2026-03-11 コメント投稿する ▼
イラン攻撃で国家石油備蓄に放出準備指示、志布志・串木野も対象にホルムズ封鎖に備える
アメリカとイスラエルによる2026年2月28日のイラン攻撃を受け、経済産業省は全国10カ所の国家石油備蓄基地に対し、放出準備を行うよう指示しました。鹿児島県の志布志国家石油備蓄基地と串木野国家石油備蓄基地も対象となっており、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー安全保障の危機に備えた体制強化が進められています。
ホルムズ海峡封鎖で原油輸入が停止
2026年2月28日、アメリカとイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始したことを受け、中東情勢は急速に悪化しました。イラン革命防衛隊は3月2日、エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡を閉鎖したと発表し、同海峡を通航しようとする船舶に警告を発しました。
同日、複数の海上保険会社がイラン情勢の急変を理由に、湾岸地域を航行する船舶向けの戦争リスク補償の引き受け停止を発表しました。戦争リスク補償の適用外海域はイラン領海にとどまらず、ペルシャ湾および周辺海域にも拡大しており、事実上のホルムズ海峡封鎖状態となっています。
日本は原油輸入の約94パーセントを中東に依存しており、ホルムズ海峡を経由した原油輸入量は9割に上ります。ホルムズ海峡は2024年に日量1420万バレルの原油と約590万バレルの石油製品が通過しており、これは世界の海上輸送量の25パーセント以上、世界の石油消費量の約20パーセントに相当します。
「ガソリン価格がまた上がるのか心配」
「備蓄があるとはいえ限界がある」
「中東情勢が落ち着くまで不安が続く」
「エネルギー自給率の低さが問題だ」
「国家備蓄基地の重要性を再認識した」
3月6日に全基地へ放出準備指示
石油備蓄の管理を国から委託されているJOGMECによると、2026年3月6日に資源エネルギー庁の担当者から「いつでも適切な対応を行うことができる体制をとるよう」連絡があったといいます。
中道改革連合の長妻昭衆院議員は3月9日、週末に志布志国家石油備蓄基地を視察した際、資源エネルギー庁から放出の準備をするよう6日に指示があったと同基地の担当者から説明があったことを明らかにしました。
木原稔官房長官は3月9日午前の記者会見で、原油価格高騰を受けた石油の国家備蓄放出について問われ、検討状況を「お答えすることは差し控える」と語りました。放出を決定した事実はないとしていますが、政府内では国家備蓄の放出を検討していることが関係者への取材で明らかになっています。
日本単独での放出も視野に入れており、実施すれば1978年の制度創設後初となります。石油の備蓄放出は、国際エネルギー機関の下で各国が協調するのが通例で、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後に実施した前例があります。
志布志基地は備蓄容量500万キロリットル
鹿児島県内には2カ所の国家石油備蓄基地があります。志布志国家石油備蓄基地は、志布志湾内に出島のような形で地上タンクを設置する方式で1993年12月に完成しました。
柏原海岸沖の志布志湾を埋め立てて造成された196ヘクタールの人工島に立地しており、43基の原油タンクに備蓄容量約500万キロリットルを保有しています。これは国内消費量で約9日分に相当し、国家備蓄全体の約4分の1という巨大な規模を誇ります。
志布志基地の地上タンク方式は、メンテナンスや管理の面で優れており、大容量の原油備蓄を効率的に行うことができます。湾内の立地を活かし、大型タンカーからの原油受け入れや、必要時の迅速な払い出しが可能な設計となっています。
1984年9月に立地が決定し、同年同月に建設の推進母体となる国家石油備蓄会社が設立されました。2004年2月に国家石油備蓄基地は国の直轄事業となり、JOGMECが国家石油備蓄の統合管理業務を行っています。
串木野基地は地下岩盤タンク方式
一方、いちき串木野市の串木野国家石油備蓄基地は、地下の岩盤内に空洞を設け、地下水圧などによって貯蔵原油を封じ込める水封式地下岩盤タンク方式を採用しています。1994年に完成し、備蓄施設容量は約175万キロリットルとなっています。
用地面積は地上5ヘクタール、地下26ヘクタールで、長さ555メートルのトンネル型タンク10本を3ユニット備えています。同様の地下備蓄基地には久慈国家石油備蓄基地と菊間国家石油備蓄基地があります。
この地下備蓄方式は、地上スペースを必要とせず、災害や攻撃に対する安全性が高いという特徴があります。岩盤の特性を活かした封じ込め技術により、長期間安定した保管が可能で、環境への影響も最小限に抑えられています。
1986年に国家石油備蓄会社が設立され、推進母体として建設が進められました。2004年に国の直轄事業となり、現在はJOGMECが管理しています。
国家備蓄146日分が最後の砦
日本の石油備蓄は消費量ベースで計254日分あります。このうち全国10カ所の基地で保有する国家備蓄は146日分です。国はその一部を対象に情勢を見極め、実施の是非や放出量を慎重に判断します。
日本の備蓄はほかに、石油元売りや商社が保有する民間備蓄が101日分、産油国が日本国内で保管する産油国共同備蓄が7日分あります。
ホルムズ海峡が事実上封鎖され、輸送タンカーが航行不能となる中、民間事業者が持つ在庫の減少を補う狙いがあります。原油輸入の9割を超える中東産の供給不安が長期化する恐れが強まっており、不測の事態に備える必要があります。
今回の放出準備指示は、国際情勢の緊迫化を受けた予防的措置です。中東地域での軍事的緊張が高まる中、石油供給ルートの安定性確保は国家の重要課題となっています。
石油備蓄基地の存在は、普段の生活では意識されることが少ないですが、エネルギー安全保障の観点から極めて重要な施設です。今回の準備指示を通じて、改めてその重要性が浮き彫りになりました。