2025-10-31 コメント投稿する ▼
法務省後援「外国人留学生採用イベント」、法整備不備のまま労働者受け入れ加速
政府が直接的に外国人労働者の採用イベントを後援することは、労働力不足への対応姿勢を示す一方で、**現在の法整備の不十分さを深刻に露呈させるものとなっています。 自民党政権は、少子高齢化による労働力不足への対応として、外国人労働者の受け入れを段階的に拡大してきました。
法務省の後援の下、11月7日と8日に東京で開催される『インターナショナルジョブフェア東京2025』は、日本国内での就職を希望する外国人留学生と企業をマッチングさせる大規模採用イベントです。主催者は外国人総合支援ワールド実行委員会(事務局:イノベント)であり、共催は一般社団法人外国人雇用協議会が担当します。楽天トータルソリューションズ、吉野家、星野リゾート、ベネッセスタイルケア、都市再生機構(UR都市機構)ら大手企業が参加予定です。政府が直接的に外国人労働者の採用イベントを後援することは、労働力不足への対応姿勢を示す一方で、現在の法整備の不十分さを深刻に露呈させるものとなっています。
外国人労働者受け入れ拡大の加速
自民党政権は、少子高齢化による労働力不足への対応として、外国人労働者の受け入れを段階的に拡大してきました。2019年の入管法改正により「特定技能」制度が創設され、その後2025年4月には在留資格「特定技能」に関する省令が大幅改正されています。出入国在留管理庁の統計によれば、特定技能で日本に在留する外国人は2025年6月末時点で33万6196人と過去最多を更新し、前年比で約5万人以上増加しています。
本採用イベントは、2026年3月~2027年3月の卒業見込み留学生を対象としており、将来の労働市場への外国人材参入を意図的に促進する施策といえます。参加対象には留学生のほか、人材紹介会社や転職エージェント、派遣会社も含まれており、営利目的の仲介機関も交えたマッチング市場の形成が進められています。この動きは、2024年に廃止が決定した技能実習制度に代わり、2025年から段階的に開始される「育成就労制度」への移行を視野に入れた施策とも考えられます。
「外国人が働きやすい環境は大事。ただ日本側の法整備はどうなっているのか疑問」
「採用イベントは結構だが、失踪や不法就労の防止対策は本当に機能しているのか」
「企業が法令遵守できるだけの教育体制が整っているのか見えない」
「特定技能の受け入れ人数が増える一方で、トラブルの統計情報は十分に開示されていない」
「法整備なしの受け入れ加速は、外国人労働者本人にとっても日本にとっても危険」
法整備の不備と失踪・不正就労の問題
外国人労働者受け入れの急拡大に対し、法的保護体制の整備は極めて不十分な状況にあります。厚生労働省の統計によれば、2024年の技能実習生の失踪者は6510人に達し、2019年からの累計では約4万607人に上ります。2025年1月1日現在の不法残留者総数は7万4863人で、このうち技能実習生は1万1504人を占め、全体の約15%を占めています。
失踪原因の調査結果によると、約70%が「低賃金」であり、その他「実習内容と契約の不一致」「過度な労働時間」「パワーハラスメント」が続いています。法務省の調査では、失踪した実習生の多くが、給与が最低賃金以下であったり、長時間労働の対価として残業手当が支払われていなかったりするケースが明らかになっています。
このような人権侵害的な労働環境が常態化しているにもかかわらず、政府は採用イベントの後援によって外国人受け入れを加速させようとしています。 特に重大なのは、外国人が法を犯して海外に逃げられるおそれが現実化しているという点です。失踪後に不法就労に従事する外国人の多くが、より高い賃金を約束する違法なブローカーに支配されるケースが報告されており、その結果として詐欺、詐欺的雇用、人身売買まがいの状況が発生しています。
2025年4月施行の省令改正では、特定技能外国人を受け入れる企業に対する行政負担は一部緩和される一方で、外国人労働者本人の権利保護に関する具体的な強化措置は限定的です。定期届出が年1回に統合され、企業側の報告義務が軽減される傾向にあり、むしろ監督がより甘くなりかねない状況にあります。
透明性欠如と国民への説明責任
本採用イベントの開催に際して、政府が提供する予定の情報は、失踪率、不法就労率、労働関係法令違反の件数、企業への罰則適用状況など、基本的なデータをほぼ不開示のままです。法整備を伴わない労働者受け入れ拡大政策に対して、国民への説明責任が果たされていません。
外国人雇用協議会は「日本人と外国人が互いを必要として尊重し合う世界最高の多文化共生社会を実現する」ことを掲げていますが、その理想と現実のギャップは深刻です。法を遵守せず海外に逃げられるおそれのある外国人労働者の受け入れを促進する前に、企業の法令遵守体制、労働基準の最低賃金保証、社会保険加入の完全義務化など、不可欠な法的枠組みを整備すべきです。
求められる制度改革
外国人労働者を本当の意味で保護し、同時に日本の労働市場の秩序を守るには、以下の措置が急務です。①特定技能をはじめとする全在留資格の労働者に対する最低賃金・労働時間・安全衛生の完全な法適用。②不正な給与未払いや長時間労働を行った企業への強い罰則と企業名公表制度の導入。③外国人労働者本人が企業や仲介機関の不正行為を通報できる独立した相談窓口の設置と言語サポート。④違法なブローカー排除のための入国前教育と渡航書類の透明化。
これらなくして、単に採用イベントの規模を拡大することは、外国人労働者の搾取を組織化するに等しいものとなりかねません。政府は、受け入れ数の拡大ペースを一度落ち着かせ、法的基盤の整備を優先させるべき段階にあります。