2025-06-09 コメント投稿する ▼
「税は財源ではない」に囚われるな──足立康史氏が語る“経済は財政に優先する”というマクロ経済運営の核心
マクロ経済運営における最も大事なテーゼは、“税は財源ではない”ではなく“経済は財政に優先する”です
と足立氏は断言。これは、アベノミクスを推進した故・安倍晋三元首相の経済哲学を引き継ぐものといえる。
足立氏は、「税は財源か否か」という議論において、その言葉の定義次第で見解が変わると冷静に分析する。すなわち、貨幣論的な観点からは税は「お金の生まれるもと」ではなく、日銀による信用創造が真の資金の出どころとされる。しかし一方で、国の会計制度においては税収が国庫に入ることから、税金が「政府の財布」としての財源であると見ることもできる。足立氏はこうした両義性を踏まえた上で、
表現されている財源という表面的な言葉を原理主義的に切り取って使っても、真っ当な政策論からは離れて行ってしまう
と述べ、単語の解釈にこだわるあまり、本質的な政策議論が空転する危険性を指摘した。
特に重要なのは、日本が長年にわたりデフレ傾向に苦しみ、個人消費や投資が低迷しているという現状だ。こうした経済環境下では、会計上の収支均衡にこだわるのではなく、国全体の需要を喚起し、成長と雇用を優先させる政策姿勢が不可欠である。
足立氏は、税や財政の「形式論」よりも、国民生活や経済成長に資する「実体論」に基づいた政策運営を求めており、それは財政の硬直性を乗り越え、景気回復を実現するための現実的アプローチと言える。
その背景には、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」の黒字化という目標に縛られて緊縮財政が続く一方で、物価上昇や賃金停滞が国民の生活を圧迫しているという現状がある。
マクロ経済環境を注視しながら、財源を巡る神学論争より高いレイヤーにあるテーゼを大切にすべき
と締めくくる足立氏の主張は、形式的な財源論争に終始する政治からの脱却を促すメッセージでもある。
日本が抱える課題──少子高齢化、経済成長の鈍化、デフレ圧力──を乗り越えるには、まず「財政赤字は悪」という固定観念から解き放たれなければならない。足立氏の主張は、経済政策の議論をより本質的な次元へと導く起点となり得る。