2025-05-02 コメント: 1件 ▼
ガソリン暫定税率は50年も“暫定”のまま? 本来の意味と矛盾する継続課税に今こそ終止符を
“50年の暫定”は限界 ガソリン税、今こそ見直しを
石破茂首相が5月22日からガソリン価格を1リットルあたり10円引き下げる方針を明らかにした。政府はこの措置を、燃料油価格の激変を緩和する対策の一環と位置づけており、実現すれば、現在180円台のガソリン価格が170円台前半まで下がる見通しだ。
この動きと並行して、自民党・公明党・日本維新の会の3党は、ガソリン税の「暫定税率」の廃止について協議を進めている。だが、制度そのものには依然として根強い課題が残る。
「暫定」が50年続くという矛盾
ガソリン税には本来の「本則税率」(1リットルあたり28.7円)とは別に、「暫定税率」として25.1円が上乗せされている。合計すると、1リットルあたり53.8円もの税金が課せられている計算だ。
この暫定税率は1974年に「道路整備の財源が足りない」として導入された。だが、それから半世紀が過ぎ、道路整備も進んだ今、当初の理由はすでに過去のものとなった。
「暫定」という言葉が意味するのは「一時的」な措置だ。50年も継続するのであれば、もはや暫定ではない。政府も自治体も、この基本的な言葉の意味を忘れてはならない。
課税理由の“すり替え”が許されるのか
かつてガソリン税は「道路特定財源」として使い道が限定されていた。しかし2009年、財源が一般財源に切り替えられ、どの分野にも使えるようになった。その後も税率は変わらず、暫定税率が居座り続けている。
税理士の黒瀧泰介氏は「本来の目的を終えたにもかかわらず、課税を維持するのは極めて不自然。『環境配慮』など別の理由にすり替えているが、それならそれで、税率の根拠をきちんと国会で示すべきです」と指摘する。
日本国憲法第84条は「法律なくして課税なし」と定めている。法的手続きは踏んでいるとはいえ、課税の根拠が曖昧になっている現状は、租税法律主義の精神に反していると言わざるを得ない。
“幻の制度”トリガー条項の存在
もう一つの問題が「トリガー条項」だ。これは、ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合に暫定税率を停止し、本則税率に戻す制度だ。2010年に導入されたが、11年の東日本大震災後に凍結されたままだ。
今のような物価高でもトリガー条項は発動されず、代わりに元売り業者に補助金が出されている。この補助金は国民の目が届きにくく、政治との癒着が懸念される一方で、実際に価格をどれだけ下げる効果があったのかも分かりにくい。
「恒久財源」化は無責任 今こそ撤廃を
暫定税率を維持する理由として、国と地方の財政事情が挙げられる。2024年度の見込み税収は約2.2兆円。地方にも数千億円が配分されており、財源として手放しにくいのが実情だ。
だが、「お金が必要だから」という理由だけで課税を続けていいのか。本来の目的が失われた課税は、正当性を欠く。
政府が真に国民生活の支援を考えるならば、意味の失われた暫定税率を撤廃すべきだ。家計負担の軽減につながるだけでなく、法治国家としての健全性を保つためにも、見直しは避けて通れない。
* ガソリン暫定税率は1974年導入、50年経っても撤廃されず
* 当初の目的である「道路整備の財源」は既に不要に
* 現在は一般財源化され、課税根拠が不透明
* トリガー条項は一度も発動されず凍結状態
* 恒久財源としての扱いは「暫定」の趣旨に反する。撤廃が筋