2025-12-01 コメント投稿する ▼
経営管理ビザ改正で“ペーパーカンパニー”抑止へ
提供されたSNS投稿は、元都議/区議の 小坂英二 氏によるもので、東京・西日暮里で見かけた「SW OFFICE CENTER」というレンタルオフィスに関し、「56戸分の郵便受けがあり、企業名の多くが日本語ではない漢字」「部屋にカーテンがなく中が丸見え」「営業の実態が確認できない」などの観察を挙げ、「ペーパーカンパニー紛いの形で在留資格(経営管理ビザ)を取得し、外国人の受け入れが無秩序に増えている」
「登録オフィス=ペーパーカンパニー」の指摘と制度変化
提供されたSNS投稿は、元都議/区議の 小坂英二 氏によるもので、東京・西日暮里で見かけた「SW OFFICE CENTER」というレンタルオフィスに関し、「56戸分の郵便受けがあり、企業名の多くが日本語ではない漢字」「部屋にカーテンがなく中が丸見え」「営業の実態が確認できない」などの観察を挙げ、「ペーパーカンパニー紛いの形で在留資格(経営管理ビザ)を取得し、外国人の受け入れが無秩序に増えている」という問題意識を示しています。
このような指摘は、外国人起業家/法人設立を通じた滞在資格の運用における“抜け穴”あるいは“形式だけの会社”の存在への社会的懸念を反映しています。そして、こうした構造への対応として、2025年10月16日から日本の在留資格「経営・管理(ビザ)]の許可基準が大幅に改正されました。
新制度では、これまで比較的ハードルが低かった「資本金500万円または同等の事業規模」が「資本金(または投資額)3,000万円以上」に厳格化されました。さらに、単に資金力だけではなく、「常勤の従業員を少なくとも1名雇用」「申請者自身に管理経験(過去3年以上)または関連学歴(修士以上)」「申請者または従業員のうち少なくとも一人が十分な日本語能力(JLPT N2相当など)」という新要件が設けられています。また、事業計画の専門家による確認と、オフィスの実態(単なるレンタル・バーチャルオフィスではないこと)の証明が求められるようになりました。
この改正によって、“郵便受けだけの住所に会社を登記 → ビザ取得 → 実体なき存在で滞在継続”というこれまでの構造は、以前に比べてかなり厳しくなったと評価できます。つまり、今回の制度変更は小坂氏らが問題視する「見かけだけの会社」によるビザ取得の抜け道を塞ぐ目的であると、制度設計の観点からは理解できます。
指摘の妥当性と改正の限界
とはいえ、小坂氏の投稿内容(郵便受けの数、外国語表記、多数の登記企業、オフィス内部の様子など)はあくまで“外観”の観察に過ぎず、それだけで不正あるいは違法を断定するには不十分です。レンタルオフィスには、複数企業が入居し、共有設備を使う形式をとる正規の企業も少なくありません。また、たとえ営業が目に見えなくても、国際的な取引・ウェブビジネス・サービス提供など、外からは分かりづらい事業を行っているケースもありえます。私見として、「見た目だけで“ペーパーカンパニー”と決めつけるのは危険」です。
しかし、新制度はまさにこのような“形だけ → 実態なし”の可能性を排除するために設計されたものです。資金、雇用、言語、事業計画の実態証明といった要件により、正真正銘の実体ある法人・事業でなければビザを得られず、また更新時にも実態の検査が強化されることになりました。これにより、制度の信頼性が高まり、不正利用を減らす可能性があるとみられます。
ただし同時に、この改正は、本気で起業・事業をしたいが資本金や人件費を抑えたいと考えていた外国人起業家や小規模事業者にとっては大きな参入障壁になる恐れがあります。つまり、制度の堅牢性を高めることで、スモールビジネスや個人起業のハードルが上がってしまう――この「質」と「量」のトレードオフは無視できません。
論点としての留意点
今回の制度改正は、外国人起業家の受け入れを形だけではなく実質で評価するものとして前向きに評価できます。社会に負担をかけずに、きちんと事業を運営し、税・労働・社会保険などの義務を果たす企業のみを対象とすることで、日本社会の信頼を守る狙いがあります。
一方で、こうした厳格化をもって「外国人起業家の門戸を閉ざすべき」とするのは、過剰な反応です。必要なのは、制度の透明性と公平な審査――そして、真摯に事業を行おうとする人々に対する理解と支援――だと考えます。
また、今回の改革は「新規申請」には即時適用されますが、既にビザを持つ人には2028年までの猶予期間が設けられています。この点を踏まえると、制度移行に伴う混乱や駆け込み申請の可能性も残ります。
今回の議論と今後の視点
小坂英二氏が指摘したような「レンタルオフィスで多数の会社が登録されている」ような状況が、制度の不備に起因していたのは事実かもしれません。だが、2025年10月の経営・管理ビザ基準改正によって、そのような“見せかけの会社”や“紙だけの法人”によるビザ取得の抜け道は、かなり厳しく制限されることになりました。
それでも重要なのは、制度だけでなく運用の透明性と厳格な実態確認です。申請された企業が本当に事業活動を行っているか、適正な雇用と税・社会保険を維持しているか、必要に応じて行政が監査し続ける必要があります。
また、外国人起業家の中には、十分な資本金や人材を用意できず、しかし実際に価値ある事業を起こそうとする人もいるでしょう。そうした層が排除されすぎず、日本経済や地域社会に貢献できる環境をどう確保するか――制度の「抑止力」と「起業支援」のバランスが、これからの重要なテーマとなります。