2025-11-01 コメント投稿する ▼
岸博幸氏、日中首脳会談を「大成功」と評価―30分の会談時間が示す中国の判断
同氏の官僚時代の外交交渉経験を踏まえ、中国側が高市首相との会談に30分を割いたことの戦略的意味を指摘しました。 岸氏は「重視する相手に対する最低限の時間」と述べ、会談時間の長さそのものが相手国の扱う姿勢を示す重要な指標であることを説明しました。 それにもかかわらず、中国側が約30分間の会談に応じたという事実は、習近平国家主席が高市首相を「無視できない存在」と考えた証だと分析しています。
会談時間に込められた戦略的な意味
岸氏は同番組で、この日中首脳会談を高く評価する根拠として、会談時間に最も注目したと説明しました。同氏の官僚時代の外交交渉経験を踏まえ、中国側が高市首相との会談に30分を割いたことの戦略的意味を指摘しました。
これは石破茂前首相の約35分とほぼ同等の時間です。岸氏は「重視する相手に対する最低限の時間」と述べ、会談時間の長さそのものが相手国の扱う姿勢を示す重要な指標であることを説明しました。
「高市さんが習主席と直接対話できたこと自体が国益につながる」
「わずかな会談時間でも、日本が言うべきことを言えたのは大きい」
「中国側が見直す相手だと判断したから時間をとった」
「タカ派イメージがある中で、これだけの時間をもらったことは成果」
「日本の立場をしっかり表現できた30分だった」
習主席からの祝電がなかった重要性
岸氏は、高市首相が首相就任直後に、中国の習近平国家主席からの祝電を受け取らなかった事実を重視します。通例では、新首相就任時に中国指導部から祝電が送られるのが慣例です。祝電が来なかったことで、会談時間はさらに短縮される可能性もあったと指摘しました。
それにもかかわらず、中国側が約30分間の会談に応じたという事実は、習近平国家主席が高市首相を「無視できない存在」と考えた証だと分析しています。高市首相のこれまでのタカ派的発言があるにもかかわらず、中国指導部が直接対話の道を開いたことの戦略的背景を読み取ることが重要だとしています。
複合的な外交要素が動いた
岸氏は、中国側が会談に応じた背景に、複数の国際的要因があると分析しました。最も重要なのは、中国にとってアメリカとの関係が最優先であることです。高市首相が直前にトランプ米大統領と会談し、日米関係の堅固さが確認されたことが、中国の判断に大きく影響したと述べています。
さらに、先週マレーシアで開かれたASEAN首脳会議での高市首相の活動も重要だと指摘しました。中国が取り込みたい東南アジア各国の間でも、高市首相の人気が高いことが明らかになったというわけです。こうした複合的な国際政治の要素が重なることで、中国側が対話姿勢を示したと分析しています。
限定的な会談時間での戦略的コミュニケーション
岸氏は、会談の実質的な内容にも言及しました。「30分には通訳が入るため、実際は15分の中で、時候のあいさつもあるので、本当の議論時間は10分程度」と指摘し、限定的な時間の中では、まともな議論は困難であることを述べています。
そのため、互いに「自分のスタンスをしっかり出すことが大事」だと説明しました。日本側は、尖閣諸島問題、レアアース供給問題、人権問題を含め、「中国側がいやがることを含めて全部言った」と述べています。同時に中国側も、歴史認識や台湾問題について日本に対する立場を表明しました。
戦略的互恵関係という総論の重要性
岸氏によれば、限定的な会談時間の中での対話の目的は、対立点を解決することではなく、双方の立場を確認し合うことにあります。岸氏は「お互いに言いたいことを言ってスタンスを確認し合ったような感じで、言いたいことは言っても、最後は『戦略的互恵関係』という総論があるので、うまくやっていきましょうとなる」と述べています。
つまり、具体的な合意は少なくても、相互理解と対話継続の道を開けたことが、戦術的には成功だということです。
日本的な外交的配慮との違い
最後に岸氏は、高市首相の外交スタイルについて、日本外交の伝統的な傾向との対比で評価しました。「日本人はこういうことは苦手で、外務省も意外と相手が嫌がることは言わせないが、(高市首相は)ちゃんと正直に言った」と述べています。
相手国が不快に感じる主張であっても、日本の立場を明確に伝える勇気が、中国側に対して日本の堅固な姿勢を示す効果につながるという指摘です。外交的な配慮と原則の堅持のバランスを、高市首相がうまく取ったことが、今回の会談を「大成功」たらしめたという評価です。