2025-12-05 コメント投稿する ▼
夜間中学62校に倍増、不登校35万人時代の学び直し拠点として拡大
夜間中学校の設置が全国で急速に拡大し、2025年度には32都道府県に62校と、2016年の教育機会確保法成立時の31校から倍増しています。 不登校生徒数が12年連続で増加し2024年度には過去最多の35万3970人に達する中、実質的に教育を受けられなかった「形式卒業者」の学び直しの場として夜間中学が注目されています。
相次ぐ夜間中学の新設
平成28年(2016年)12月に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立し、全ての地方公共団体に夜間中学における就学機会の提供等の措置を講ずることが義務付けられました。この法整備により各自治体での設置検討が本格化し、2025年度には32都道府県に62校が設置される見込みです。
さらに設置拡大は続いており、2026年度には栃木、福井、大分、2027年度には青森、富山、長野、新潟の各県に初めての夜間中学が開設予定です。山形、山梨、岐阜でも時期は未定ながら開設を検討しています。
文部科学省では、全ての都道府県・指定都市に少なくとも1校の夜間中学が設置されるよう、また、既存の夜間中学が設置されている地方自治体においてもその充実を図り、夜間中学での学びを希望される人が一人でも多く夜間中学に通うことができるよう、様々な支援を行っています。
不登校増加と形式卒業者の急増
夜間中学設置拡大の背景には深刻な不登校問題があります。2024年度の文科省の調査では、小・中学校における不登校児童生徒数は過去最多の35万3970人と発表されました。これは12年連続の増加で、実質的に学べないまま中学校を卒業した形式卒業者の増加につながっています。
夜間中学では外国籍生徒が多数を占めていましたが、近年は日本国籍の生徒、特に形式卒業者の割合が急増しています。2024年度の調査では全生徒1969人中、日本国籍の生徒559人(28.4%)のうち形式卒業者が大きな割合を占めており、今後さらに増加すると予想されています。
「不登校で中学校にほとんど行けなかったが夜間中学で勉強できるようになった」
「少人数だから先生が丁寧に教えてくれて勉強が楽しくなった」
「昼間の学校は合わなかったが夜間中学なら通いやすい」
「学び直しができる場所があってよかった」
「中学の内容から丁寧にやり直せるのがありがたい」
生徒構成の変化と多様性
現在の夜間中学は「社会の縮図」と呼ばれるほど多様な生徒層で構成されています。2024年度の文部科学省調査によると、全生徒1969人のうち外国籍生徒が1256人(63.8%)を占めていますが、これは以前の約8割から相対的に低下しています。
戦争や貧困で義務教育を受けられなかった高齢者は減少している一方、日本の国際化進展により1990年代から「ニューカマー」と呼ばれる外国人とその家族の入学が増加しました。さらに2015年7月の文科省通知により形式卒業者の入学が認められて以降、不登校経験者など日本国籍の若い世代が急速に増えています。
夜間中学は昼間の中学校と同じ教育課程で、主に平日の夕方から夜にかけて1日4時間程度の授業を実施します。教員免許を持つ先生が指導し、公立の場合は授業料無償で、全課程修了により中学校卒業資格を取得できます。
設置格差と地域課題
一方で地域格差も深刻です。岩手、秋田、島根、山口、愛媛の5県では開設予定がありません。各県教委の取材に対し「ニーズ調査で顕著なニーズが認められなかった」「要望がなく、ただちに設置を判断する状況にない」との回答が共通して寄せられました。
しかし2020年国勢調査で全国に約90万人の義務教育未修了者がいることが判明しており、潜在的ニーズは各県に存在するとみられます。秋田や岩手は公共交通機関の整備状況や冬季の通学困難を理由に挙げており、地理的条件が設置の障壁となっています。
開設済みの学校でも生徒数が少ない例があり、未設置自治体が二の足を踏む要因となっています。文科省担当者は「先行事例や補助事業を紹介するなど、引き続き理解を求めていきたい」としています。
福岡大学の添田祥史教授は「量的拡大の最初のゴールが見えた今、質的向上など次の展開を示して取り組みを進めていく必要がある」と指摘しており、設置数増加から教育内容充実への転換期を迎えています。夜間中学が真の教育セーフティネットとして機能するには、地域格差解消と教育の質向上が急務となっています。