2025-11-04 コメント投稿する ▼
沖縄基地問題、対話の場を! 玉城デニー知事が訴える民主主義的解決
政府は、普天間基地の移設先として辺野古を唯一の解決策としている姿勢を維持していますが、沖縄県側は地元の同意・対話なしに進められるプロセスに大きな疑問を持っています。 知事が「県外の人や若者たちが自分ごととして考える機会をつくろう」とする意図は、基地問題が当事者である沖縄県民だけの責任ではなく、全国的な視点で共有されるべきテーマであるという認識に基づいています。
「対話の場」に沖縄も加えて
沖縄県知事・玉城デニーは2025年11月4日、東京都板橋区の大東文化大学で開催された県主催の「トークキャラバン」において、県外の人や若者にも沖縄の基地問題を「自分ごととして」考える機会をつくることを重視すると表明しました。講演では、県内で長年続く米軍基地の負担、そしてそこに伴う危険や環境・住民生活の課題が改めて浮き彫りになりました。
普天間・辺野古をめぐる現状と知事の訴え
玉城知事は基調講演で、沖縄県宜野湾市の普天間基地周辺で米軍ヘリが墜落し、小学校の校庭に窓枠が落下した事例などを挙げ、現場の危険性をあらためて報告しました。さらに、米軍基地由来とされる有機フッ素化合物「PFAS」汚染や米軍機の爆音といった住環境への影響も指摘しました。
また、同基地の「移設先」として示される名護市の辺野古・大浦湾周辺では、最深90メートルにおよぶ軟弱地盤の問題により、基地完成の見通しが立っておらず、移設がむしろ危険回避にならない可能性や、貴重な自然が回復不可能に破壊される恐れを訴えました。知事は、日米両政府だけの判断でなく、沖縄県を含む「対話の場」を確保する民主主義的プロセスが不可欠だと強調しました。
歴史・対話・主権の視点から
続くパネルディスカッションでは、琉球大学の山本章子准教授が、沖縄には戦後27年に及ぶ米軍占領統治という「軍のむき出しの暴力と同居してきた歴史」があると指摘しました。一方、ウェブ上の沖縄情報発信プロジェクト「あなたの沖縄」代表の西由良さんは、2016年にうるま市で起きた元米兵による女性殺害事件の被害者が20歳であった点を挙げ、「ひとごととは思えない」と述べ、基地問題を若い世代が身近に考える重要性を訴えました。さらに大東文化大学の川名晋史教授は、沖縄の基地問題は日本の「主権の問題だ」と断じ、毎日新聞元記者の佐藤敬一さんは「沖縄の現状を国民が許していれば、全国で不条理に反対の声を上げても無視される事態になる」と警鐘を鳴らしました。
国の対応と沖縄県の要求のギャップ
知事の訴えは、日米安全保障体制を背景に、政府が沖縄県の重い基地負担に対して十分な説明や合意形成を行っていないとの批判を含んでいます。政府は、普天間基地の移設先として辺野古を唯一の解決策としている姿勢を維持していますが、沖縄県側は地元の同意・対話なしに進められるプロセスに大きな疑問を持っています。玉城知事は、対話を通じた民主的なプロセスがなければ、基地問題の根本的解決にはつながらないと主張しています。
このような訴えは、基地負担が沖縄だけの地域課題ではなく、国家のあり方、国民の意見を反映させる民主主義の問題でもあることを示しています。
若者・県外住民を巻き込む意義と課題
知事が「県外の人や若者たちが自分ごととして考える機会をつくろう」とする意図は、基地問題が当事者である沖縄県民だけの責任ではなく、全国的な視点で共有されるべきテーマであるという認識に基づいています。特に若者が「基地」「環境」「騒音」「主権」といったキーワードを意識し、自らの未来を考えるきっかけとすることは、対話型の解決プロセスにおいて重要です。
しかし一方で、県外住民や若者を巻き込むためには、情報が十分に伝わっていない、関心が薄い、問題が複雑すぎるという課題もあります。知事の今回の講演会は、それらの壁を越えるための一歩と位置付けられますが、継続的な取り組みが求められます。
展望と提言
基地問題を巡る今後の展望として、まず国と県との“対話の場”設置が鍵となります。辺野古移設や普天間基地の危険性除去を巡る議論が、沖縄県を排除した形で進行している現状では、地元の納得を得るとは考えにくいです。日米だけでなく、沖縄県と地域住民、そして県外の国民をも含む場を設けるべきです。
次に、若者・県外住民への情報発信を強化すべきです。基地問題は沖縄だけの話ではなく、全国の安全保障、主権、環境保全に直結しています。これらの視点を分かりやすく伝える教材やフォーラムを継続的に展開することで、より広い理解を得ることができます。
最後に、基地負担の軽減策と環境・生活環境の改善に向けた具体策を政府・県が協力して明示すべきです。例えば騒音・汚染・事故リスク軽減のためのロードマップを公開し、期限と責任体制を明確にすることが必要です。沖縄の苦悩を全国の課題として共有することが、真の解決につながります。