2025-06-20 コメント投稿する ▼
脳脊髄液減少症の診療指針改定を患者団体が要望 厚労省副大臣「しっかり受け止めた」
脳脊髄液減少症の診療指針に改定要望 患者団体が厚労副大臣に直訴
6月20日、参議院議員会館にて、公明党の鰐淵洋子厚生労働副大臣が、認定NPO法人「脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」(中井宏代表理事)から、脳脊髄液減少症に関する要望を正式に受け取った。
脳脊髄液減少症とは、交通事故やスポーツ外傷などによって脳脊髄液が漏れ、慢性的な頭痛や倦怠感、めまい、集中力低下など、日常生活に支障をきたす多様な症状を呈する病気だ。外見からは分かりにくく、誤解や偏見にさらされるケースも多い。
現在、厚生労働省が示している「脳脊髄液漏出症診療指針」は2011年に作成されたもので、以降一度も改定されていない。患者団体は、医療技術や臨床経験の蓄積が進む中で、現行指針が実態に即しておらず、診断や治療が地域や医師によってまちまちである現状を問題視している。
「診療指針が古すぎる。最新の研究成果を反映すべき」
「この病気、なかなか理解されない。だからこそ国がもっと前に出て支援してほしい」
診療格差と社会的理解の乏しさ
脳脊髄液減少症は、見た目では健常者と変わらないことから「なまけ病」などと誤解され、家族や職場での理解を得られないケースも少なくない。とりわけ、地方の医療機関では診断・治療体制が整っていないこともあり、都市部との医療格差も問題視されている。
今回、協会が求めた診療指針の改定は、最新の画像診断技術やブラッドパッチ療法の進展、長期経過観察による臨床知見などを反映させたもので、診療の統一化と質の向上を目的としている。
また、学校や企業、自治体が当事者に適切な対応を行うためにも、厚労省が公的に指針を改定し周知徹底することが望まれている。
「医師によって診断が真逆。指針がないのと同じ状態」
「“気のせい”で済まされることがどれほど苦しいか、国はわかってない」
障害年金の申請にも壁 認定基準の見直し訴え
もう一つの深刻な問題は、障害年金の申請が極めて困難であることだ。脳脊髄液減少症はその診断自体が困難なうえ、症状が一定ではなく、認定医によって「客観的な証拠が不十分」と判断されることもある。その結果、多くの患者が就労困難にもかかわらず支援を受けられない状況にある。
協会はこの点についても「制度の運用が現状と合っていない」として、障害年金の認定基準や審査方法の見直しを強く要請。労働力を失っても福祉の支援を受けられない“谷間”に置かれている患者が多く存在するという実態を訴えた。
「働けないのに支援がゼロ。これが“自己責任”なら社会は冷たすぎる」
副大臣「しっかり受け止めた」 今後の対応に注目集まる
要望を受けた鰐淵副大臣は、「しっかり受け止めた。これからも連携しながら進めていきたい」とコメントし、改定への前向きな姿勢を示した。しかし、実際に指針が改定されるかどうかは、今後の省内の検討と政治的な調整に委ねられる。
患者や家族にとっては、この発言が「リップサービス」に終わらないことが重要だ。診療の統一、福祉制度との整合、社会的理解の促進という3つの課題は、いずれも喫緊の対応が求められている。
医療の進歩と患者の苦しみのギャップを埋めるため、厚生労働省にはスピード感ある対応が期待される。2025年には診療報酬改定も予定されており、それに向けての制度見直しの動きが加速するかどうかが今後の焦点となる。