2025-11-03 コメント投稿する ▼
ニセコのオーバーツーリズム 外資乱開発と行政責任が露呈「観光バブルの陰で地元経済崩壊」
2024年の実態調査で、この繁栄が地元住民の暮らしを蝕み、本来の地域経済を空洞化させていることが明らかになりました。 **「観光客がたくさん来ても地元は潤っていない」という声は、ニセコの繁栄が「外資マネーによる寄生型観光」に転換してしまった現実を示唆しています。
観光客は住民の10倍以上 繁栄の裏側で深まる地域経済格差
パウダースノーの聖地として世界から30万人以上の外国人観光客が集うニセコエリア。しかし2024年の実態調査では、この繁栄が地元住民の暮らしを蝕み、本来の地域経済を空洞化させていることが明らかになりました。ニセコエリアの人口はおよそ2万人に対し、冬季には外国人観光客が殺到し、交通インフラ、雇用環境、生活環境が次々と観光ニーズに置き換わっています。
外国人観光客向けのサービス業以外の産業は次第に衰退し、かつての地元産業で働く人口が急速に減少。地元農業従事者も、パッチワークの丘で知られる美瑛町同様に、観光客の無断侵入による農地被害に悩まされています。「観光客がたくさん来ても地元は潤っていない」という声は、ニセコの繁栄が「外資マネーによる寄生型観光」に転換してしまった現実を示唆しています。
カナダやオーストラリアから来たスキー客が惚れ込んだニセコの雪質。30年以上前の口コミからスタートしたこのリゾート地は、コロナ禍からの急速な回復を機に、単なるスキー観光地から高級不動産投機の対象へと変貌を遂げました。2020年から2024年のリゾートホテル施設数は15軒から21軒以上に増加。ホテル客室数も約1,000室から約2,000室に倍増しており、建設ラッシュが続いています。
「観光客が増えるのは良いことだと思ってた。でも地元の店が観光客向けに変わって、地元民が使えなくなった」
「子どもの将来のためにニセコを離れる家族が増えている。雇用は観光業しかない」
「冬の間、地元の人は町にいなくなる。観光客ばっかりで自分たちの町じゃないみたい」
「外資系ホテルばかり増えて、給料も不安定。この先、ニセコは外国人だけの町になるんじゃないか」
「農業をやめて観光業に転職した人ばかり。北海道の産業が失われていく」
無許可伐採3.9ヘクタール 相次ぐ違法開発で露呈する「監視の穴」
こうした経済的な地域空洞化に加え、外資による無秩序な開発がニセコの自然環境と地区の秩序を直撃しています。2024年6月、倶知安町巽地区で中国資本の不動産企業が行った無許可森林伐採は約3.9ヘクタール(サッカーコート約5個分)に及ぶものでした。当初、北海道への報告では「1ヘクタール未満」とされていましたが、住民からの通報を受けた現地調査で実態が明らかになりました。
森林法で「森林として利用すべき土地」と定められた場所での無届け伐採。さらに建築基準法、都市計画法、土壌汚染対策法など少なくとも4つの法律に同時に違反していたのです。この企業は「陽雪ノ華」と名付けたリゾート別荘の建設を計画していたとされており、YouTubeで200戸の豪華別荘地を宣伝していました。
さらに10月には、ニセコ町内のコンドミニアム建設現場で、建物基礎が町道にはみ出して建てられていることが判明。町は10回以上の撤去指導を行いながらも、いまだに解決されない状態が続いています。町道を侵ぶするだけでなく、電圧調整機器も半分が公道にまたがったままです。ニセコ町都市建設課は「このままではらちが明かない」として、裁判も辞さない覚悟で対応を検討しています。
コンドミニアム運営の中国人女性は「町の所有地だとは知らなかった」と述べ、「近いうちに移動させる予定」としながらも、実現に至っていません。この言動は、単なる無知ではなく、「ルール無視による事実上の時間稼ぎ」とも解釈できます。
