2025-10-27 コメント: 1件 ▼
宮城県知事ファクトチェック検討 SNSデマ対策で自治体初の試み
本年の参院選では、日本ファクトチェックセンター(JFC)が27本、各地域メディアが計150本以上のファクトチェック記事を公開し、前年の衆院選と比べて5倍以上に急増している。 この背景には、兵庫県知事選の反省が各メディアに浸透したことがあり、ファクトチェックは選挙報道の新しい標準に位置付けられている。
SNSで拡散した「悪行14選」のデマと街頭演説の混乱
26日の投開票で6選を達成した村井氏は、知事選期間中、X(ツイッター)で自らの写真に「悪行14選」と題して「メガソーラー大歓迎」「水道事業の運営は外資にお任せ」といった事実と異なる記述を重ねた画像が複数拡散される被害を受けた。日本ファクトチェックセンターの検証によると、これらの主張には根拠が示されておらず、実際には村井氏は秋保エリアのメガソーラー建設に対して「個人的に大反対だ」と表明していた。
水道事業に関しても、宮城県は民営化ではなく指定管理者制度を採用しており、内容は誤りやミスリードに満ちたものだった。土葬に関する「選挙のために土葬撤回」という主張も、市町村長の理解が得られなかったことが撤回理由であり、根拠不明な攻撃であった。知事選では街頭演説の時間の大部分がこうしたデマへの説明に充てられることになった。
村井氏はSNS上で法的措置の可能性を示唆するまでに追い詰められたが、「個人の事務所では対応できない」と実感したという。2025年の投票率は46.50%と、4年前の前回選から9.79ポイント低下し、デマ拡散による有権者の関心低下が懸念される。
自治体初の試み、多くの課題も残す
今回の検討は、選挙期間中のデマ対策で自治体が主体的に乗り出す初めての本格的な試みである。2024年の兵庫県知事選では、虚偽や真偽不明の情報が大量に拡散され、後手に回った対応への反省から、地元の神戸新聞がファクトチェック体制を強化した事例がある。
村井氏が目指す仕組みでは、候補者からの訴えを受けた県が調査し、問題があれば警察に通報することになっている。一方で、学識経験者からは懸念の声も上がっている。公的機関による情報への「正確・不正確」の判定は、表現の自由と情報流通の観点から慎重であるべきだという指摘だ。
国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)の基準では、ファクトチェック組織は「非党派性と公正性」「情報源の透明性」「資金源と組織の透明性」など5原則を満たす独立的な立場が求められる。公的機関が直接ファクトチェックを行う場合、中立性を保つことが難しい可能性がある。また、警察への通報基準も曖昧なままであり、誰が判定するか、どのような基準で違法性を判断するかについても不明確だ。
「知事選でこんなに多くのデマが広がるなんて思わなかった。県民が何が本当か分からなくなっている」
「個人で対応しきれないデマの波状攻撃は、当選後も続くのだろう。制度化が必要だ」
「第三者的な立場って言っても、県が運営したら本当に中立か疑わしい」
「警察に通報する基準はどうするのか。政治的な判断が入る余地があるのでは」
「ファクトチェック団体との協働という方法もあるはずだ」
全国での取り組み拡大、情報の真偽をめぐる新たな課題へ
本年の参院選では、日本ファクトチェックセンター(JFC)が27本、各地域メディアが計150本以上のファクトチェック記事を公開し、前年の衆院選と比べて5倍以上に急増している。この背景には、兵庫県知事選の反省が各メディアに浸透したことがあり、ファクトチェックは選挙報道の新しい標準に位置付けられている。
ただ、検証対象が特定の政党に偏っているのではないかという批判も存在する。学者からは、選挙でのファクトチェック拡大は有権者の判断材料を増やす一方で、党派的な分断を深める可能性も指摘されている。ファクトチェック記事が特定候補への攻撃に利用されるケースも報告されており、情報の正確性と政治的中立性のバランスが問われている。
宮城県が検討する仕組みは、全国の自治体で同様の要望が今後高まる可能性を示唆している。デマ対策の重要性が認識される一方で、公的機関による情報判定の危険性も同時に考慮する必要がある。村井氏は今後、県警や弁護士との検討過程で透明性を確保し、市民の信頼を得られる制度設計を目指す意向を示している。選挙時の情報流通のあり方をめぐる、この新しい試みの展開と課題解決の過程が注視される。