2025-12-18 コメント投稿する ▼
檜垣幸人会長「器を大きく」1兆円造船基金で設備投資意欲、中韓8割シェアから反転攻勢
政府による1兆円規模の造船業再生支援を受け、日本造船工業会の檜垣幸人会長(今治造船社長)が2025年12月18日の定例会見で改めて設備投資への強い意欲を示しました。 世界市場で中国・韓国が約8割のシェアを握る厳しい現状の中、檜垣氏は「まずは器を大きくしないと、コスト競争力は高まらない」として生産規模拡大の必要性を強調しています。
1兆円基金で造船業再生
檜垣会長「まずは器を大きく」設備投資に強い意欲 中韓シェア8割の現実から反転攻勢へ
政府による1兆円規模の造船業再生支援を受け、日本造船工業会の檜垣幸人会長(今治造船社長)が2025年12月18日の定例会見で改めて設備投資への強い意欲を示しました。世界市場で中国・韓国が約8割のシェアを握る厳しい現状の中、檜垣氏は「まずは器を大きくしないと、コスト競争力は高まらない」として生産規模拡大の必要性を強調しています。
世界シェア4割から1割台へ急落の現実
日本の造船業界は深刻な危機に直面しています。我が国の造船業は、1990年代には世界シェアの4割近くを占めたが、その後2000年頃から急速にシェアを伸ばした中韓との間で熾烈な競争が続いている状況で、足元のシェア(24年)は日本12・8%、韓国28・1%、中国54・7%まで低下しています。
特に深刻なのは、2024年の世界の造船市場において、中国の圧倒的な優性が改めて示されました。新規受注において、中国はCGTベースで世界シェアの70%以上を獲得し、トン数ベースでも全体の約3分の2を占め、市場における主導的地位を確固たるものにしましたという現実です。
こうした状況を打破するため、政府は月内にも策定する総合経済対策に、官民で造船業に1兆円規模を投資すると盛り込む。2035年に建造量を24年比で倍増させることをめざす方針を打ち出しました。
「まずは器を大きく」檜垣会長の戦略
檜垣会長は会見で、世界の造船市場における課題について具体的に言及しました。韓国は本来倒産すべき企業を公的に救済、中国は実質的に政府丸抱えの各種支援が行われている中で、日本は公正な競争環境に置かれていないと指摘しています。
特に韓国については、経営難に陥った旧大宇造船海洋に1兆円を超える巨額の公的金融支援を実行。信用力の低い造船所に市場で得られないような公的保証を付与し、受注を後押しした実態があります。
このような不公正な競争環境の中で、檜垣会長は生産規模拡大を重視する理由として、古くなった船を処分して新しく建造する「リプレース」の国内需要を国内造船が逃すことの深刻さを挙げました。その上で、コスト競争力を高めるためには生産能力の向上が不可欠との認識を示しています。
基金活用で人手不足解消とロボット導入
業界団体の日本造船工業会は民間の借り入れも含め3500億円を投じる考えを示す。政府も同額を拠出し基金をつくる想定となっており、官民一体での大規模投資が実現する見込みです。
基金による投資は各社で人手不足を補うロボット投資など幅広い分野に振り向ける予定で、船舶建造は、多数の部材(数十万点~100万点)を短期間で組み立て建造する極めて複雑な工程である造船業の特性を踏まえた自動化・効率化が期待されます。
「1兆円の基金でようやく中韓と同じ土俵で戦える。日本の技術力を生かす時が来た」
「造船業は地域の雇用を支えている。政府支援で地方経済も活性化してほしい」
「アンモニア船や水素船など環境対応技術では日本が先行している。チャンスだ」
「中国や韓国の政府支援は異常。日本もようやく本気で対抗してくれる」
「建造量倍増は現実的な目標。檜垣会長のリーダーシップに期待している」
10年後倍増計画「達成は可能」
日本全体で船舶の建造量を10年後に現在の倍の1800万総トンに伸ばす政府計画について、檜垣氏は「達成は可能だ」との認識を示しました。この目標は現在の厳しい現実を考えると野心的ですが、檜垣会長は「日本経済やサプライチェーン(供給網)を守るためにまずは世界シェア20%を最低限達成しないといけない。そうしないと世界からも見放されてしまう」と危機感を込めて語っています。
実現に向けては業界再編も重要な要素となります。檜垣氏は「大きな会社同士の棲み分けは終わっている」として従来型の再編については一段落したとの認識を示しつつ、脱炭素社会で求められるアンモニアや水素といった新燃料に対応した船の設計では、海運会社や造船会社の垣根を越えた協業が必要だと指摘しました。
「オールジャパン」で技術革新推進
特に注目すべきは、檜垣氏が「『オールジャパン』というアライアンス(連合)で最大限効率を上げる必要がある」と述べた点です。これは単なる企業間の協力を超え、業界全体での連携強化を意味しています。
アンモニア燃料船などについては、中国や韓国との開発競争が激化している。国土交通省は2024年7月、次世代船舶の受注で30年に世界シェア首位を目指す目標を打ち出した状況の中で、技術開発競争に勝ち抜くための戦略的な取り組みが求められています。
実際に、造船大手の今治造船はクレーン新設のほか、アンモニアや液化天然ガス(LNG)、メタノールといった燃料のタンクの生産能力を高める。同社の投資総額185億円に対し、61億円を補助金でまかなうなど、具体的な設備投資も始まっています。
檜垣氏は2025年6月には日本造船工業会の会長に就任。日本造船工業会では三菱重工業や川崎重工業、IHIなど重工系のトップが会長を務めていたが、専業造船では初の会長就任となっており、業界の変革期を象徴する人事とも言えます。
1兆円基金を活用した造船業再生は、日本の製造業復活のシンボルとしても注目されており、檜垣会長のリーダーシップの下で業界全体の競争力向上が期待されています。