2025-07-01 コメント投稿する ▼
渋谷区が公道カートに届け出義務化へ 人気観光アクティビティの陰で住民の苦情相次ぎ対応
渋谷区が“公道カート”に届け出義務化
インバウンド人気の影で住民トラブル多発 地域共存へ第一歩
増え続ける観光カート、渋谷が規制に乗り出す背景
インバウンド観光客に人気の「公道カート」レンタル事業に対し、東京都渋谷区がついに一手を打った。7月1日から、区内で新たに拠点を構える事業者に対し、開設届の提出を義務付ける制度をスタート。走行ルートや車両ナンバーの提出、安全対策に関する誓約書の提出も求めるという。
罰則はないものの、届け出を怠った事業者については、渋谷区の公式ホームページで会社名や違反内容を公表する方針。実質的な“行政指導”といえる内容だ。
今回の措置は、観光振興と地域の安心・安全とのバランスをとる、いわば“共存策”だが、その背景には、地元住民から相次ぐ苦情や不安の声があった。渋谷スクランブル交差点や明治通り周辺では、外国人観光客がカートで列を成して走行する様子が日常風景となっていたが、マナーの悪さや騒音が度々問題になっていた。
「観光は歓迎だけど、爆音カートが住宅街を通るのは勘弁して」
「交差点で撮影会みたいに止まってるけど、危ないよね」
「正直、夜中にまで走られると眠れない。地元の暮らしも考えてほしい」
「楽しむのはいい。でも最低限のルールは守って」
「渋谷って観光客の街じゃなくて“人が暮らす街”でもあるんだよ」
事業者は6カ所、法の“すき間”突いた営業が常態化
渋谷区内には現在、4社が6つの拠点を構えており、多くが人気観光スポットを巡るルートを設定している。東京タワー、渋谷スクランブル、表参道、代々木公園などを回るコースは“非日常感”を味わいたい訪日客に好評で、SNSでも頻繁にシェアされている。
しかし、この公道カート事業、じつは現状では明確な法的規制が存在しない。
道路交通法上は「ミニカー」に分類され、普通免許があれば誰でも運転可能。ヘルメットの着用義務もなく、歩道ギリギリを車列で走行する光景に、住民が驚きと不安を抱くのも無理はない。
国の法整備が進まない中で、渋谷区が独自に条例を見直し、町づくりの観点から“届け出義務化”というローカルルールを設けたことは、一つの突破口といえる。
観光の自由と生活の秩序 難しい“線引き”に自治体が挑む
渋谷区の担当者は、「あくまで観光を否定するものではない。地域住民と観光事業者が共存できるよう、最低限の情報共有と誠意ある運営を求めたい」と語る。
今回の届け出制度では、新設事業者には必須だが、すでに営業中の事業者には“任意提出”とする緩やかな対応が取られている。これは、法的拘束力の乏しさや営業の自由との兼ね合いから、現実的な落とし所を探った結果だ。
今後は、区が収集した情報をもとに、苦情件数や走行ルートの安全性を見極め、段階的にルールの厳格化も視野に入れる方針だ。
ただし、区としては限界もある。根本的には国の立法措置、特に道路交通法や観光事業関連の法整備が求められており、区側も「国や都とも協議を進めていきたい」としている。
地域を巻き込む観光振興に必要なのは“共感と説明”
カート観光は確かに人気だ。写真映えする服装で、外国人観光客が都内を自由に走る姿は、エンターテインメントとしても魅力的だろう。しかしそれは、日常生活の舞台となっている「地域」の上に成り立っている。
観光は、単に“呼び込めば良い”という時代は終わった。
地域社会の理解と協力を得ながら進める観光の形こそが、これからの持続可能な観光の鍵となる。公道カートを取り巻く現状は、その転換点を象徴する出来事かもしれない。