2025-10-17 コメント投稿する ▼
都職員初任給29万円へ、管理職不足深刻化で給与大幅増
都内の民間企業が初任給を大きく引き上げる中、公務員の給与が相対的に低下し、優秀な人材が民間に流出する事態となっています。 都人事委員会の勧告では、都職員の初任給を大卒相当で1万9800円引き上げて29万400円にすることが提案されました。 特に東証プライム上場企業では、約87パーセントの企業が全学歴で初任給を引き上げており、人材確保のための競争が激しさを増しています。
民間企業との人材争奪戦が激化
都人事委員会の勧告では、都職員の初任給を大卒相当で1万9800円引き上げて29万400円にすることが提案されました。これは国家公務員総合職と同水準になる大幅な増額です。しかし、民間企業の動きはさらに速く、都内の大手企業では初任給が30万円を超える例も珍しくありません。
2024年度の民間企業における大卒初任給の平均は23万9078円に達し、前年比で1万2346円という大幅な上昇を記録しています。特に東証プライム上場企業では、約87パーセントの企業が全学歴で初任給を引き上げており、人材確保のための競争が激しさを増しています。
都内の主要企業では、地域手当や各種手当を含めると、新卒者の実質的な初任給が25万円から28万円程度になるケースが多く、都職員の処遇との差が縮まっていません。
「公務員は安定しているけど、給料が低すぎる」
「民間なら同じ仕事量でもっと稼げる」
「都庁の採用倍率が1.5倍って、誰でも入れるじゃん」
「初任給30万円の企業があるのに、なぜ公務員を選ぶのか」
「都職員より民間の方が魅力的に見える時代になった」
管理職のなり手不足が深刻化
都職員の課題は初任給だけではありません。主任級を対象にした課長級への昇任試験の受験率が、2016年の35.7パーセントから2024年には21.0パーセントまで低下しています。業務の高度化や組織マネジメントへの不安から、管理職への昇進を敬遠する職員が増加しているのです。
この状況に対応するため、今回の勧告では課長級の月給を2万4120円、部長級を2万9400円引き上げるなど、職員平均の約2倍の増額を管理職に設定しました。役職別年収は、課長級で1170万6000円、部長級で1399万7000円、局長級で1926万9000円となります。
4年連続の給与引き上げでも追いつかず
今回の勧告による引き上げは4年連続となり、引き上げ率は3.24パーセントに達します。3パーセントを超えるのは1991年以来34年ぶりです。都職員全体の平均年収は約734万5000円となり、前年比で25万5000円の増額となります。
特に手厚くしたのが新卒者と管理職です。新卒者には初任給の引き上げに加えて、27歳までを対象に住居手当を2倍増の3万円にする措置も盛り込まれました。
都人事委員会は都内約800事業所の給与を調査し、従業員100人以上の事業所と都の給与水準を比較しています。民間企業の賃上げペースが速いため、公務員の給与改定が後追いになっている現状が浮き彫りになりました。
国も同様の危機に直面
国家公務員も同じ課題に直面しています。2024年度の人事院勧告では、総合職試験の大卒程度採用者の初任給を2万9300円引き上げて23万円にすることが提案されました。引き上げ率は14.6パーセントに達し、33年ぶりの高水準となりました。
しかし、東証プライム上場企業の平均初任給が23万9078円であることを考えると、国家公務員の給与水準も民間に追いついていません。霞が関では長時間労働や激務が常態化しており、優秀な人材の確保が困難になっています。
都職員の採用倍率は近年急速に低下しており、2024年度の事務職1類Bでは1.5倍まで落ち込みました。かつては難関とされた都職員採用試験が、今や3人に2人が合格する状況となっています。
公務員の給与は税金を財源としており、民間企業のように柔軟な賃上げが困難です。しかし、優秀な人材が民間に流出し続ければ、行政サービスの質が低下する懸念があります。公務の使命感だけでは人材を確保できない時代に入っており、抜本的な処遇改善が求められています。