2025-06-13 コメント: 1件 ▼
政府が海外研究者の受け入れに1,000億円投入へ 大学ファンド活用し人材獲得競争に本格参戦
米国の研究費削減で流出加速、日本も獲得競争に本格参戦
政府は、世界で激化する優秀研究者の人材獲得競争に対応するため、総額1,000億円規模の予算を投じ、海外からのトップ研究者受け入れを本格化させる方針を固めた。背景には、トランプ政権時代にアメリカで研究費が大幅に削減され、多くの研究者が職を失い、国外に流出する動きが強まっている事情がある。
日本政府はこの機会を捉え、国内の研究体制強化とともに、「人材の逆輸入」も視野に入れた形で、海外のトップ研究者たちにとって魅力ある環境づくりに乗り出す。具体的には、10兆円規模の「大学ファンド」の運用益を活用し、米欧と同水準の給与水準を提示。優秀な外国人研究者に対し、日本の大学や研究機関が「世界水準の待遇」で応じられるよう支援を行う。
この施策の実行に向け、内閣府が中心となって具体的な制度設計を進めており、6月13日の閣議後、城内実科学技術相が記者会見で詳細を発表する予定だ。
給与水準と研究環境の格差解消へ 人件費に大学ファンドを投入
これまで、日本の研究機関が海外の優秀な研究者を受け入れようとしても、給与水準の低さや研究環境の整備不足が大きな障壁となっていた。欧米では年収2,000万円規模の待遇も珍しくないのに対し、日本ではその半分以下という例も多く、そもそも交渉の土俵にすら上がれなかったのが現実だ。
そのため政府は、科学技術振興機構(JST)を通じて、国内の受け入れ先となる大学や国立研究開発法人に対し、人的支援と設備投資の両面から支援を行う。給与面では「元所属先と同等の待遇を保証すること」を目指し、研究者が安心して日本でキャリアを継続できる制度を構築するという。
さらに、支援対象を現行の「国際卓越研究大学」と博士課程学生に限定している制度方針を改定し、より柔軟に多様な研究者層の受け入れを可能とする。
人事制度改革と文化発信も 海外現地で採用活動展開
制度の実行性を高めるため、政府は大学の人事制度の改革支援も同時に進める方針だ。例えば、年功序列や終身雇用に縛られた日本の学術界に柔軟な任期制を導入するなど、国際的な人材競争に適応する仕組みづくりが求められている。
また、最先端研究機材の整備、英語による教育環境の整備、生活支援体制の構築といった「周辺インフラ」も強化される見通しだ。加えて、日本の研究生活の魅力や生活環境、文化の豊かさを世界にアピールする広報活動も強化される。政府は米国やヨーロッパで積極的に採用活動を展開し、今年秋の採用シーズンに間に合うよう体制を整える。
日本は「人材亡国」を回避できるか?
かつては日本から欧米へと研究者が流出する「頭脳流出」が課題だったが、いまや世界各国が「優秀人材の奪い合い」の時代に突入している。すでに欧州連合(EU)は5億ユーロ(約830億円)の予算を投入し、米国から流出した研究者の受け入れに動いている。そうした中、日本の1,000億円規模の施策は、ようやく世界標準の競争に加わるための一歩といえる。
とはいえ、懸念もある。肝心の国内大学の改革が進まなければ、資金だけ投入しても「箱だけ整えたが中身が伴わない」という事態になりかねない。また、短期の成果を焦るあまり、研究者の質を見誤るような「数合わせ」の制度運用も警戒されるべきだ。
国力は教育と研究に支えられている。外国人研究者の獲得と同時に、日本人の優秀な頭脳が海外に流出しないよう、国内研究者への支援も不可欠だ。
ネット上の反応
お金じゃなくて、研究環境と自由さの問題じゃない?
1000億円も出すなら、日本の若手研究者にももっと回してくれ。
そもそも海外に出た日本人研究者が帰ってこないのが問題。
優秀な人材を呼び込むのは良いけど、大学の体質も変えなきゃ無理。
外国人頼みじゃなくて、日本の教育と研究基盤を強化してほしい。