自衛隊は他国のサーバーに攻撃可能か?──“能動的サイバー防御”法案で憲法9条の限界問う

2025-04-04 コメント: 1件

自衛隊は他国のサーバーに攻撃可能か?──“能動的サイバー防御”法案で憲法9条の限界問う

4月4日の衆議院内閣委員会で、国民民主党の橋本幹彦議員が「能動的サイバー防御」の法案に関して政府の姿勢を問いただした。この法案は、日本がサイバー攻撃を受ける前に兆候を察知し、発信元に先んじて対処することを可能にするものだが、自衛隊による他国コンピューターへの攻撃の是非が議論の的となった。

自衛隊は他国のコンピューターを攻撃できるのか?


橋本議員は「能動的サイバー防御から少し外れるかもしれないが」と前置きしつつ、自衛隊が持つ“武力行使”の権限について切り込んだ。「自衛隊が他国にあるコンピューターを物理的または電磁的に攻撃することは想定しているのか?」と問いかけた。

これに対し本田太郎防衛副大臣は、「武力の行使は憲法9条の制約の下で、いわゆる“武力行使の三要件”に該当する自衛措置に限られる」と説明。その上で、「実際に発生した事態に応じて、個別に判断することになる」と述べた。

橋本氏はさらに、「つまり、一般論としては他国のコンピューターを攻撃すること自体は法的に“排除されていない”ということか?」と確認を求めた。これに対し本田副大臣は「一般論として言えば、武力行使の三要件や国内外の法令に照らして許される範囲であれば、手段を一概に否定するものではない」と答えた。

「排除されない手段」に含まれる能力とは?


橋本氏はさらに踏み込んで、「他国のコンピューターやプログラムを無力化する能力を、自衛隊は持っているのか」と質問。これに答えたのは、家護谷修防衛省サイバーセキュリティ情報化審議官だ。

同氏は、「サイバー攻撃に対する自衛措置として、相手が使うネットワークやシステムの機能を妨げる能力を整備してきた」と説明。その手段には、電磁波や電子情報を通じて相手のシステムに支障を与える方法も含まれているという。

つまり、ただ守るだけでなく、相手がサイバー攻撃を仕掛けてくる前に、それを阻止する能力を持つ、または持とうとしているということだ。

橋本議員は最後に「やはり、自衛隊には高いレベルのサイバー攻撃に対応する能力を備えつつあるという理解でよいと思う」と語り、やりとりを締めくくった。

憲法9条と能動的サイバー防御の交差点


この日のやり取りで浮き彫りになったのは、自衛隊がサイバー空間でどこまで行動できるのか、その“ライン”が非常に曖昧なままだという点だ。政府は、武力行使の三要件──「急迫不正の侵害」「他に手段がない」「必要最小限度の実力行使」──を満たすことが前提だとしている。

ただし、サイバー攻撃に対してこれらの要件をどう当てはめるかは、具体的なケースごとに異なるとされ、政府として明確な線引きは示していない。

在日米軍も守る?法案に含まれる新たな役割


今回の法案では、自衛隊が在日米軍のネットワークを守ることも可能にする条文が盛り込まれている。これについても防衛省は、「米軍のシステムが機能不全になると、日本の防衛全体に影響が出る」と説明。在日米軍も日本の防衛の一部とみなされる形だ。

今後の焦点は「どこまでが防御か」


能動的サイバー防御は、あくまで“防御”の名のもとに構想されているが、他国のサーバーに侵入し機能を停止させる行為が、実質的に“攻撃”とみなされる恐れもある。

この点について、法案に賛成する声がある一方で、懸念の声も少なくない。国際法上の扱いや外交的リスク、そして憲法との整合性。どれもが簡単に答えが出せる問題ではない。

国会での議論は今後さらに深まりそうだ。能動的サイバー防御の名のもとに、どこまで自衛隊の権限が広がるのか。まさに今、その境界線が問われている。

コメント: 1件

2025-04-04 15:59:13(先生の通信簿)

コメント

それが出来る公務員いますか?民間に頼るにしても大手ではツール使うだけだろうし…

2025年4月27日 08:16 レーニア

コメント投稿

コメントを投稿することができます。管理者の確認後公開されます。誹謗中傷・公序良俗に反する投稿は削除されます。

※サイト運営スタッフにより内容が確認後公開されます。24時間以内に確認されます。

人気のある活動報告

今週アクセス数が多かった活動報告

オススメ書籍

日本の政治を採点する―2007年参議院選の公約検証

日本の政治を採点する―2007年参議院選の公約検証

新訂版】図解国会の楽しい見方

新訂版】図解国会の楽しい見方

EBPM[エビデンス(証拠・根拠)に基づく政策立案]とは何か 令和の新たな政策形成

EBPM[エビデンス(証拠・根拠)に基づく政策立案]とは何か 令和の新たな政策形成

日本の政策はなぜ機能しないのか? EBPMの導入と課題

日本の政策はなぜ機能しないのか? EBPMの導入と課題

橋本幹彦

新着記事

検索

政治家の名前検索、公約の検索が行えます。

ランキング

政治家や公約の各種ランキングを見ることができます。

ランダム評価

公約・政策がランダム表示され評価することができます。

選挙情報

今からの選挙・過去の選挙結果などが確認できます。

アンケート

当サイトで行っているアンケート・投票にご協力ください。

「先生の通信簿」は、議員や首長など政治家の公約・政策を「みんなで」まとめるサイトです。また、公約・政策に対しては、進捗度・達成度などを含めたご意見・評価を投稿することができます。

政治家や議員の方は、公約・政策を登録し有権者にアピールすることができます。また、日頃の活動報告も登録することができます。

選挙の際に各政治家の公約達成度や実行力など参考になれば幸いです。

※この情報は当サイトのユーザーによって書き込まれた内容になります。正確で詳しい情報は各政治家・政党のサイトなどでご確認ください。

X (Twitter)

標準偏差:20.47