2025-09-22 コメント投稿する ▼
東京都都営住宅等事業会計の消費税未納1億3642万円の全貌
この事業会計は、2002年度に一般会計から特別会計として変更されて以降、課税売上高が1,000万円を上回る場合、消費税申告・納税の義務が生じる制度となっています。 消費税法において、特別会計を設けて事業を行う地方公共団体は、**その特別会計が課税売上高要件を超える場合**、課税事業者として消費税申告・納税する義務があります。
東京都都営住宅等事業会計の未申告消費税問題の実態
東京都は2025年9月22日、都営住宅等事業会計(特別会計)で、平成31年度(2019年度)~令和4年度(2022年度)分の消費税・延滞税・無申告加算税など計約1億3,642万円を、東京国税局への申告・納付を行ったと発表しました。
この事業会計は、2002年度に一般会計から特別会計として変更されて以降、課税売上高が1,000万円を上回る場合、消費税申告・納税の義務が生じる制度となっています。にもかかわらず、2018年度以前の分は時効となり、2019~2022年度の分だけが未申告の対象となりました。
都の発表によれば、未申告が明らかになったきっかけは、2023年度からのインボイス制度導入への対応を進めていた際に、東京国税局から令和4年度以前の申告状況について照会を受けたことです。その調査の結果、申告義務があることが確認され、納付に至りました。
内訳は以下のとおりです:消費税本税が約1億1,965万円、延滞税約1,079万円、無申告加算税約598万円。
都住宅政策本部は、「消費税制度への理解が不十分だった」ことを理由に挙げており、詳細な記録が残っておらず、未納の総額は把握できていないとしています。
制度上の位置づけと類似事例
消費税法において、特別会計を設けて事業を行う地方公共団体は、その特別会計が課税売上高要件を超える場合、課税事業者として消費税申告・納税する義務があります。特別会計を「一の法人が行う事業とみなす」という規定があります。これにより、用途が公共性の高い事業であっても、売上・貸付等の収入があれば課税対象となる可能性があります。
下水道事業など、公共サービスを提供する自治体の特別会計でも、同様の消費税義務が生じることがあります。これらの事例では、公共料金・貸付収入などが「対価を得て行う貸付・資産の譲渡等」などの要件を満たすかどうかが争点となることがあります。 ([J-STAGE][2])
影響・問題点
この未申告・未納の問題には複数の問題点があります。
* 税務上の義務を怠ったことによる信頼性の低下。特に都営住宅など公共性の高い事業であるため、都民・国民の目に対する説明責任が問われます。
* 過去の記録が不十分という点は、行政の情報管理体制と会計監査体制の弱さを露呈しています。
* インボイス制度により過去の取引・請求書等の証拠や記録が発覚要件となるケースが増えており、他の自治体・公共事業でも同様の未処理がある可能性があります。
対策および今後すべきこと
都として取るべき対応・再発防止策は以下の通りです。
* 消費税法・会計制度に関する研修を特別会計を扱う部門で体系的に実施する。
* 過去の帳簿・請求書等の記録をできる限り復元し、未申告・未納分を精査する。
* 内部監査または第三者監査による定期チェックの制度化。税務の専門家を交えたレビュー体制を確立。
* 新しいインボイス制度への対応体制を強化し、請求書・契約書等証憑の保存および適切な処理を行う。
* 情報公開および説明責任を果たすため、納税義務の対象・未納の実態および再発防止策を公表する。
見解
この事例は、制度的義務と運用のギャップが長期間放置された結果であると見られます。意図的な隠蔽の証拠は現時点では示されていません。公開された情報によれば、都側は「理解が不十分だった」と説明しています。これは税務法制・会計制度への知識・運用体制の不足を示すものです。
公共会計の透明性と信頼性は、自治体運営の根幹です。規模の大きな収入・支出を伴う特別会計では、制度理解・内部統制・記録保存が必須です。今回の未納発覚を契機に、その点での制度強化が不可欠です。