2025-04-28 コメント投稿する ▼
障害年金の不支給が2倍超に急増、2024年度は3万人 制度運用厳格化で信頼性に揺らぎ
障害年金不支給、前年比2倍超に急増
2024年度、障害年金を申請して不支給となった件数が、前年度比で2倍以上に増加し、約3万人に達したことが分かった。共同通信が日本年金機構の内部資料を入手して報じた。年金機構が統計を取り始めた2019年度以降で最多となり、審査対象者のおよそ6人に1人が支給を受けられなかった計算になる。不支給率も過去最大に達する見通しだ。
これにより、障害を抱える人々の生活保障に深刻な影響が及ぶ可能性が指摘されている。申請者側からは「説明のない不支給が増えた」「審査が異様に厳しくなった」といった不満の声も上がっている。
トップ交代が引き金か 制度に属人的運用のリスク
年金機構内部では、障害年金センターのセンター長が2023年10月の人事異動で交代したことが、不支給急増の背景にあるとの見方が広がっている。
新任センター長の下、職員が診断書などに対してより厳しい目を向け、判定医に低い等級や「等級非該当」とするよう提案するケースが増加したという。
一方で、センター長本人は取材に対し「審査を厳しくするよう指示した事実はない」と説明している。
制度設計上、明確な判定基準があっても、解釈や運用に属人的な要素が入り込む余地があり、申請者の権利が左右されるリスクが浮き彫りになった形だ。専門家からは「属人性による運用の偏りを是正する第三者監査の仕組みが必要」との指摘も上がっている。
判定基準の変更はなし 審査厳格化の実態
障害年金の審査は、診断書や生活状況報告書などをもとに行われ、医師が最終的に等級判定を下す。今回、不支給が増加したにもかかわらず、正式な判定基準自体は一切改定されていない。
厚生労働省も「基準変更はしていない」と説明しているが、年金機構内部では「書類の書き方への要求水準が明らかに変わった」との声が上がっている。
つまり、基準ではなく運用が厳格化されたことが、現場感覚では実感されているということだ。
これにより、特に軽度の精神疾患や内部障害(例:心臓病や腎臓病)を抱える申請者の審査通過が難しくなったとの報告もある。
障害者支援団体などが抗議 見直し求める動きも
障害者支援団体からは、すでに抗議や改善要求が相次いでいる。
全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)は、「生活に困窮する障害者がさらに追い詰められる」「不透明な審査運用を直ちに見直すべき」とする声明を発表した。
また、超党派の国会議員連盟も、障害年金の審査運用の透明性確保と、属人的な運用防止に向けた議論を始める方針を示している。
厚労省は現時点で「個別案件の審査内容にはコメントできない」としているが、制度全体の信頼性を損なう事態となっているだけに、今後、外部有識者を交えた調査や審査体制の見直しが求められそうだ。
- 2024年度、不支給者数が約3万人に達し前年比2倍超
- 審査基準変更なしも、センター長交代で運用厳格化
- 属人的な審査運用が制度の信頼性を揺るがす
- 支援団体や国会議員連盟が透明性確保を求める動き