2025-06-11 コメント: 1件 ▼
井上哲士議員が学術会議法案に反対討論 「自由な学問を奪う解体法案」と強く批判
共産・井上哲士議員が学術会議法案に反対 「政府に従属しない学問」守る最後の砦
6月11日、参院本会議にて日本共産党の井上哲士議員が、日本学術会議をめぐる政府提出の改正法案(いわゆる「解体法案」)に対する反対討論を行った。井上議員は、今回の法案が学術会議の独立性を根底から奪うものであり、「戦争する国づくり」に加担させる企図だと強く批判した。
討論の冒頭で井上氏は、2020年に当時の菅政権が6名の学術会議会員の任命を拒否した問題を取り上げ、「そもそも首相による任命は形式的である」という従来の法解釈を政府が一方的に変更し、それを根拠に任命を拒否したことは「明白な違法行為」だと断じた。
黒塗り文書と説明責任の欠如が疑念を拡大
井上議員はまた、法解釈変更の過程が記された行政文書の多くが黒塗りで開示され、任命拒否の理由も一切明かされていない点に言及。透明性を欠いた政府対応に対して、「違法行為を是正せずに法案を進めるなど到底容認できない」と厳しく糾弾した。
さらに、学術会議に対する批判の世論を意図的に煽り、本質的な問題から目をそらす政府の姿勢も問題視。「特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は解任できる」との坂井学大臣の答弁を引き合いに出し、「政府にとって都合の悪い学者を排除するための法案に他ならない」と非難した。
「なぜ黒塗りにする必要があるのか。隠す時点でやましいことがある証拠」
「気に食わない学者を排除する国、まるで戦前に逆戻り」
「任命拒否の件をうやむやにして法案を通すなんて本末転倒」
「独立性って言葉がこれほど空虚に響く政府答弁」
「今の政府には『学問の自由』の意味がまったく通じていない」
戦時下の科学利用と憲法理念との断絶
井上氏は、1943年に出された「科学研究は大東亜戦争の遂行を唯一絶対の目標とする」との閣議決定を取り上げ、日本の科学が過去にいかに戦争遂行のために利用されたかを振り返った。その痛苦の歴史的反省を込めて設立されたのが日本学術会議であり、「政治に従属しない学問」の象徴として位置づけられてきたと語った。
その上で、今回の法案が学術会議の設立理念を象徴する現行法前文を削除しようとしていることに対し、「政府が戦前の教訓を忘れ、学術を再び国家の道具にしようとしている」と警鐘を鳴らした。
これは単なる制度改革ではなく、戦後民主主義の根幹に関わる重大な転換であり、「科学を軍事や経済に従属させる立場が、憲法に基づく理念と真っ向から矛盾している」と断じた。
法案の「本質」は学術会議の解体であり、自由の破壊
井上氏は政府が「独立性は保たれる」と繰り返す説明に対し、「独立性・自主性・自律性を根こそぎ奪い、実質的に解体するものだ」と切り捨てた。新法案では会員の選考方法や予算の配分、人事のあり方に政府の意向が反映されやすくなると指摘され、結果として「政権の意向に沿う学問」だけが生き残る懸念が強まっている。
井上氏はまた、現在も国会議事堂前で「学問の自由を守れ」と声を上げる科学者や市民がいることに触れ、「この声は何をもってしても抑え込むことはできない」と語り、共産党として今後も闘いを続けると決意を述べて討論を締めくくった。
理念と現実のはざまで問われる「自由」の意味
確かに、現在の学術会議が閉鎖的で改革が必要だという指摘もある。しかし、改革の名のもとに「独立性」を骨抜きにし、学問の自由を統制しようとする動きがもしあるなら、それはまさに憲法21条が保障する表現・学問の自由に対する重大な侵害である。
「国家の意向に従う学問」は、学問ではなく、政策のための道具でしかない。政府にとって都合の良い研究だけが評価され、批判的精神を持つ知が排除される社会に、果たして創造性や進歩は期待できるのだろうか。そうした問いこそが、今この法案をめぐって国会に突きつけられている。