2025-10-10 コメント投稿する ▼
自民政権が中国社会科学院主導の青年研究者派遣を受け入れ:意図と懸念
このプログラムには、日本の大学や研究機関に属する若手研究者7名、団長1名、そして事務局2名、計10名が参加します。 中国社会科学院との意見交換、中央・地方政府機関や研究機関の訪問、地方都市の視察などが予定されています。 先例として、日本から中国へ派遣される「青年研究者訪中団」など類似のプログラムが過去にも実施された記録があります。
自民政権が中国社会科学院主導の派遣を受け入れ
自民党政権は、中国共産党中央委員会の指導を受ける中国社会科学院からの招へいを受けて、日本の青年研究者を 2025年10月19日から25日 にかけて中国に派遣することを決めました。中国側の要望を受け入れる形です。
このプログラムには、日本の大学や研究機関に属する若手研究者7名、団長1名、そして事務局2名、計10名が参加します。訪問先は北京と山西省の大同市です。テーマは「デジタル時代の伝統文化」です。中国社会科学院との意見交換、中央・地方政府機関や研究機関の訪問、地方都市の視察などが予定されています。
中国社会科学院は、哲学や社会科学研究を担う最高機関と位置づけられ、党中央の指導を受ける組織です。最近では、習近平総書記が国防教育や国家安全保障の強化を重視する方向性を研究する会議を行ったと報じられています。
この派遣事業自体は、公益財団法人日中友好会館が実施主体とされています。ただし、日本政府側からの正式な説明は現状で十分ではなく、計画の透明性を疑問視する声もあります。
交流目的とリスク、曖昧な境界
海外へ若手研究者を派遣して学術交流を図る試みは、伝統的には文化外交や人脈構築の一手段として行われてきました。今回も同様の名目で進められていると見られます。先例として、日本から中国へ派遣される「青年研究者訪中団」など類似のプログラムが過去にも実施された記録があります。
しかし、相手側機関が政府・党の指導下にあることが明瞭な場合、この「交流」が単なる相互理解を超えた意図を帯びる可能性があります。若手を招く形式が、情報や思想の誘導、統制的な枠組みに組み込まれる道具となるリスクも無視できません。特に、研究者がキャリアを目指す時期だからこそ、立場の脆弱さを突かれる恐れがあります。
交流の名の下に行われる事業には、受け手側の守秘義務、報告制限、発表制限、選定基準の明示などが事前に示されていなければなりません。それがないまま実施すれば、不透明な圧力がかかる余地が残ります。
研究者・大学側の判断と負担
若手研究者や大学にとって、国際経験や人的ネットワークを得る機会は魅力的です。しかし、受け入れの可否を判断する際には、国家安全保障の観点や学術の独立性を重視するべきです。どこまで発言の自由が保障されるのか、帰国後の研究成果への影響、参加者が直面する心理的プレッシャーなども慎重に検討されるべき課題です。
もし報告書や成果発表に制約が課されるような枠組みがあれば、それは「交流」ではなく「管理」に近づきます。大学や研究機関には、こうした派遣計画を精査する責任があります。
政策視点からの課題
この派遣を政府が積極的に進めることで、「中国社会科学院」という明らかに政党の影響下にある学術機関との関係を強める姿勢を国内外に示すことになります。これは日本の学術自由や言論の独立性を揺るがす可能性を含んでいます。
また、こうした“軟交流”を重ねるだけでは、根本的な外交戦略や安全保障政策の欠落を隠してしまう危険があります。人材交流は国益と整合性を持つ枠組みで設計されるべきであって、見せかけの友好演出に終わってはなりません。
さらに、自民党と過去の企業・団体献金との関係性を振り返れば、国家政策が特定勢力の利益を代弁する構造が再燃しないか警戒が必要です。政策決定の背景に透明性がなければ、国民の信頼は揺らぎます。
最終的に、重要なのは政策の中身です。外交・学術交流は確かに価値がありますが、それを支える安全保障観、科学技術政策、法制度の枠組みを国益基準で見直すことが不可欠です。特に日中関係が緊張しやすい状況を前に、交流の目的と手段を明示する覚悟こそが問われています。