2025-04-29 コメント投稿する ▼
石破首相、フィリピンで中国の海洋進出を非難
日比防衛協力、さらに一歩前へ
日本の石破茂首相は4月29日、フィリピンのマニラを訪れ、フェルディナンド・マルコス大統領と会談した。焦点となったのは、南シナ海で拡大を続ける中国の軍事的進出と、今後の日比間の安全保障協力。そして、米国のトランプ前大統領による関税政策が地域経済に及ぼす影響についても意見を交わした。
今回の会談を機に、日本とフィリピンは今年中に「防衛後方支援協定」の交渉を開始する見通しとなった。この協定が締結されれば、自衛隊がフィリピンに滞在中、食料や燃料などの提供が円滑に行えるようになる。また、極秘の軍事情報を共有するための枠組みについても、協議が進められる予定だ。
中国の海洋行動に強い警戒
石破首相は会談前、東京での記者会見で「中国は南シナ海や東シナ海で、一方的に現状変更を試みている」と述べ、警戒感を隠さなかった。実際、南シナ海では中国の沿岸警備隊や海軍艦艇、いわゆる“海上民兵”とされる漁船が、フィリピン船への進路妨害や水砲の使用など、挑発行為を繰り返している。
東シナ海でも状況は緊迫している。尖閣諸島周辺では、中国の艦船や航空機が日本の領海・領空付近に常態的に接近し、自衛隊機の緊急発進が相次いでいる。こうした行動が常態化する中で、日比両国の安全保障上の連携は急務となっている。
米関税の“同盟国ジレンマ”
もう一つの大きなテーマは、米国による関税政策への対応だ。石破首相は、トランプ前大統領が導入した関税が、フィリピンやベトナムといった東南アジア諸国、さらに日本企業にまで影響を及ぼしていると指摘。「経済的な打撃が、安全保障の連携にも影響しかねない」と懸念を示した。
特に、電子機器や繊維など、アジアから米国への主要輸出品が打撃を受けており、日本企業も現地での操業コストや輸出見通しの不安に直面している。石破氏は「日本の外交・経済政策としても、この点をしっかり整理しておく必要がある」と語った。
巡視船支援で存在感アピール
石破首相は訪問2日目、ラグナ州にある日本人戦没者慰霊碑を訪れた後、マニラ湾に停泊中の大型巡視船「BRPマグバヌア」に乗船。日本がフィリピン沿岸警備隊に供与した船で、南シナ海の巡視任務に就いていた際、中国との対立で損傷を受けたことでも知られている。
日本はすでにフィリピンに12隻の巡視船を提供しており、今後も5隻を追加建造する計画だ。また、防空レーダーなどの防衛装備も提供しており、南シナ海の安定に向けた「影の後押し役」として存在感を強めている。
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