2025-09-12 コメント投稿する ▼
対米80兆円投資は国民負担の危機 公的資金依存と「ポピュリズム外交」批判が噴出
日本政府は7月、米国との間で半導体や重要鉱物、人工知能(AI)分野などに総額5,500億ドル(約80兆円)の投資枠を設定する合意を交わしているが、その資金は国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)の保証を伴う公的資金に依拠しており、国民負担につながる可能性があると指摘された。
対米80兆円投資への懸念が参院で噴出
参議院予算委員会は12日、日米関税合意に関する集中審議を実施し、日本共産党の大門実紀史議員が、日本の対米投資について厳しく追及した。日本政府は7月、米国との間で半導体や重要鉱物、人工知能(AI)分野などに総額5,500億ドル(約80兆円)の投資枠を設定する合意を交わしているが、その資金は国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)の保証を伴う公的資金に依拠しており、国民負担につながる可能性があると指摘された。
大門議員は「欧州連合(EU)の投資は基本的に民間主導であり、日本だけが公的資金を大規模に投じている。国民に負担を生じさせない仕組みでなければならない」と強調した。
「80兆円もの資金が米国に流れるのに、日本の利益が見えない」
「国民の税金で米国の雇用を支えるのか」
「法に照らして不採算なら拒否できるのか疑問だ」
「米国の選挙対策に日本が利用されてはいけない」
「投資の成果やリスクを国民に可視化すべきだ」
投資決定の仕組みと日本側の発言権の制約
今回の枠組みでは、投資案件は米国が設置する「投資委員会」が推薦し、大統領が最終的に選定する。一方、日本は前段階の「協議委員会」で意見を述べることはできるが、最終決定には関与できない仕組みとなっている。大門議員は「日本側が発言できる場は形式的にとどまり、実質的な影響力を行使できない」と指摘した。
国際協力銀行法(JBIC法)には、採算の見込みがない案件には投資できないと明記されているが、大門議員は「米国から『将来メリットになる』などの理由で押し付けられた場合、日本は拒否できないのではないか」と懸念を示した。
政府答弁と国会での論点
これに対し、加藤勝信財務相は「JBICの投資はあくまで法の規定に沿って行う。日本政府として必要な主張は当然行う」と答弁した。しかし、投資資金は米商務省が設立したファンドに振り込まれ、そのファンドが各プロジェクト(SPV=特別目的事業体)に投資する仕組みであるため、日本が事後的に監督する権限は限定的だ。
大門議員は「日本の資金で投資されたプロジェクトに焦げ付きが出た場合、誰が責任を取るのか」と追及し、リスクが高い仕組みであると批判した。
トランプ大統領の発信と国内世論への影響
トランプ大統領は今回の投資枠についてSNS上で「日本の資金でラストベルトの製造業に数十万人の雇用を創出する」と強調した。米国国内では選挙戦を見据えた雇用対策としてアピールされているが、日本側には経済的リターンが不透明なままである。
日本国内でも「巨額の公的資金を米国の選挙向けに利用される危険性がある」「国益との整合性が見えない」といった声が広がっている。今回の合意は、対米関係を重視するあまり国民への説明が十分になされていない点で、批判が強まっている。
日本国民に求められる説明責任と投資の正当性
80兆円という巨額の投資は、日本の財政や国民負担に直結する問題である。国際協力銀行法の理念に沿って採算性を厳しくチェックし、投資の透明性を確保することが不可欠だ。さらに、海外援助や投資については「どのような国益があるのか」を明確に示し、国民に成果を報告する仕組みを整える必要がある。
日本の投資が米国の国内政治に利用されるような形で行われれば、「ポピュリズム外交」との批判は免れない。政府には、巨額の資金が国民生活にどう還元されるのかを明確に説明する責任がある。