124億円(前年同月比-5.7%)にとどまりました。
輸出の増加要因:特に半導体製造装置や非鉄金属の需要増加が目立ちましたが、原油や半導体部品の輸入減少が影響しています。
サービス収支の改善
サービス収支は2386億円の黒字となり、前年同月比+1579億円の黒字幅の拡大を見せました。
特に、訪日外国人旅行者数が増加し、旅行収支の黒字が大きく拡大したことが主な要因です。
訪日客数は318万7000人(前年同月比+30.6%)と大幅に増加し、日本の経済にも好影響を与えました。
第一次所得収支の増加
第一次所得収支は3兆4373億円の黒字となり、前年同月比+3955億円の黒字幅拡大を記録しました。
直接投資収益の増加が大きな要因となり、海外での収益が円換算で押し上げられました。
また、円安も海外収益を円に換算する際にプラスの影響を与えました。
第二次所得収支の赤字
第二次所得収支は4214億円の赤字となり、前年同月比+157億円の赤字幅の拡大が見られました。
主に政府からの無償資金援助が減少したことが影響しています。
エコノミストの見解
一部エコノミストからは、日本の経常収支に対する懸念が示されています。野村証券のエコノミスト、伊藤勇輝氏は、「旅行収支の回復は財輸出・サービス収支の黒字化の要因となったが、そのペースは鈍い」と指摘し、今後の日本の対米輸出や中国の内需刺激策が経常収支に与える影響についても懸念しています。特に、アメリカのトランプ次期大統領が表明している関税政策が、日本の対米輸出に悪影響を与える可能性があり、中国の経済政策が日本の対中輸出にどう影響するかも不透明です。
しかし、多くのエコノミストは、経常収支が引き続き黒字基調を維持すると予測しています。伊藤氏は、「第一次所得収支は日本の海外での稼ぐ力を支える要因となり、経常収支全体で見ても黒字基調が続き、赤字に転じることはないだろう」としています。
今後の展望
2023年1月には経常収支が2兆0014億円の赤字を記録したものの、円安や食料品・エネルギー価格の高騰による貿易赤字の影響を受けながらも、海外からの証券投資や直接投資からの収益に支えられ、黒字が続いています。このように、貿易赤字やエネルギー価格の高騰といったリスク要因がある中でも、経常収支が黒字を維持する背景には、第一次所得収支の強さがあることが確認されています。
今後も経常収支は、第一次所得収支を中心に黒字基調を維持する可能性が高いと考えられていますが、国際情勢や貿易環境の変化には引き続き注意が必要です。
2023年11月の経常収支は、3カ月ぶりの高水準となる3兆3525億円の黒字を記録しました。貿易収支の黒字転換、サービス収支の改善、第一次所得収支の増加などが主な要因となり、日本経済にとってはポジティブな結果と言えます。