2025-11-28 コメント投稿する ▼
国交省ハラスメント問題――声なき職員へ光を 当事者の声に耳を傾けよ
このような構図は、被害者が声をあげることをさらに難しくする「通報制度が形骸化」した状態を示しています。 しかも、国交省のような行政機関でこれが起きているということは、公的機関としての責任を問われる問題です。 しかし、国交省内で過去から継続的にハラスメントが報告されてきたことや、相談制度の信頼性が損なわれたままであることを考えると、「アンケートだけ」で根本的な改善につながるかは疑問です。
告発相次ぐ 国交省の職場環境
2025年11月28日、衆議院国土交通委員会で、堀川あきこ議員(日本共産党)は、国土交通省(国交省)内で報告されているハラスメント被害の実態について、議論を促しました。相談内容として、女性や非常勤職員に対する日常的な侮蔑言動、任期付き職員への攻撃的メールや物理的な差別行為、さらには局長による心理的圧迫で「いつ倒れてもおかしくない」といった訴えがあったといいます。こうした複数の告発は、国交省の職場環境が正常でない可能性を示す重大な警告です。
堀川氏は、これらが個別の問題ではなく「組織ぐるみ」で放置され、被害者が通報をためらっている実態があると指摘しました。特に、「相談しても改善されない」「相談後に報復された」という声が上がっており、内部通報制度では機能しないとの批判も含まれています。
過去調査でも明らか―国交省のハラスメント実態
過去の調査にも、職員の間で深刻な問題が浮上しています。2019年に国交省の管理職ユニオンが実施したアンケートでは、回答者1,362人のうち約24%が「通院中」「心身が限界」と答えており、パワハラを過去に受けた職員は607人、現在も受けている職員が26人いたと報告されています。さらに、同僚や部下がハラスメントを目撃したとの回答も336件にのぼりました。これは管理職に限定した結果であって、職員全体を対象とすれば、被害の規模はさらに大きい可能性があります。
このような数字は、国交省が抱える構造的な労務問題と職員の負担を示すものであり、単なる個別の「悪い上司」の存在を超える問題です。人手不足や過重労働が続く中で、職場環境が悪化し、ハラスメントが発生しやすい土壌があると見るべきです。
通報制度の限界と被害者の声
堀川氏の委員会での追及の焦点は、「通報できても守られない」「通報後に報復される」といった声が多くあることでした。ある任期付き職員(Aさん)は、デスクや椅子にガムテープを貼られるなどの嫌がらせを受けたにもかかわらず、人事課や人事院、労働局に相談しても改善されず、最終的に警察に被害届を提出したという深刻な事例です。これに対し、相談窓口であるはずの課長が、かえって情報を求めて報復的行動をとったという告発もありました。
このような構図は、被害者が声をあげることをさらに難しくする「通報制度が形骸化」した状態を示しています。しかも、国交省のような行政機関でこれが起きているということは、公的機関としての責任を問われる問題です。
政府の対応と今後の課題
このような告発を受けて、当時の金子恭之国交相は「職員アンケートなどを含め対応に努める」と答弁しました。
しかし、国交省内で過去から継続的にハラスメントが報告されてきたことや、相談制度の信頼性が損なわれたままであることを考えると、「アンケートだけ」で根本的な改善につながるかは疑問です。
真に必要なのは、省全体を対象とした独立の第三者調査です。匿名性と安全が担保された形で、過去の被害の有無、対応の経過、報復の実態などを洗い出す必要があります。また、調査後には改善策の公表、再発防止のための研修、人事制度の見直し、相談窓口の強化といった包括的な取り組みが不可欠です。
さらに、人員不足や過重労働という構造的な問題の是正――安定した人員配置と適切な労働環境の整備――も同時に進めなければ、この種のハラスメントが温床となってしまうでしょう。
公共機関だからこそ問われる責任
国交省は、インフラ整備・災害復旧・交通政策など国民の安全と生活に直結する業務を担う政府機関です。そんな公共機関自身が、働く職員を守れず、職場での暴言や差別、報復がまかり通るようでは、政策の信頼性にも大きく影を落とします。行政機関だからこそ、透明性と公正性が徹底されなければなりません。
被害者が声をあげやすく、安全に保護される仕組みを整えることは、国交省の信頼回復だけでなく、国民全体の信頼を取り戻すことにもつながります。今後、国会も省庁も、そして私たち国民も――見て見ぬふりをせず、厳しい目でこの問題と向き合う必要があります。
国交省のハラスメント問題は、個別の不祥事ではなく、公共の責任を問うべき制度的な問題です。行政の根幹が問われる今、徹底した実態把握と改革こそが急務です。