2025-07-01 コメント投稿する ▼
富士急トラベルに業務停止処分 下限割れ運賃で貸し切りバス手配、観光庁が行政処分
観光庁、富士急トラベルに業務停止命令 下限割れ運賃でのバス手配を問題視
観光庁は1日、旅行会社「富士急トラベル株式会社」(本社:東京都新宿区)に対し、旅行業法違反による行政処分を行ったと発表した。問題となったのは、バス事業者が国に届け出ている「運賃の下限」を下回る価格で貸し切りバスを手配したという行為。同社の富士吉田営業所(山梨県富士吉田市)が対象となり、7月2日から10日までの9日間、業務の一部停止を命じられた。
違法運賃でバスを手配
違反が確認されたのは2024年4月7~8日。富士急トラベル富士吉田営業所が、バスを下限よりも安い価格で手配していたことが判明した。観光庁によると、バス事業者はあらかじめ国に届け出た「標準的な運賃・料金制度」に基づいて運行を行うことが義務付けられており、その下限を割る運賃での契約は違法とされる。
観光庁は、「運賃制度の根幹を揺るがす行為」であり、旅行業者としての法令順守意識が極めて乏しいと厳しく指摘した。
富士急トラベル側の対応
処分対象となる富士吉田営業所は、期間中は新たな旅行契約を締結することができない。一方で、処分発表以前に既に契約されているツアーに関しては、引き続き実施が認められている。観光庁は「利用者への影響を最小限にとどめるための配慮」と説明している。
富士急トラベルからの正式なコメントは現時点で発表されていないが、観光庁の発表を受け、業界関係者からは「大手旅行会社の不祥事」として波紋が広がっている。
背景にある業界の課題
観光バス業界では、運転手の人手不足や燃料費の高騰、安全運行に必要な設備投資など、事業維持にかかるコストが年々上昇している。その中で、安価なツアーの組成を求める旅行会社の圧力や、価格競争の激化が違法な運賃契約を招く温床となっているという指摘もある。
実際、今回の富士急トラベルのように、価格面での“過剰な値引き”が発覚し、行政指導や処分に至るケースは後を絶たない。観光庁もこれまでに複数の旅行会社やバス会社に対して、同様の処分を下しており、今後も法令違反の監視を強めていく構えだ。
安全軽視の根絶へ、業界に求められる姿勢
観光庁の担当者は、「バス事業者の運賃には、安全確保のための人件費や整備費が含まれており、それを不当に削ることは利用者の命を軽視する行為につながる」と指摘した。旅行会社が安価な価格を優先し、業者に無理な価格交渉を迫ることは、事故やトラブルの要因となり得る。
同庁は旅行業界全体に向けて、今後も「安全と適正な価格」の確保を徹底し、違反が確認された際は厳正に対応するとしている。
再発防止へ、業界に課される責任
今回の行政処分は、富士急トラベルという名の通った大手であっても、法令違反に対しては容赦しないという政府の姿勢を象徴するものだ。今後、同様の処分を受ける旅行会社が増える可能性もある。
利用者にとって、安全な移動手段と適正な価格は両立すべきものであり、業界としても「安かろう悪かろう」の構図を根本から改める努力が求められる。富士急トラベルはこの処分を機に、信頼回復に向けた具体的な改善策を示すことが急務だ。