2025-06-10 コメント投稿する ▼
通学路の時速30キロ規制は有効策と林官房長官 交通白書で安全対策の重要性強調
林官房長官「子どもの命を守るのが最優先」 生活道路の安全強化へ連携呼びかけ
政府は6月10日、2025年版「交通安全白書」を閣議決定し、同日記者会見に臨んだ林芳正官房長官は、「通学路などの生活道路における安全対策の徹底が必要不可欠」と述べ、歩行者の安全確保に向けて地方自治体や関係機関との連携強化に意欲を示した。
とくに、通学路などの最高速度を30キロに制限する「ゾーン30」については、「歩行者の安全を確保するため有効な対策だ」と明言。物理的に車の速度を抑えることで事故そのものの発生を防ぐだけでなく、事故が起きた際の致死率を大きく下げることができるという点に着目した発言だ。
「こうした取り組みは、次世代を担う子供のかけがえのない命を交通事故から守る上で非常に重要だ」とも強調し、安全対策を国家の重要政策として推進する構えを明確にした。
千葉・八街の悲劇を契機に 白書では対策100%実施と記載
交通安全白書では、2021年6月に千葉県八街市で発生した痛ましい飲酒運転事故に触れられている。この事故では下校中の小学生5人が死傷し、通学路の安全対策が全国的な課題として再認識された。
この事故を受けて、政府と地方自治体は緊急的な安全点検と対策を進め、2023年度末までに全国すべての対象箇所で暫定的な措置を含めた対応が完了したと報告された。白書では、この迅速な取り組みが「実効性のある対策として機能している」と評価されている。
林官房長官は「事故が起きてからでは遅い。未然に防ぐための制度や設備が整って初めて、子どもたちが安心して歩ける社会が実現する」と述べ、今後も予防的な交通政策の重要性を訴えた。
「ゾーン30」では死者ゼロ 実績に裏付けられた有効性
交通安全白書によると、2020年から2024年までの間に発生した小学生の歩行中の交通事故のうち、「ゾーン30」区域内での死亡事故は一件も報告されていない。これは、速度規制による事故の抑制効果を裏付けるデータであり、全国の自治体にとっても施策推進の後押しとなる材料だ。
ゾーン30とは、住宅地や学校周辺の生活道路で最高速度を時速30キロに制限し、速度抑制効果のある物理的対策(ハンプやカラー舗装)とセットで導入される区域設定のこと。警察庁と国土交通省が連携し、全国で段階的に整備が進んでいる。
「ゾーン30の整備は本当にありがたい。朝の登校時も安心感がある」
「子どもの命を守るために、車の利便性より優先されるべき」
「事故が起きないデータがあるなら、もっと早く全国導入してほしい」
「30キロ制限だけでなく、抜け道化の防止もしてほしい」
「歩行者側にも意識向上が必要。学校と家庭での教育が鍵」
こうした声が示す通り、ゾーン30に対する市民の期待は高く、生活道路における“安全の標準化”を求める意見が増えている。
課題は実効性のある運用と、地域による偏在の是正
一方で、ゾーン30の指定や整備が自治体によって進度に差があることも指摘されており、都市部に比べて地方部での導入率が低い傾向もある。加えて、標識は設置されていても、物理的な速度抑制装置が設置されていない地域では、実質的に速度違反が横行するケースも少なくない。
この点について林官房長官は、「関係機関が連携し、地域の実情に応じた柔軟な施策展開を進める」とし、地域格差の是正と運用強化の必要性を認めた。今後は、通学路のみならず、高齢者の多い地域、商業地、観光地などにも波及的に安全対策が求められていくだろう。
交通安全は一朝一夕で実現するものではないが、「子どもの命を守る」という国家的使命に対し、政府が本腰を入れて取り組んでいることが、今回の白書からは読み取れる。