2025-11-27 コメント投稿する ▼
沖縄県ワシントン事務所 職員証言に浮上した「黒箱化」の実態
沖縄県議会の米ワシントン駐在事務所をめぐる問題で、当時の担当職員自身が資金の流れの不透明性を懸念していたことが、証人尋問で改めて明らかになった。 さらに、株式の公有財産登録がなされていなかった点についても、運天氏は「持ち株が少額だったため、地方自治法上、資産に当たるか判断がつかなかった」とし、本庁に確認を促すよう進言していたと証言。
委託業者任せで「違和感あった」――元所長証言
沖縄県議会の米ワシントン駐在事務所をめぐる問題で、当時の担当職員自身が資金の流れの不透明性を懸念していたことが、証人尋問で改めて明らかになった。特に、現地委託業者が全支出を取り仕切る仕組みについて、「違和感を感じていた」と語った元所長の証言が注目されている。
参考人として出席した2代目所長の運天修氏は、百条委で「委託業者任せで、出納や会計が私たちの手元にない。法人として当然やるべきことができない形は非常に不安だった」と述べ、当初から運営の在り方に強い疑念を抱いていたことを認めた。
さらに、株式の公有財産登録がなされていなかった点についても、運天氏は「持ち株が少額だったため、地方自治法上、資産に当たるか判断がつかなかった」とし、本庁に確認を促すよう進言していたと証言。関係手続きの不備を自身で問題視していたことを示した。
これらの発言から、駐在事務所の設置・運営に関わった職員たち自身が「不適切だ」と感じていた実態が裏付けられた。外部からの追及ではなく、当事者の言葉によって明らかになったことは重い意味を持つ。
異例の「法人化」と制度から乖離――手続きの混乱
なぜこのような形になったのか。調査によると、駐在事務所は県の公務機関ではなく、あえて株式会社(「ワシントンDCオフィス社」)として設立されていた。これは、米国で基地問題などを訴える際、外国の代理人として届け出る必要があったためだ。
だが、この法人化については、県庁内で十分な手続きがとられていなかった。初代副所長だった山里永悟氏は「準備期間に余裕がなく、かなりのスピード感で進めた」と述べ、設立当初から手続きの不備や混乱があったことを明かしている。
加えて、当時の知事公室長だった町田優氏は、事務所を「県の組織と理解していた」と証言。法人であるという認識すらなかったという。これにより、本来必要とされる株式の公有財産登録や営利企業従事許可などが適切に行われず、制度としての正当性が大きく損なわれていた。
こうした手続きの混乱と制度からの乖離が、「違法/不適切ではないか」という職員の懸念につながっていたことが読み取れる。
県議会の百条委が浮き彫りにした構造的な欠陥
県議会が設置した特別調査委員会(百条委)は、こうした構造的な問題を徹底的に洗い直してきた。報告書では、駐在事務所をめぐる契約関係や会計処理の在り方、法人設立の手続きとその正当性について「著しく適正を欠く事務処理だった」と断じられている。
また、同じ報告書で、「現状のままでの運営は難しい」と結論づけられ、事務所は閉鎖・清算の道を歩むことになった。
しかし、県政関係者は、将来的な再設置に含みを残しており、「文書で意思決定を明確にし、公有財産登録や従事許可を適切に行う」と説明。だが、職員らが最初から疑念を抱いていた資金・手続きの構造そのものをどう改めるかが最大の焦点だ。
職員の「声なき懸念」をどう受け止めるか
本件で注目すべきは、外部の追及ではなく、当時の担当職員から率直に「不適切だ」との懸念が出たことだ。もし制度設計や手続きが明確であれば、職員自身が疑問を抱く必要はなかったはずだ。
こうした職員の率直な声が浮き彫りになったことは、県政運営の透明性、責任の所在、行政と政治の境界 ―― その根本的なあり方を見直す契機になるはずだ。税金を使って外国に拠点を設け、活動させるならば、手続きと会計の透明性は絶対だ。職員の懸念を無視してまでも、政治的な目的を優先してよいわけがない。
再び同じ過ちを繰り返さないためには、県民への丁寧な説明と制度の根本からの改革が求められる。