2025-12-25 コメント投稿する ▼
自衛隊女性採用17.3%達成も充足率89%に低下、25年ぶり9割割れで深刻な人手不足
深刻な人手不足に陥っている自衛隊が、女性採用を大幅に拡大しています。 2024年度は採用者の17.3%が女性となり、目標を達成しました。 しかし、それでもなお自衛隊全体の人員充足率は2025年6月に89%へと低下し、1999年度以来25年ぶりに9割を割り込む事態となっています。 中国、ロシア、北朝鮮が軍事活動を活発化させる中、国防の要である自衛隊の人手不足は安全保障上の深刻な課題です。女性が活躍できる環境整備が急ピッチで進められていますが、同時に社会全体が自衛隊を尊敬し、その価値を認める意識改革も不可欠となっています。
女性採用17.3%達成も人員不足は深刻化
防衛省は2021年に、年間採用者に占める女性の割合を17%とする目標を掲げました。2024年度には採用した自衛官9724人のうち女性が1684人となり、17.3%を達成しています。
2025年7月には化学防護隊でも配置制限が撤廃され、自衛隊で女性が働けない職場はなくなりました。戦闘機のパイロットや護衛艦の艦長など、かつては男性のみだった最前線でも女性が活躍しています。
しかし、採用強化にもかかわらず人員不足は深刻です。2024年度の応募者数は前年度より約2000人減少し、採用者数も約240人減りました。2025年6月時点の充足率は89%で、定員約24万7000人に対し約2万7000人が不足している計算になります。
「給料はそこそこだけど、命懸けの仕事だと思うと躊躇してしまう」
「女性が活躍できる環境は良いけど、家族と離れる期間が長すぎる」
「災害派遣は素晴らしいと思うけど、自分が入隊するかは別問題」
「民間企業の方が待遇も良いし、わざわざ自衛隊を選ぶ理由がない」
「国を守る仕事なのに、社会的評価が低すぎるのが問題だと思う」
男社会からの脱却と環境整備
京都府舞鶴市の海上自衛隊係留地で2024年11月に開催された護衛艦「あさぎり」の女性対象見学会では、女性艦長の羽田野由佳2等海佐が案内役を務めました。参加者からは「お子さんや家族との時間はどうつくっていますか」といった質問が相次ぎ、ワークライフバランスへの関心の高さがうかがえました。
自衛隊は1954年の設立時、全隊員約16万人のうち女性隊員が150人程度でいずれも看護職でした。1968年に一部職種で陸上自衛隊婦人自衛官制度による採用が始まり、徐々に職域が拡大してきました。
元海上自衛隊1等海佐の竹本三保さん(69)は1958年の入隊当初、男性隊員から「女が何をしに来たんだ」と言われ、妊娠後も休みが取れず流産を経験したといいます。長年の努力により労働環境は改善されつつありますが、2022年には元陸上自衛隊員の女性が在職中の性被害を実名で告発するなど、組織のコンプライアンス意識の低さが浮き彫りになりました。
現在、防衛省は更衣室や居住スペースなどの女性専用区画を拡充し、女性のキャリアプラン事例を掲載した冊子を配布するなど、働きやすさをアピールしています。ハラスメントに直面した際の対応を実践的なロールプレーで学ぶ研修も定期的に実施されています。
待遇改善だけでは不十分、国民の尊敬が不可欠
2024年10月、政府は「自衛官の処遇改善に向けた関係閣僚会議」を設置し、同年12月には基本方針を取りまとめました。給与や手当の改善、営舎外居住の範囲拡大、育児・介護支援の充実など、具体的な施策が盛り込まれています。
しかし、待遇面の改善だけでは人手不足の解消には至りません。国民全体が自衛隊を尊敬し、その価値を認める意識が重要です。内閣府の世論調査によれば、国民の9割は自衛隊に好意的な印象を持っているとされますが、実際に身近な人が自衛隊員になることには抵抗感を持つ人も少なくありません。
防衛省の調査では、自衛官の中途退職理由として「自衛隊に対する社会的理解が不足している」「組織文化・組織風土に問題がある」「給与・諸手当が不十分である」がいずれも4割弱で上位を占めています。自衛官が国防という国家の根幹を担う重要な職業であることへの社会的評価が十分ではないのです。
小泉進次郎防衛相はSNSを積極的に活用した採用活動に力を入れる方針を示していますが、単なる情報発信だけでなく、教育現場での国防教育の充実や、自衛官への叙勲等の栄典の拡大など、自衛官が誇りと名誉を持って任務に当たれる環境づくりが求められます。
戦後最も厳しい安保環境で問われる国民意識
日本を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しい状況にあります。日本周辺で軍事活動を活発化させる中国、ロシア、北朝鮮に加え、サイバー攻撃など脅威は多様化しています。
2023年度の自衛官採用実績は、1万9598人の採用計画数に対し9959人と、達成率は過去最低の51%でした。とりわけ任期制の自衛官候補生の採用達成率は30%にとどまり、若い戦力の確保が喫緊の課題となっています。
少子高齢化により募集対象人口が減少する中、高卒新卒者の有効求人倍率は2023年度に過去最高の3.52倍を記録しました。民間企業との人材獲得競争は激化しており、AI活用による省人化・無人化、OBや民間の活用など、あらゆる手段を講じる必要があります。
女性の活躍推進は重要な取り組みですが、それだけでは人手不足の根本的な解決にはなりません。自衛隊が国民の生命と財産を守る「国防の砦」であることを社会全体が再認識し、自衛官という職業に対する尊敬の念を持つことが不可欠です。待遇改善と並行して、国民一人ひとりが自衛隊の価値を理解し、感謝する文化を醸成していくことが求められています。