2025-12-01 コメント: 1件 ▼
日本、フォトレジスト対中供給停止か 半導体素材の世界支配力浮き彫り
この報道の衝撃が大きいのは、フォトレジストが半導体製造というサプライチェーンの根幹にある基幹素材だからだ。 フォトレジストの供給が止まれば、中国の半導体生産にとっては「飯の炊けない釜」、つまり根本的な生産停止のリスクにつながる可能性がある。 つまり、フォトレジストは半導体産業の“命綱”だ。
日本による“フォトレジスト出荷停止”報道の意味
2025年12月1日、韓国メディアが「日本が中国向けのフォトレジスト(感光剤)の出荷を事実上、中断した」と報じた。報道によれば、これは中国大手半導体メーカーであるSMIC(中芯国際)やCXMT(長鑫存儲技術)らの生産に支障を与える可能性があるという。複数の外信も同様に「先月中旬以降、中国向け供給が全面停止されたようだ」と伝えており、日本政府や企業から公式発表はないものの、業界では既に“既成事実化”しているとの雰囲気だ。
この報道の衝撃が大きいのは、フォトレジストが半導体製造というサプライチェーンの根幹にある基幹素材だからだ。フォトレジストの供給が止まれば、中国の半導体生産にとっては「飯の炊けない釜」、つまり根本的な生産停止のリスクにつながる可能性がある。
一方で、今回の動きを受けて韓国では「これは韓国半導体産業にとってチャンスだ」という見方が浮上しており、ネット上でも「高市、ファイト!」など、(おそらく日本の対応を支持する)声が目立っているという。
フォトレジストとは何か/なぜ重要か
フォトレジスト(Photoresist)とは、半導体製造で使う“感光性の化学材料(液体)”のことを指す。具体的には、高分子(樹脂)・感光剤・溶剤を主成分とする化学薬剤で、これをシリコンウエハー(半導体基板)に塗布し、回路パターンを光で焼き付ける「フォトリソグラフィ」という工程に使われる。
その工程はざっと以下の流れだ:まずウエハーにフォトレジストを薄く塗布する。次に、回路パターンが描かれた“フォトマスク”を用い、光を照射してパターンを写す。露光された部分(または逆に未露光部分)が化学反応で性質を変え、現像という処理で不要な部分を除去。これにより、マスクどおりの微細な回路パターンがウエハー上に形成される。
半導体の性能は、いかに微細で精密な回路を詰め込むかにかかっており、フォトレジストの質と技術がそのまま性能や歩留まりに影響する。つまり、フォトレジストは半導体産業の“命綱”だ。
また、フォトレジストには通常「ポジ型」「ネガ型」があり、用途や工程に応じて使い分けられる。近年の高精度半導体では、極紫外線(EUV)など短波長を使った微細化技術が使われるが、日本企業はこの最先端EUV用フォトレジストでも極めて高いシェアを握っている。
実際、世界のフォトレジスト市場の約9割が日本製とされ、特に最先端チップ向けの高機能レジスト市場では数社が事実上の供給“独占”状態だ。
つまり日本がフォトレジストの出荷を止めるということは、半導体産業の根幹を止める — 少なくとも中国の最先端半導体にとって壊滅的打撃となり得る。
今回の報道と世界の半導体サプライチェーンへの影響
今回の報道がもし真実なら、中国の半導体産業には即時かつ深刻な影響が予想される。なぜなら、多くの中国のファウンドリは日本製のフォトレジストに依存しており、代替品の確保は容易ではないからだ。ある分析では、EUVフォトレジストに関しては日本が100%供給してきたとされている。
この供給停止が長引けば、スマホやAI向け半導体、メモリなどの部品供給網に混乱が起きる可能性がある。世界全体の半導体市場、ひいては家電・通信・自動車産業にも影響が及ぶかもしれない。
一方で、この空白は半導体フロンティアを探す国や地域、企業にとってはチャンスだ。報道もあるように、韓国などが供給需要を取り込むことで、中国との差を広げる好機と見る向きがある。
ただし、フォトレジストは技術的に高度で代替が簡単とは言えないため、実際に韓国などが短期間で受け皿となれるかは未知数だ。
さらに重要なのは、このような材料制限が「一時的な措置なのか」、あるいは「長期にわたる供給制限の一環か」という点だ。日本企業や政府が今後どのような説明をするか、世界が注目している。
日本や世界にとっての意味とリスク
今回の報道は、単なる産業ニュースではなく、半導体を巡る国際競争、技術覇権、サプライチェーンの再編といった広範なテーマに直結する。
日本にとっては、自国の素材技術の強さを示す機会になる一方で、供給停止を外交的・戦略的カードとして使うことで、国際的な批判や報復を招くリスクもある。
世界全体をみれば、半導体の供給不安が再燃することで、価格の上昇や供給遅延、人権・安全保障といった別次元の論争が噴出する可能性も否定できない。
今後、日本政府、供給企業、中国、そして韓国や米欧など他地域の産業界がどのように動くかで、半導体市場の構造そのものが大きく変わる可能性がある。
フォトレジスト供給停止は半導体界における“ゲームチェンジャー”
今回の報道は、日本が裏側で握る半導体素材を外交・経済安全保障の武器に使い始めた――そう捉えるべき出来事だ。フォトレジストのような“見えにくい”素材を、国家間の交渉材料とする。その意味で、これは半導体の今後だけでなく、国際秩序やサプライチェーンの再構築を示す“合図”かもしれない。
ただし、現時点で公式な確認はなく、不確定要素もある。今後の日本政府や企業からの説明、公的データの公開が鍵になる。読者も、過度な楽観や悲観をせず、慎重に状況を見守るべきだ。