2025-11-07 コメント: 1件 ▼
高市早苗首相「台湾有事は存立危機事態」と明言 日本の武力行使可能性を政府が初表明
日本が直接攻撃を受けていなくとも、中国の武力行使に対して、アメリカ軍とともに武力対応する可能性を政府として認めました。「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命・自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合には武力行使が可能とされ、2015年成立の安全保障関連法には「存立危機事態法」が組み込まれました。
台湾有事は“存立危機事態”
高市早苗首相は11月7日の衆院予算委員会で、台湾を巡る有事が生じた場合に「存立危機事態」に該当すると明言しました。つまり、日本が直接攻撃を受けていなくとも、中国の武力行使に対して、アメリカ軍とともに武力対応する可能性を政府として認めたものです。
歴史的背景と法制度の変化
これまでの歴代政権は、同盟国の戦争に参戦して武力行使する「集団的自衛権」の行使を憲法によって制限してきました。日本が武力行使できるのは、伝統的に「我が国に対する急迫不正の侵害」がある場合に限られていたからです。
しかし2014年7月、安倍晋三元首相が率いた政権は閣議決定でこの政府見解を変更。「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命・自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合には武力行使が可能とされ、2015年成立の安全保障関連法には「存立危機事態法」が組み込まれました。
首相答弁の内容と日中関係への波紋
質問に立ったのは、立憲民主党の岡田克也議員で、「台湾・フィリピン間のバシー海峡の海上封鎖」を例示して見解をただしました。これに対し高市首相は「中国による海上封鎖があり、米軍が来援し、それを防ぐための武力行使も想定される」と答弁。さらに「台湾を中国の支配下に置くために戦艦を使った武力行使が伴えば、どう考えても『存立危機事態』になりうる」と明言しました。
この答弁は、従来明確にされてこなかった「台湾有事」時の日本の武力行使可能性に対し政府が踏み込んだもので、日中関係・日米同盟双方に大きな影響を及ぼすとみられます。
論点とリスク:参戦の前提とは
首相表明は、「日本が被攻撃を受けなくとも参戦・武力行使が成立し得る」という転換を示しています。これにはいくつかの重大な論点があります。まず、台湾の位置づけです。日本政府が中国政府の「一つの中国」原則を尊重してきた以上、台湾に対する武力統一が直ちに「日本の存立危機」に該当するかどうかは、政府解釈次第です。
また、武力行使の判断基準、参戦の法制度上の整合性、さらには国際的な軍事的リスクが伴います。専門家は、あいまいな「存立危機事態」の概念が武力行使の歯止めを弱めかねないと警告しています。
さらに、台湾有事を想定した日本の軍事関与表明は、地域の緊張を高め、中国側の反発を強める可能性があります。社説では「参戦を軽々しく語るな」という批判も出ています。
結び:政府の説明責任と国民の選択
日本が主権国家として選択すべきは、武力行使を含む安全保障政策において明確なルールと説明責任を設定することです。今回の高市首相の答弁は、そのルールの枠を拡大する可能性を示しました。一方で、国民の意思や地域・国際社会との協調も欠かせません。武力行使を容認する方向性を政府が採る以上、何をもって「存立が脅かされる」のか、どのような場合に参戦するのかを明示すべきです。
日本の安全保障環境が激変する中、国民・議会・政府がともに「選択の責任」を共有することがこれまで以上に求められています。