2025-06-26 コメント投稿する ▼
国交省が「置き配の標準化」検討 再配達削減と盗難リスクのはざまで制度見直しへ
置き配が宅配の“新常識”に? 国交省が標準化を検討、焦点は盗難対策と住環境
国土交通省は6月26日、宅配便の標準的な受け取り方法として「置き配」を正式に導入する方向で検討を始めた。宅配ボックスや玄関前への荷物の置き渡しを、配送業者が原則とする体制に見直すもので、人手不足が深刻化する物流業界の負担軽減が主な狙いだ。
同日、宅配業界の関係者らを交えた非公開の検討会の初会合が開かれ、今年秋をめどに制度の方向性をまとめる方針が示された。これまで「置き配」は、利用者の希望がある場合に限った“オプションサービス”扱いだったが、これをデフォルト(標準)とする制度改正が視野に入っている。
再配達は業界全体の大きな負担となっており、環境負荷や人件費の上昇にもつながっている。国交省の調査によると、再配達率は全国平均でおよそ11%。その多くが「不在」によるもので、置き配標準化は抜本的な対策の一つと位置づけられている。
「置き配が当たり前になるなら、配達員さんの負担は確かに減る」
「人手不足の解消には現実的な一手だと思う」
「標準化はいいけど、勝手に置いていってトラブルにならないか心配」
「田舎ならいいけど、都内のアパートだと無理でしょ…」
「置き配=盗まれても自己責任、になったら困る」
焦点は“盗難”と“プライバシー”
今回の検討で最大の課題となるのが「盗難」や「プライバシー侵害」だ。国交省によると、初会合では参加者から、置き配中の盗難や荷物の破損、誤配、さらには個人情報が記された伝票の取り扱いなど、住環境や安全性に関わる課題が多数指摘されたという。
特に都心部では、玄関が通りから見える集合住宅や、宅配ボックスの未設置マンションが多く、「どこに、どう置くか」という現場判断がトラブルの火種になりやすい。雨風による汚損やペット・鳥害などのリスクもある。利用者からは「安全な置き場所を事前に登録できる仕組みが必要」といった声も上がっている。
また、宅配業者とのトラブルが起きた場合の責任の所在も明確化が求められており、荷主企業や受取人、配送業者間での合意形成をどう設計するかが制度設計のカギを握る。
標準化で変わる「宅配の常識」
現在、宅配業者が用いる「運送約款」(配達契約の基本ルール)は、国交省が示した指針を参考に各社が策定している。これまでは置き配を“希望制”として位置づけてきたが、国交省が標準化を打ち出せば、運送約款の全面見直しが進むとみられる。
標準化されれば、利用者が特段の申し出をしない限り「置き配」が前提となり、不在でも自動的に荷物が玄関先などに届けられるようになる。これは再配達の削減には直結するが、一方で「荷物が盗まれた場合の補償」や「事前同意の明確化」など、利用者保護の仕組み整備が不可欠となる。
さらに、自治体や住宅事業者にも課題が広がる。宅配ボックスの設置補助や、防犯カメラ設置への補助、条例上の配慮など、社会全体で受け入れ体制を整える必要がある。
置き配時代に求められる“リテラシー”
今後、国交省は検討会を重ね、宅配業者、荷主、消費者の三者が納得できる制度の落としどころを探る。背景には、「物流の2024年問題」と呼ばれる、人手不足・労働時間規制強化に伴う輸送力の低下という構造的な危機がある。
置き配の標準化は、そうした物流インフラの維持に向けた抜本策の一つだが、制度変更だけでは不十分だ。利用者側にも、配達時間の柔軟な対応や、宅配ボックスの利用拡大、防犯意識の向上など、“新しい宅配の常識”に適応するリテラシーが求められる。
今秋には国交省の検討結果が示される予定だが、制度設計次第で私たちの荷物の受け取り方、そして“宅配との付き合い方”そのものが大きく変わることになるだろう。