2025-01-29 コメント投稿する ▼
警察庁、闇バイト対策に「仮装身分捜査」を導入
闇バイト対策としての「仮装身分捜査」導入
近年、SNSなどを通じて「闇バイト」が急増し、強盗や詐欺などの犯罪が多発しています。これらの犯罪は、実行役を募集する際に身分証明書の提示を求めるなど、捜査の難しさが指摘されています。このような背景から、警察庁は2025年1月23日に「仮装身分捜査」の実施要領を策定し、全国の都道府県警察本部長に通達しました。
仮装身分捜査の概要
仮装身分捜査とは、捜査員が架空の身分証明書(運転免許証や住民票など)を提示し、犯罪の実行者を募集している者に接触する捜査手法です。これにより、犯罪グループの内部情報を収集し、上位の指示役を特定することを目的としています。
実施要領の主なポイント
対象犯罪の特定: インターネットを通じて実行者の募集が行われている強盗、詐欺、窃盗、電子計算機使用詐欺などが対象となります。
実施条件: 他の方法では犯人を検挙し、犯行を抑止することが困難と認められる場合に、相当と認められる限度で実施されます。
計画書の作成: 警視総監や都道府県警察本部長の指揮の下、あらかじめ承認を受けた「実施計画書」に基づいて捜査を行います。計画書には、仮装身分捜査の必要性、実施体制、期間などが記載されます。
身分証明書の管理: 仮装身分表示文書等は、計画書ごとに必要な枚数を指定して作成し、目的外利用を防止するため、他の捜査資料とは別の場所に施錠して保管します。
安全確保: 新たな犯罪被害が生じないようにするとともに、捜査員等の安全確保に万全を期すよう求められています。
導入の背景と課題
仮装身分捜査の導入は、昨年12月に党治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会が取りまとめた提言を受けてのものです。しかし、捜査員の安全確保や、仮装身分捜査の適用範囲の拡大解釈の危険性など、課題も指摘されています。また、リクルーターがシグナルやテレグラムなどの秘匿性の高いアプリでやり取りを行うため、仮装身分捜査を導入しても指示役までたどり着く可能性は低いとの懸念もあります。
さらに、仮装身分捜査は米国やドイツなど一部の国で制度化されていますが、日本では法的な観点からこれまで導入が見送られていました。しかし、昨今の「闇バイト」による犯罪の増加を受け、刑法35条の「法令または正当な業務による行為は、罰しない」という規定を適用することで、仮装身分捜査の実施が可能との判断がなされました。
今後の展望
仮装身分捜査の導入により、闇バイトによる犯罪の摘発が期待されています。しかし、その実効性や乱用防止が鍵となります。捜査員の安全確保や適用範囲の適正化など、慎重な運用が求められます。また、リクルーターが使用する秘匿性の高いアプリへの対応や、捜査員の身の安全担保も重要な課題となるでしょう。
今後、仮装身分捜査の実施状況や成果について、適切な評価と改善が行われることが望まれます。