2025-09-30 コメント投稿する ▼
大分市入札妨害事件:元市議 山本卓矢に懲役1年6か月求刑
大分市が発注した除草などの業務委託の入札をめぐり、非公表の予定価格を市の職員から聞き出し、業者に伝えたとして、公契約関係競売入札妨害の罪に問われている元大分市議・山本卓矢被告(45)に対し、検察は2025年8月30日、大分地裁で懲役1年6か月を求刑しました。
事件の概要と求刑内容
大分市が発注した除草などの業務委託の入札をめぐり、非公表の予定価格を市の職員から聞き出し、業者に伝えたとして、公契約関係競売入札妨害の罪に問われている元大分市議・山本卓矢被告(45)に対し、検察は2025年8月30日、大分地裁で懲役1年6か月を求刑しました。被告は追起訴されたうちの2件について起訴内容を全面的に認めています。判決は9月28日に言い渡されます。
起訴状によれば、山本被告は2024年4月と5月に行われた大分市の指名競争入札、計20件の予定価格を公園緑地課の幹部職員らから聞き出し、市内2業者に伝え、そのうち2件を近い価格で落札させたとされます。検察側は「市議という地位を悪用し、入札制度の根幹を揺るがす行為だ」と主張しています。
関係者・背後の構図
事件には、造園会社「ヒロセ」の代表・廣瀬幸一容疑者(85)と役員・阿南美幸容疑者(59)も関わっており、共謀の疑いで起訴されています。起訴状によると、山本被告は市職員から秘密の予定価格を得た後、これをヒロセに流し、同社がそれを参考に他社をほんのわずかに下回る価格を提示して受注したとされています。
さらに、2025年7月にはこの事件の捜査で、市の関係職員2人が地方公務員法の守秘義務違反の疑いで書類送検されました。これにより、職員側の情報漏洩も併せて捜査対象となっています。市の側も、非公開だった入札予定価格の公表や制度見直しなど、再発防止策を打ち出しています。
大分市議会は6月13日に被告の起訴を受けて声明を出し、市民に迷惑をかけたことを謝罪。議員個々の倫理徹底と信頼回復に努める姿勢を示しました。
制度の脆弱性と社会的波紋
この事件の本質は、入札制度における「情報非対称性」と「公職者の倫理」にあります。予定価格は通常、業者に公表されず、入札参加者は競争を前提に価格を決めます。この非公表性が、今回のような不正の温床となった可能性があります。
一方で、予定価格を事前に公表する方針も、大分市は導入済みです。これに対して、市民団体からは「格好の目安になれば落札額が高止まりし、税金の無駄遣いにつながる」との懸念も出ています。入札制度を透明にすることと、価格競争を健全に保つことの両立が課題です。
さらに、こうした不正が「一部の事件」にとどまらず、過去事例も含めて構造的問題の表れではないかとの指摘が出ています。自治体・市議・業者が結託して談合的な仕組みを維持してきたという声も根強いです。
裁判の焦点と今後の展望
今後の裁判では、懲役刑の判断のみならず、共謀関係や情報漏洩先の全体像、公務員関与の有無、市への損害算定、被告らの反省・更生可能性などが争点になる見込みです。
また、入札制度改革の枠組みも注目されます。非公開方式を見直すか、予定価格公表制度を拡張するか、内部監査制度を強化するか、自治体ごとに対応が分かれる可能性があります。
市民・納税者としては、行政の透明性と説明責任を一層重んじる視点が求められます。議会・行政のチェック機能を強め、市民参加を拡充する制度面の改善も不可欠です。