2025-04-16 コメント投稿する ▼
ラピダス支援法案が参院審議入り 10兆円超の国費投入に「国民負担」の声相次ぐ
公的支援、10兆円超の可能性
ラピダスへのこれまでの支援額は、研究開発や試作支援などで約9,200億円。さらに今年度予算では8,000億円超の追加支援が盛り込まれており、すでに合計で1兆7,000億円を突破した。法案が成立すれば、政府出資や融資保証といった手段も可能となり、将来的には10兆円規模の公費投入が現実味を帯びてくる。
民間の出資は伸び悩み
ラピダスには国内有力企業8社が出資しているが、その総額はわずか73億円。量産化には5兆円が必要とされており、政府は銀行融資に対する保証などで資金面を支える方針だ。ただ、肝心の民間からの追加投資は進んでおらず、官民連携の実効性には疑問も残る。
「エルピーダの再来」との指摘も
この日の本会議では、日本共産党の岩渕友議員が質疑に立ち、過去のエルピーダメモリへの公的支援を引き合いに出した。エルピーダは破綻により277億円が国民負担となったが、今回の法案にはそれ以上の規模での公費投入が想定される。
岩渕氏は「失敗すれば国民負担は桁違い。企業の内部留保は合計で73兆円もある。まず出資企業が責任を負うべきではないか」と訴えた。また、ラピダスの経営陣のうち、会長と社長以外の12人の個人株主が非公開である点も問題視し、透明性の確保を求めた。
軍事利用への懸念も
岩渕氏は、2022年に経産省幹部が米国防総省などと面会した事実を示し、「何を話し合ったのかを明らかにすべきだ」と追及。ラピダスの東哲郎会長は「まずアメリカに届ける」と述べ、軍事転用の可能性を否定しなかった。武藤容治経済産業相は「販売先への制限は慎重であるべき」との答弁を繰り返し、「軍事利用を容認しているのでは」との批判に明確には答えなかった。
工場周辺の環境と生活への影響
北海道千歳市に建設中のラピダス工場をめぐっては、地価の高騰やPFAS(有機フッ素化合物)による水質汚染の懸念もある。市民団体が行った千歳川の採水調査では、すでにPFASの存在が確認されている。
さらに、周辺では泊原発の再稼働議論もあり、地域住民の間には「自分たちの生活や安全は本当に守られるのか」との不安が広がっている。岩渕氏は「住民の声に耳を傾け、十分な説明と配慮が必要だ」と訴えた。
政府は、2025年に試作ライン稼働、2027年に量産化を目指すラピダスを“国家プロジェクト”と位置づけ、巨額の支援を打ち出している。だが、その裏でくすぶるのは、巨額の公費投入による国民負担や軍事転用、地元への影響といった数々の懸念だ。今後の審議では、透明性と責任のあり方が改めて問われることになりそうだ。