行政の責任逃避と「抜け穴指南」がもたらす二重の罪
これらの事例から浮かび上がるのは、外資企業による開発モラルの欠落だけでなく、北海道庁およびニセコ町の行政指導が極めて甘いという構造的問題です。違法行為が摘発された後、北海道は「工事停止勧告」を発令しますが、その後の対応が極めて緩いのです。 参政党から出馬した田中よしひと氏の指摘では、北海道は「違法行為へのペナルティをかけず、様々な抜け道を指南して書類上は違法でないようにしている」と述べています。
ニセコ町は2023年10月に景観地区条例を強化し、高さ制限や形態意匠制限を導入しました。しかしこの条例強化さえ、既に発覚していた無許可伐採や違法建築を防ぐには至りませんでした。行政の事後対応的な姿勢では、外資企業の先制攻撃に追い付かないのが実態です。
北海道新幹線延伸による地価上昇 さらに加速する外資流入の構図
2030年度末の北海道新幹線札幌延伸は、ニセコバブルをさらに過熱させる引き金になる可能性があります。札幌―倶知安間は現在の在来線利用で約2時間が約25分に短縮されます。既に倶知安町の地価上昇率は全国トップクラス。ヒラフ坂の地価は2014年の1㎡当たり5万円から2020年には72万円と約14倍に跳ね上がっています。新幹線開業に向け、さらなる地価上昇と外資買収ラッシュが予想されています。
2006年から2020年の統計では、外国資本による日本全国での森林取得は278件、約2,376ヘクタール。そのうち北海道が占める割合は突出しており、特にニセコ・倶知安周辺で買収が進んでいます。名義上は香港企業やバージン諸島法人でも、実質的には中国資本が背後にあるケースが大半です。
オーバーツーリズムの本質 「観光経済」と「地域経済」は別物
京都、鎌倉、北海道美瑛町に続き、ニセコも典型的なオーバーツーリズムに陥っています。国連世界観光機関は「観光地の受け入れキャパシティを超え、地域社会や環境に負の影響を与える状況」と定義しますが、ニセコではこの「負」が地元民の日常生活そのものとなっています。
美瑛町では、農家の私有地である畑への無断侵入、牧草ロールへの無断上昇などのマナー違反が相次ぎ、人気スポット「シラカバ並木」さえ伐採されました。ニセコでも同様に、交通渋滞、ゴミ問題、騒音、そして観光客向けビジネスの急速な展開による、地元住民が利用できる施設や店舗の急速な消失が起きています。
かつて繁栄していた地元の商店街は、高級ブティック、外国人向けレストラン、高級不動産仲介所へと置き換わりました。観光客が年間30万人でも、その消費の大半は外資系ホテルやコンドミニアム企業へ吸収されます。地元農業、地元商業、地元雇用といった「本来の地域経済」から取り零れた所得は、確実に減少しています。
必須は「規制」ではなく「制度設計」 地元軽視の政策転換を求む
不動産関係者は「問題の核心は、外資が開発する際に行政が適切な説明や指導を行えず、問題が大きくなってから立ち往生することにある」と述べています。つまり、外資排斥ではなく、事前の厳格な法令遵守体制の構築が急務なのです。
ニセコ町は水源保全区域について町が直接土地を買い戻す動きを見せていますが、全域をカバーするには限界があります。北海道全体、そして国レベルでの外国資本による土地取得の透明性確保と事前規制の法整備が必要です。
2024年度の訪日外国人消費額は過去最高の8兆円超。「観光立国」の掛け声の下、ニセコはその先鋒となりました。しかし、その繁栄が地元民の流出と地域産業の衰退をもたらしているなら、政策は根本から見直されるべきです。外資マネーの恩恵を受けるのは不動産投機家だけで、地元民は取り残される。この矛盾を放置したまま、ニセコは「日本人の街ではない」状態へと急速に進行しているのです。