川崎市長選に宮部龍彦氏が出馬表明　被差別部落地名掲載問題で波紋呼んだ出版社代表

川崎市長選に「示現舎」代表の宮部龍彦氏が出馬表明　被差別部落の地名掲載問題で議論も

無所属での出馬を宣言　物議醸した出版社代表

10月12日告示・26日投開票の川崎市長選に、出版社「示現舎」代表の宮部龍彦氏（46）が7日、無所属で立候補すると表明した。宮部氏は、かつて被差別部落の地名をウェブ上に掲載したとして大きな波紋を呼んだ人物であり、その過去の活動も含めて選挙戦での争点となる可能性がある。

同氏は会見で「表現の自由と行政の透明性を守るために市政に挑む」と語り、川崎市のヘイト規制条例や言論の自由に関する運用についても見直しを求めていく姿勢を示した。政党の推薦は受けず、完全無所属での出馬となる。

市長選の焦点は「言論」と「人権」

川崎市は、全国に先駆けてヘイトスピーチ規制条例を施行するなど、多文化共生と人権尊重を掲げてきた都市である。一方、宮部氏が代表を務める「示現舎」は、部落地名総鑑のような形で差別につながる情報を掲載してきた過去があり、人権団体や識者から強く非難されてきた。

今回の出馬に対しては、早くもSNS上で賛否両論が巻き起こっている。

「言論の自由と人権侵害は別問題。線引きは必要」
「この人が市長になったら川崎の多文化政策が壊れる」
「どんな人でも出馬する権利はある。ただ、市民は冷静に見てほしい」
「自由を守ると言って、誰かを傷つけてきたじゃないか」
「まさかと思うけど、川崎でこういう候補が出るとは」

こうした反応からも、市民の間で本質的な議論が求められていることが分かる。

問われる社会的責任と市政ビジョン

宮部氏は「部落地名掲載は学術的・歴史的記録の提供であり、差別を助長する意図はない」と主張してきた。一方、掲載をめぐっては多くの団体が抗議を行っており、過去には出版物の販売停止を求める声も上がった。

市長選で争点になると見られるのは、言論の自由の限界と、行政による規制のあり方である。川崎市の条例では、差別的言動に対する罰則も設けられており、「表現の自由」と「人権尊重」のバランスをどのように取るかが問われる。

現在の福田紀彦市長は5期目を目指すかどうか態度を明らかにしておらず、市政の継続性と変化のいずれが選ばれるかが注目されている。

市民の冷静な判断が問われる選挙へ

宮部氏の立候補は、ただの地方選挙では終わらない論点を含んでいる。「何を言っても許される社会が自由なのか」「差別に対して沈黙することが中立なのか」──そんな社会的な問いを、市民一人ひとりに投げかけているようにも見える。

表現の自由が脅かされていると訴える宮部氏だが、その主張が公共の利益と合致するかどうかは、選挙戦を通じて検証されるべきだろう。これからの選挙戦では、候補者の過去の言動や理念だけでなく、具体的な市政運営へのビジョンが厳しく問われることになる。