2025-03-24 コメント投稿する ▼
退去時に47万円の請求も 公営住宅の高額修繕費問題が深刻化
■ 退去時に突然の高額請求
大門議員が示したのは、全国各地で発生している驚くべき事例だ。
- 愛知県の県営住宅では25万円
- 東京都の都営住宅では47万円
いずれも入居者に事前の説明がなく、退去時に突然請求されたという。
民間の賃貸住宅では、通常の使用で生じる劣化や損耗の修繕費は借主の負担とはならない(民法621条)。それにもかかわらず、公営住宅では「家賃が低いから」との理由で、入居者に負担を求める運用が続いている。国土交通省は2019年に「公営住宅では入居者負担も否定されない」とする事務連絡を出しており、それが自治体の高額請求の根拠となっている。
■ 鹿児島では「30~40万円が目安」と明記
鹿児島市の市営住宅では、さらに驚くべき事例がある。募集案内に、退去時の修繕費について「30万~40万円が目安」と明記されているのだ。しかも、多くの入居者が支払う敷金では全く足りない水準になっている。
大門議員は「所得が低くて生活が苦しい人が、公営住宅に住めるのが本来の制度の趣旨なのに、退去時に高額請求されるなら怖くて入れない」と指摘。「公営住宅の原点が問われる問題だ」と訴えた。
■ 国交省は「自治体の判断」と責任回避
これに対し、中野洋昌国土交通副大臣は、「指摘された事例は調査するが、原状回復費用の具体的範囲は各自治体の判断に委ねられている」と述べ、国として明確な対応を示さなかった。自治体ごとに対応が違うため、一部では極端な高額請求が発生しているのが現状だ。
■ 実際の負担額、各地でバラつき
実際、公営住宅の修繕費負担の問題は全国で起こっている。
- 鹿児島県 → 退去時に70万円の請求があったケースも
- 埼玉県 → 県議が国交省職員と懇談し、問題視
- 島根県 → 畳やふすまの修繕費を入居者負担とする運用に不満の声
このように、自治体によって修繕費の請求額には大きな差があり、住民からの不満が噴出している。
■ 法律的に問題はないのか
弁護士の高橋辰三氏は、「公営住宅であっても、通常損耗や経年劣化による修繕費は入居者の負担義務の範囲外である」と指摘する。民間の賃貸では当然のルールが、公営住宅では適用されず、弱い立場の入居者が不当に負担を強いられているのではないかという疑問が浮かぶ。
■ 住み続けるのも出るのも負担
公営住宅は、生活に困窮する人々の最後の砦であるはずだ。しかし、現実には「住み続けるにも負担」「出て行くのも負担」という状態になっている。
今後、政府や自治体は、原状回復費用の基準を明確にし、過剰な負担を抑えるためのルールづくりを求められることになるだろう。