2025-11-02 コメント: 2件 ▼
衆院定数50削減、自民・維新は過半数維持―中小政党に66%超の打撃、維新の「身を切らない改革」
自民党は195議席から179議席へ16議席減少し、維新は33議席から計212議席の維持にとどまり、両党で過半数を確保できるという試算です。 維新も同様で、大阪の19選挙区で全勝するという小選挙区での圧倒的優位性により、減少率は13.2パーセント程度に抑制されます。
定数削減で大政党は「損失を最小化」、小政党に打撃集中
自民党と日本維新の会の連立政権合意に盛り込まれた衆院定数削減政策について、毎日新聞の試算が新たな実態を浮き彫りにしました。維新が主張する比例定数50議席削減が実現した場合、自民と維新の両党で衆院過半数を維持できる一方で、中小政党への打撃は極めて深刻になることが明らかになったのです。この構図は、維新が掲げる「身を切る改革」という名目が、実質的には大政党による既得権益の維持に他ならないことを示唆しています。
毎日新聞の試算によれば、2024年の衆院選結果に基づき、比例定数を50削減した場合、総定数は現在の465議席から415議席に減少します。その結果、過半数ラインが現在の233議席から208議席に下がります。自民党は195議席から179議席へ16議席減少し、維新は33議席から計212議席の維持にとどまり、両党で過半数を確保できるという試算です。一見すると定数削減による損失は軽微に見えます。
比例代表で痛手、小選挙区で温存される大政党
試算の詳細を分析すると、定数削減の実質的な効果が浮き彫りになります。比例代表定数が現行の176から126に50削減された場合、自民党は比例で58議席から42議席に16議席減少します。一方、小選挙区では137議席の安定的な基盤を維持でき、全体では179議席にとどまります。
自民党の減少率を計算すると8.2パーセントに過ぎません。そればかりか、議席占有率は削減前の41.9パーセントから43.1パーセントへと微増しているのです。これは、削減対象である比例代表の減少幅が、より小選挙区依存度の高い中小政党の議席数に集中することを意味しています。維新も同様で、大阪の19選挙区で全勝するという小選挙区での圧倒的優位性により、減少率は13.2パーセント程度に抑制されます。
「定数削減なんて、結局大政党が有利になるだけじゃないか。本当の改革には程遠い」
「中小政党は比例で生き残っているのに、比例を削るってのは明らかに狙い撃ちだ」
「維新は身を切る改革なんて言ってるけど、本当は小政党を排除したいだけでしょ」
「自民と維新の議席数はほぼ変わらないのに、参政党や保守党がほぼ消滅するなんておかしい」
「民主主義の基本は多様な声が反映されることなのに、定数削減でそれが失われる」
参政党と保守党、消滅寸前に追い込まれる厳しさ
この政策の最大の被害者は明らかです。参政党は3議席から1議席へと66.7パーセントの削減を余儀なくされ、日本保守党に至っては2議席いずれもを失うことになります。公明党も26.1パーセント減、共産党も25.0パーセント減と、比例依存度の高い政党ほど深刻な打撃を被ります。国民民主党は16.1パーセント減です。
定数削減に伴い改選数1の選挙区が全体の7割近くを占めることになるという指摘も重要です。このような状況では、小政党は候補者が当選することが極めて難しくなり、実質的に政治参加の道が閉ざされることになります。一票の格差是正を名目に掲げた定数削減が、結果的には政治の多元性を損なう可能性が高いのです。
大阪での先例が示唆する「大政党の独占支配」
維新が連立合意に「12本の矢」の一本として定数削減を明記した背景には、大阪での実績があります。大阪維新の会は2011年、府議会の定数を109から88に削減し、その後さらに79へと約3割削減を実現しました。この定数削減により、改選数1の選挙区が大多数を占めるようになり、維新の圧倒的優位が固定化されたとの指摘も存在します。
大阪市議会でも同様の動きが見られており、2023年に81から70への削減が強行されました。大阪での経験は、定数削減が「身を切る改革」というスローガンの陰に、小政党排除と大政党の支配強化という戦略が隠されていることを示唆しています。
計算方式「アダムズ方式」の役割と限界
試算では現行制度で適用される「アダムズ方式」に基づいて定数配分が行われています。アダムズ方式は人口比を重視した公正な配分方式として知られていますが、定数削減下では、この方式であっても小選挙区の多い地域に配分が集中し、比例代表の削減幅が大きくなるという特性があります。全国11ブロックで各2〜8議席が削減されますが、最大削減幅の8議席は近畿ブロック、最少は北海道と四国ブロックの2議席です。
政党間の力関係が固定化される懸念
立憲民主党も、小選挙区で104議席の安定的な基盤があるため、減少率は全政党で最少の6.1パーセント減に抑制されます。つまり、小選挙区で支持基盤を有する大政党は、定数削減の影響を相対的に軽減できる構造になっているのです。この仕組みの下では、既得権益を有する政党はさらに強固になり、新興政党や多元的な政治勢力の参入がより困難になる可能性が高まります。
維新が連立合意の「絶対条件」として定数削減を掲げたことの背景には、大阪での成功体験に基づき、国政レベルでも同じ戦略を適用できるという確信があるとみられます。ただし、毎日新聞の試算結果が示すように、その実効果は大政党による政治支配の強化に帰結する可能性が極めて高いのです。民主主義の基本である多元的な声が政治に反映される仕組みが失われることへの懸念は、今後の国会審議において重要な争点になるべき論点です。