2025-12-01 コメント投稿する ▼
津波警報で車避難5割超、検証なき「空振り」発令がオオカミ少年現象招く
地域は気象官署等と連携し、津波警報や津波注意報が持つ意味や現状における予測精度について、平常時から周知・啓発を行い、警報等の空振りを一定程度許容できる雰囲気の醸成が必要とされているものの、実際には「なぜ今回は問題なかったのか」という詳細な検証と説明が行われていません。
津波警報で車避難5割超 検証なき発令が「オオカミ少年」現象招く危険
内閣府が12月1日、2024年7月のロシア・カムチャツカ半島付近地震で津波警報が出た際の住民アンケート結果を発表しました。避難した人は23.5%で、うち半数超が自動車を利用し、約4割が渋滞に巻き込まれたことが判明しています。しかし、より深刻な問題は、現在の警報発令体制が抱える根本的欠陥にあります。
総務省消防庁によると、全国の自治体が出した避難指示の対象者は一時200万人以上に上り、広範囲にわたり、多くの人が猛暑の中で避難を余儀なくされたにも関わらず、実際の被害は限定的でした。岩手県の久慈港で1.3メートルの津波を記録し、北海道根室市と青森県八戸市、東京都の八丈島で80センチという結果でした。
半数超が車で避難する現実
アンケート結果によると、避難した人の移動手段は自動車が55.3%で最多、徒歩は39.1%でした。高さ40センチの水が階段に流れこんだ想定の実験で、激しい水流のなか実験者は流されないようにふんばるが階段は上れない状況があることを考えると、徒歩避難の重要性は明らかですが、実際の避難行動では車への依存が深刻です。
「また津波警報で大騒ぎしたけど、結局大したことなかった」
「猛暑の中避難して何もなし。次は信用しない」
「車で渋滞に巻き込まれて、むしろ危険だった」
「徒歩で避難しろと言われても現実的じゃない」
「何度も空振りだと、本当の時に誰も逃げなくなる」
「オオカミ少年」現象の危険性
最も懸念すべきは、オオカミ少年現象の危険で、カムチャツカ地震の津波警報が今後の注意報や警報を軽視する懸念があることです。誰しもオオカミ少年の童話を知っており、繰り返しの警報はやがて信頼を失い、人々はそれを無視するようになる恐れがあるのが現実です。
度重なる誤警報は警報の信頼性を低下させ、避難率を下げる一因にもなるが、この現象はイソップ童話の「羊飼いとオオカミ」の嘘つき少年になぞらえて「オオカミ少年効果」と言われている状況が深刻化しています。
検証と説明の不備が信頼失墜を加速
政府は空振りの事態を恐れず、発令基準に基づき発令すべきであり、そのためにも発令基準を具体的でわかりやすいものとして事前に設定しておくべきとの方針を示していますが、発令後の検証と住民への説明が決定的に不足しています。
地域は気象官署等と連携し、津波警報や津波注意報が持つ意味や現状における予測精度について、平常時から周知・啓発を行い、警報等の空振りを一定程度許容できる雰囲気の醸成が必要とされているものの、実際には「なぜ今回は問題なかったのか」という詳細な検証と説明が行われていません。
命を守る観点からの発令は正しいが
近年、台風や豪雨でも頻繁に避難指示(警戒レベル5)が発令されています。高齢者等避難は発令頻度も高く、発令されたものの実際に災害が発生しないという空振り状態になるケースも多いのが実情です。
避難指示等の発令は、住民の生命を守るための災害時における市町村長の重要な判断で、見逃しより空振りの方が良く、昼夜を問わず、あらゆる手段を用いて住民へ伝達すべきという基本方針は正しいものです。
しかし、災害情報を生産する上での技術的制約が大きく、見逃しも空振りも避けることはできない。見逃しを避けるには空振りが多くなり、空振りを恐れると見逃しが発生するという災害情報のジレンマが付随する現実があります。
検証と説明の徹底が信頼回復の鍵
避難指示等を発令した結果、被害が発生しなかったとしても、「空振りで良かった」と捉える住民意識の醸成を促進することが重要とされていますが、そのためには十分な検証と説明が不可欠です。
今回のカムチャツカ地震津波警報についても、なぜ予想より津波が小さかったのか、どの段階で予測精度に課題があったのか、今後の改善点は何かを詳細に分析し、住民に分かりやすく説明することが急務です。
4回に1回しか予測が当たらないと聞くと、2・3回予測が外れた段階で、また次も外れるんじゃないかと市民から信用されなくなる、いわゆる「オオカミ少年効果」が起こると危惧される状況を防ぐには、透明性の高い検証と丁寧な説明以外に方法はありません。
「命を守る」という大義名分だけでは、住民の理解と協力は得られません。科学的検証に基づく改善と、住民への誠実な説明こそが、真の防災体制構築の基盤となるのです。