2025-07-02 コメント投稿する ▼
文科省「博士課程支援を日本人限定」方針に学生・教職員が反発 国籍で切り捨てるなとの声広がる
博士課程支援「日本人限定」方針に抗議の声 国籍で差をつけるな、と教職員・学生らが反発
文部科学省が、博士課程に進学する学生を対象とした生活費支援制度「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」について、今後は日本国籍保有者のみに限定する方針を固めた。この見直し案をめぐって、「明白な国籍差別だ」として、学生や教職員、研究関係者から強い反発の声が上がっている。
突然の方針転換、背景に国会での指摘
SPRING制度は、研究に打ち込む博士課程の学生の経済的不安を解消するため、2021年から導入された。国が支援する金額は年間最大290万円に上り、研究費と生活費に充てられる。制度上、これまで国籍による制限は設けられておらず、留学生も対象とされてきた。
だが、今年3月、自民党の有村治子参議院議員らが国会で、「この制度は日本人学生を支援する原則を明確にすべきではないか」と問題提起。これを受けて文科省は、生活費支給にあたる年間最大240万円の「研究奨励費」部分について、今後は日本人学生に限定する方針を6月26日に開かれた有識者会議で明らかにした。
「“外国人留学生を排除”というメッセージにしか聞こえない」
「国籍ではなく、学問への貢献と志で評価してほしい」
「日本の研究環境そのものが閉鎖的になる」
「差別的措置」と大学側も反発
この報道に真っ先に声を上げたのが、新潟大学職員組合だ。中央執行委員会として出した声明では、「国籍を理由とした支援対象からの排除は、明白な差別行為であり、教育基本法・学問の自由にも反する」として、見直しに断固反対の姿勢を示した。
声明ではさらに、「留学生の存在は、地域大学の研究活動を支える生命線である」と強調。地方の公立大学では、博士課程への進学希望者の減少が深刻で、優秀な留学生の確保なしには定員充足が難しくなっていると指摘。「支援を断てば研究体制の維持すら困難になる」との危機感が広がっている。
学生たちもネットで抗議の声 署名活動や街頭アクションも
学生側からも迅速な反応があった。学費値上げ反対などの運動を続ける学生有志が、インターネット署名「博士課程の学生を国境で差別しないでください!」を立ち上げ、SPRING制度の「日本人限定」見直しに反対する署名活動を開始した。
東京大学教養学部4年の金澤伶さんは「博士課程に進む学生は、そもそも就職の見通しが不透明で、経済的にも非常に不安定な立場にある」と語る。「研究と生活の両立が難しい今、SPRING制度は多くの学生にとって“命綱”」だとしたうえで、「留学生こそ、日本と世界をつなぐ学術の架け橋。彼らの可能性を国籍で切り捨てるべきではない」と訴える。
この問題に関心を持つ大学院生や教員らの有志グループは、7月2日午後6時30分から東京都豊島区の池袋駅西口で街頭アクションを実施する。また、7月25日には文部科学省前での抗議行動も予定されている。
日本の研究の未来は「閉じたもの」でいいのか
現在、日本の大学院では、博士課程進学者が減少を続けており、そのなかで国際的な人材確保の重要性が叫ばれてきた。特に地方大学や理系研究室では、留学生の存在が研究活動そのものの維持に直結するケースも少なくない。
文科省の今回の方針について、ある大学教員は「これは、単なる制度の見直しではなく、日本の研究や教育のあり方に関わる重大な分岐点だ」と語る。
「博士課程に進むだけでも勇気が必要な時代。それに加えて、国籍を理由に支援を打ち切られたら、誰がこの国で研究しようと思うのか」
日本の研究と教育が、国籍にかかわらず、志を持つすべての人に開かれた場所であり続けられるのか――。社会の問いかけに、今まさに政治がどう応えるのかが試されている。