2025-05-13 コメント投稿する ▼
日本が米国サイバー戦略に組み込まれる危険性 山添議員が能動的サイバー防御法案を追及
米国サイバー戦略に組み込まれる懸念
参院内閣・総務・外交防衛連合審査会で、日本共産党の山添拓議員が政府の「能動的サイバー防御法案」について、国家主権や国際法上の問題を指摘し、政府の対応を厳しく追及した。山添議員は、この法案が米国のサイバー戦略に日本を組み込む危険性があると警告した。
米国の前方防衛戦略と日本
山添議員は、米国が2018年に採用した「前方防衛」戦略を指摘。これは米国のサイバー防衛を海外での脅威封じ込めにまで拡大するもので、米軍が他国に出向き、サイバー攻撃の兆候を探し出し無力化するというものだ。この戦略に基づき、米サイバー軍が日本への部隊派遣を打診したが、国内法が整備されていないために断ったという報道もあった。
これに対し、山添議員は日本政府に対し「法案成立後、このような要請を受け入れるのか」と質問。防衛省の家護谷昌徳サイバーセキュリティ・情報化審議官は「現時点での法的根拠はない」と説明したが、詳細については明確な回答を避けた。
攻撃的サイバー能力と自衛隊
また、山添議員は、米国の保守系シンクタンク「民主主義防衛財団」が同盟国に攻撃的サイバー能力の強化を求める提言を発表していることを取り上げた。これに関連し、中谷元防衛相は米国防総省の教範に「攻撃的サイバー作戦」が記載されていることを認め、敵のシステムを物理的に損傷させることも含まれると説明。山添議員が「自衛隊がこれに関与するのか」と問いただすと、中谷氏は「主体的に判断し行う」と述べ、可能性を否定しなかった。
国際法上の懸念とエスカレーションリスク
山添議員は、政府が能動的サイバー防御を自衛権の行使と説明しているが、サイバー攻撃が国際法で定められた武力行使に該当するかどうかについては統一した見解がないと指摘。こうした曖昧さが、相手国によっては「攻撃」と受け取られ、報復やエスカレーションを招くリスクがあると警告した。
「サイバー空間での戦争準備を合法化することは許されない」と強調し、政府に対しさらなる説明責任を求めた。
能動的サイバー防御法案の背景
政府は2025年2月、サイバー攻撃の兆候を捉え、無害化するための「能動的サイバー防御法案」を閣議決定。通信事業者や重要インフラ企業との情報共有を進めるとともに、攻撃サーバーやマルウェアへの対応、内閣サイバー官の新設が盛り込まれている。
ただし、この法案が実際にどのように運用され、どの範囲で他国のサイバー空間に介入するのかは依然として不透明なままだ。国家主権の尊重と国際法との整合性が確保されなければ、日本が米国のサイバー戦略に巻き込まれ、国際的な紛争に巻き込まれるリスクも否定できない。
* 山添拓議員が参院審査会で「能動的サイバー防御法案」の危険性を指摘。
* 米国の「前方防衛」戦略に日本が組み込まれる恐れを警告。
* 攻撃的サイバー能力について、自衛隊が関与する可能性が示唆された。
* 国際法上の不明確さがエスカレーションリスクを招く可能性がある。
* 政府はプライバシー保護や国家主権確保の観点からの説明が求められている。