2024-10-31 コメント: 1件 ▼
電動キックボード「Luup」に元警視総監が天下り 急速な規制緩和と政官業の深い結びつき
赤字ベンチャー「Luup」に、まさかの超大物が就任
都心の通勤路やコンビニ前などで、ひときわ目立つ緑色の電動キックボード──その運営企業である「Luup」が、元警視総監の樋口建史氏を監査役に迎え入れた。年商20億円規模ながら、年間赤字額も同程度というスタートアップ企業に、なぜ日本の警察トップ経験者が天下りするのか。政官業の“深層”を覗かずにはいられない。
Luupは2018年創業、CEOは当時20代だった岡井大輝氏。異例ともいえるスピードで全国展開を進め、今や1万カ所超のポート(駐輪スポット)を展開する。しかしその成長の裏側には、ただのビジネス努力だけでは語りきれない“追い風”があった。
「年間20億の赤字企業に元警視総監? ただのスタートアップじゃないな」
「こういう“見えないコネ”がルールを変える」
政治と官僚を味方に、規制緩和を一気に推進
Luupが電動キックボードの普及を進める一方で、政治の世界でも急速な制度整備が進んだ。2019年、自民党内に「マイクロモビリティ議連」が発足。座長は山際大志郎氏、後見人のように存在感を示していたのが甘利明・元自民党幹事長だった。
彼らの政治的後押しのもと、警察庁は2020年から規制緩和に動き出し、2023年には免許不要・ヘルメット任意の「特定小型原付」制度が施行。こうして、わずか数年で「電動キックボードは自転車並みに自由に乗れる」状況が制度化された。
警察庁内部からは反対意見が強く、「現場では無法地帯になる」との声も上がっていたが、政界の意向には抗えなかった。そしていま、その業界最大手に元警察トップが加わった形だ。
「ルール作ってから天下り。これはもう官製ビジネスでしょ」
「反対してた警察庁も、こうやって最後は取り込まれるんだな」
摘発2万5000件超、現場では混乱続く
こうした“制度先行”の拙速な自由化のツケは、すでに数字として現れている。2023年7月の新制度施行から1年間で、交通違反での摘発件数は2万5000件超。信号無視、逆走、無保険運転といった違反が後を絶たず、重大事故も複数発生している。
にもかかわらず、Luupのような業界大手はあくまで規制緩和の恩恵を受け続けており、そこに「交通安全の監視役」として元警視総監が加わるという構図は、果たして国民の納得を得られるものだろうか。
Luup側は「交通違反の減少や事故防止を目指し、樋口氏から指導を受けたい」と説明しているが、制度改正の波に乗って一気に市場を拡大してきた事業者に、いまさら“交通安全のお目付役”として警察OBが入るのは、後付けの正当化に過ぎないとの指摘もある。
「警察トップが“監査役”って、何を監査するつもり?」
「そもそも拙速な制度にゴーを出した政治が問題だろ」
問われる「規制の公平性」と「利権構造」
本来、警察や政治は国民の安全と秩序を守るべき存在である。だが、今回のように特定業界やベンチャー企業の要望が政治主導で通り、それに反対していた警察組織からOBが“天下り”する構図は、まさに典型的な“政官業の癒着”を思わせる。
しかもLuupは、いまだ赤字経営のスタートアップ。それでも政界・官界とのパイプを活かして規制を動かし、大市場を開拓する戦略は、まさに“制度設計を利用した成長モデル”だとも言える。
電動キックボードそのものの可能性を否定するものではない。しかし、「安全より利権」「公平より便宜」がまかり通る制度設計では、信頼は築けない。元警視総監の天下りはその象徴に見える。