2025-05-20 コメント投稿する ▼
共同親権パンフにDV支援者が懸念 仁比議員が修正求めた理由とは?
「共同親権」広報に支援現場が懸念 仁比議員が法務省パンフの見直し要求
離婚後の子どもの養育を巡る「共同親権」をテーマに、国会で支援現場の不安が取り上げられた。5月20日の参議院法務委員会では、日本共産党の仁比聡平議員が登壇。法務省が発行した共同親権に関するパンフレットの文言が、DV(家庭内暴力)被害者や子どもを支援する立場から見て深刻な誤解を招いていると指摘した。
DV避難を妨げかねない文言に支援団体が危機感
法務省のパンフレットには、父母双方が「子どもの利益のために互いに人格を尊重し協力すべき」との原則が書かれており、その義務違反の例として「一方の親が特別な理由なく他方に無断で子どもを転居させること」が挙げられている。
仁比議員はこの記述に対して、DV被害者が子どもと共に避難するという現場で必要な行動すら「義務違反」と捉えられる可能性があると警鐘を鳴らした。また、この内容が「母親の連れ去り」などと攻撃する保守的な意見の根拠として利用される恐れもあると訴え、文言の修正を強く求めた。
法務大臣は柔軟な対応を説明 しかし現場の不安は拭えず
これに対し、鈴木馨祐法務大臣は、「DVや児童虐待がある場合は、無断で子どもを避難させても義務違反にはならない」と説明。具体的なケースに応じて柔軟な判断をするとし、「立証責任をどちらかに課すという趣旨ではない」と答弁した。
しかし仁比議員は、大臣の答弁がいくら現場を尊重するものであっても、パンフレットの文言そのものが現場の支援活動に混乱をもたらしていると強調。DVは「協力義務違反の最たるもの」であるという認識を周知徹底する必要があると重ねて訴えた。
改正民法と共同親権 施行前に残された課題
改正民法では、2026年にも共同親権制度の施行が予定されており、父母の合意がなくても裁判所の判断で共同親権が認められる可能性がある。だが、実際に運用が始まる前から、DVなど家庭内にリスクを抱える当事者にとっては制度の不備や懸念材料が指摘され続けている。
「子どもの利益」を中心に据えた制度設計であっても、それが必ずしもDVや虐待など、家庭内の危険から子どもを守る方向に働くとは限らない。現場の支援者からは「安全確保が最優先されるべきだ」との声が上がっており、制度導入と同時に支援体制や情報発信の質も問われている。
ネット上でも「支援現場の声を反映せよ」と共感の声
SNSでも今回のやりとりに注目が集まり、DV被害者支援を重視すべきとの意見が目立った。
「共同親権は理想論に聞こえるけど、DV家庭では機能しない」
「パンフレットの文言一つで現場は混乱する。支援者の声を聞いて」
「DV被害者に『協力義務』なんて押し付けるのはナンセンス」
「逃げる判断を罪のように捉えられるのは恐ろしい」
「当事者の視点で制度を運用してほしい。形式だけでは守れない」
これらの反応は、支援現場の声が制度設計や広報物に十分反映されていない現状への警鐘といえる。
施行までに必要な対応と社会的理解の拡充
共同親権制度の施行を前に、政府には明確なガイドラインの整備や、DV被害者が安心して逃げられる環境の整備が求められている。パンフレットの文言一つにも配慮が必要で、形式的な原則よりも当事者の実情に沿った周知・啓発が不可欠だ。
子どもを守るための制度であるならば、その制度が誰かの安全を脅かす道具になってはならない。立法と行政、そして社会全体が、子どもの福祉と被害者の尊厳を守る視点で連携し直すことが求められている。