2026-01-15 コメント投稿する ▼
奈良市新ごみ処理施設で提言書撤回、住民合意なき候補地選定の限界露呈
奈良市の新ごみ処理施設(クリーンセンター)の建設候補地を巡り、明治地区自治協議会が2026年1月15日、神殿町周辺の調査受け入れを検討する考えを示した提言書を撤回する文書を仲川元庸市長と市議会議長あてに提出しました。
奈良市新ごみ処理施設
明治地区自治協が提言書を撤回、住民合意なき候補地選定の限界露呈奈良市の新ごみ処理施設(クリーンセンター)の建設候補地を巡り、明治地区自治協議会が2026年1月15日、神殿町周辺の調査受け入れを検討する考えを示した提言書を撤回する文書を仲川元庸市長と市議会議長あてに提出しました。一部住民らの反発を受けての判断で、撤回の文書では「地域の民意と大きく異なるものであり、提言書を白紙撤回させていただく」としています。
提言撤回を受け、市は学識者らでつくる同施設の策定委員会で今後の取り扱いを検討してもらう方針です。仲川市長は今月中にも策定委員会を開きたい考えを示しており、建設計画はまたも振り出しに戻る形となりました。
わずか1カ月余りで方針転換
明治地区自治協議会は2025年12月10日、神殿町地内を念頭に「エネルギー供給拠点」として施設を建設することで、災害時などの防災機能強化や雇用創出など地域課題が解消される可能性があるとして、「受け入れの是非を検討する余地がある」とした提言を奈良市と市議会に提出していました。
この提言を受けて、12月25日には第71回クリーンセンター建設計画策定委員会(委員長:中川幾郎帝塚山大学名誉教授)が開かれ、神殿町を「検討地」として調査対象とすることを決定しました。策定委員会では、既に候補地とされていた七条町、北之庄町、大和田町の3カ所と同じ項目で評価を点数化した結果、数字もそれほど遜色ないと判断されていました。
しかし、地元の合意が得られていないとして、提言に反対する住民が市に意見書や署名を提出しました。住民からの強い反対を受け、わずか1カ月余りで自治協議会は提言の撤回に追い込まれる形となりました。
「自治協議会が勝手に決めたことで、住民の意見を聞いていない」
「ごみ処理施設なんて誰も欲しくないのは当たり前」
「一度決めたことを簡単に撤回するのは無責任では」
「市はもっと住民の声を聞いてから進めるべきだった」
「どこに建てても反対されるなら、いつまで経っても決まらない」
20年近く迷走する建設計画
奈良市の新クリーンセンター建設計画は、2006年2月に「奈良市クリーンセンター建設計画策定委員会」が設置されて以来、約20年間にわたって迷走を続けています。現在の環境清美工場は稼働開始から40年以上が経過し、老朽化が深刻な状況です。適宜改修しながら稼働を維持していますが、安定した稼働を続けることが厳しい状況になっています。
市は当初、大和郡山市など近隣の4市町とごみ処理の広域化を目指していましたが、各自治体の現施設の更新時期や財政規模の違いなどから、広域化の枠組みは破綻しました。その後、市は七条地区を最終候補地として建設計画を進めようとしましたが、地元住民の強い反対に直面しています。
2024年2月には、市が景観などに配慮した七条地区での新施設の基本計画案を公表し、事業費約450億円(土地取得費用を含まず)で2032年度の稼働を目指す方針を示しました。しかし、市議会は地元の反対や選定プロセスが不透明などとして、2024年度予算案から関連経費を削除しました。
住民合意の欠如が根本的問題
今回の提言撤回劇は、ごみ処理施設建設における住民合意の重要性を改めて浮き彫りにしました。明治地区自治協議会の内藤智司事務局長は撤回の際、「市長ならびに行政の皆さん、議長はじめ市議会の皆さん、策定委員会の皆さんにご迷惑をお掛けしたことに、深くお詫びを申し上げたい」と述べています。
しかし、問題の本質は自治協議会だけにあるのではありません。奈良市が候補地選定のプロセスにおいて、十分な住民説明や合意形成を行ってこなかったことが根本的な原因です。自治協議会の提言を受けて、わずか15日後の12月25日には策定委員会が「検討地」とする方針を決定していますが、この間に住民への十分な説明や意見聴取が行われた形跡はありません。
仲川市長は撤回を受けて、「策定委員会の意見を伺うということが、明治地区からいただいた提言書に対する対応の最初の一歩になるだろうと思います。合理的・客観的に考えてベターな選択肢を政治の判断としてやっていく。まさに今それが問われていると思います」とコメントしています。
候補地選定の透明性確保が不可欠
奈良市の新クリーンセンター建設計画は、策定委員会が候補地として選定した七条町、北之庄町、大和田町の3カ所についても、調査費8600万円の予算が市議会の特別委員会で継続審査となっています。どの候補地でも地元住民の反対が強く、計画は一向に前進していません。
市は「迷惑施設」からの脱却を目指し、焼却施設やリサイクルセンターのほか、農園やレストランも整備する計画を示しています。新クリーンセンターから生まれる資源やエネルギーを活用し、建物の屋上を広場として開放するなど、SDGsや地域の資源循環の発信拠点として整備する構想です。
しかし、どれだけ立派な施設計画を示しても、住民の理解と合意が得られなければ建設は実現しません。市は候補地選定のプロセスを根本から見直し、情報公開の徹底、住民説明会の充実、合意形成のための十分な時間の確保など、透明性と丁寧さを最優先すべきです。
今回の提言撤回は、拙速な候補地選定がいかに無意味であるかを示す事例となりました。奈良市には、住民の声に真摯に耳を傾け、時間をかけてでも納得のいく候補地選定を行うことが求められています。