2025-10-24 コメント投稿する ▼
NEC製海底ケーブルがロシア軍に軍事転用、秘密調達網トップが2018年に本社訪問
この訪問は、ロシア国防省の仕事を受注していた時期と同時並行で行われており、秘密調達網の核となる人物がいかに大手企業に直接接近していたかが浮き彫りになっています。 NECはロシア国防省に近いとされるキプロスの企業「モストレロ・コマーシャル」に対し、2018年に全長750キロメートルの海底ケーブルを売却した事実を認めています。
秘密調達網の実態と企業への大胆な接近
ロシア軍がNEC製の海底通信ケーブルを軍事転用した疑いがある問題で、新たな実態が明かされました。日米欧にまたがる秘密調達網のトップのロシア人経営者がNEC本社(東京都港区)を2018年に訪問していたことが24日、同社への取材で判明したのです。クリミア半島併合後の経済制裁が強化される中、ロシア側は表と裏の顔を巧妙に使い分ける大胆な調達活動を展開していました。この訪問は、ロシア国防省の仕事を受注していた時期と同時並行で行われており、秘密調達網の核となる人物がいかに大手企業に直接接近していたかが浮き彫りになっています。
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した文書に基づき、共同通信を含む日米欧の報道機関による合同取材で判明しました。NECはロシア国防省に近いとされるキプロスの企業「モストレロ・コマーシャル」に対し、2018年に全長750キロメートルの海底ケーブルを売却した事実を認めています。販売額は17~18年の計約1400万ドル(約22億円)です。
調達網の構造と法的問題
モストレロ・コマーシャルは2011年にキプロスで設立され、代表は2人のギリシャ人女性とされています。しかし実態は、ロシア国防省と取引がある在モスクワの通信インフラ企業パースペクティブ・テクノロジーズ(UPT)と所有者が同じというペーパーカンパニーでした。UPTはロシア国防省やロシア連邦保安庁とも取引関係にあるとされています。
モストレロは約10年間にわたって西側諸国との取引を手掛け、ノルウェー国有の防衛大手コングスベルグの水中音響測位システムや英国製のソナーなど、欧州連合(EU)の輸出規制リストに掲載された最新機器を調達していました。これらの機器は北極圏バレンツ海に構築される海中監視システム「ハーモニー」の一部として、核ミサイル搭載の原子力潜水艦の防衛を目的に使用された可能性があります。
大量破壊兵器の開発、使用、貯蔵に用いられる可能性がある海底ケーブルなどをロシアに輸出する場合は、経済産業省への許可申請の対象となります。最終需要者や使用目的が実際と異なる場合は外為法に抵触する可能性があり、経産省が行政処分や行政指導に踏み切る可能性も出ています。
「日本の大企業がロシア軍に利用される製品を提供していたとは信じがたい」
「民生用途との説明で許可したはずなのに、これは大問題だ」
「制裁下でもこうした秘密調達網が機能するなら、日本の輸出管理は抜け穴が多すぎるのではないか」
「クリミア併合から制裁が続く中での出来事だから、政府も企業も注意すべきだった」
「他の日本企業も狙われている可能性があり、全業界で輸出管理を厳格化すべき」
時系列に見る経済制裁の空白地帯
2014年のクリミア半島併合後、日本政府を含む日米欧は対ロシア経済制裁を発動しました。日本は2014年8月に制裁を導入し、同年9月と12月に厳格化させています。当時の防衛大臣は小野寺五典氏で、その後2018年10月2日には岩屋毅氏が新防衛大臣に就任し、第4次安倍改造内閣で防衛政策を主導していました。
にもかかわらず、秘密調達網の活動は継続されていました。2018年時点でモストレロがNEC本社を訪問できたことは、ロシアの巧妙な迂回戦術と、民間企業の確認不足の双方を示唆しています。NECは「民生用途との説明を受けた」と述べていますが、キプロス経由の取引や大型海底ケーブルという性質からすれば、更なる慎重な審査が必要だったと指摘できます。
対ロシア経済制裁の実効性と課題
米財務省はロシアによるウクライナ侵略後の2024年10月、モストレロとUPTを制裁リストに追加しました。しかし、この時点ですでに2018年の販売から約6年が経過していました。秘密調達網は、ドイツで逮捕されたキルギス系ロシア人の物流会社社長(56)の公判をきっかけに発覚し、9月に禁錮4年10月の実刑判決を受けました。
この事件は、経済制裁下でも巧妙な企業間取引を通じてロシアが西側技術を入手できる仕組みが存在することを明白にしています。ペーパーカンパニーの活用、複数国を経由した輸送、民生用途を装った説明――こうした手法は個々の企業だけでは対抗しきれない面があります。同時に、日本を含む先進国の輸出管理体制に対する構造的な課題が浮き彫りになったといえるでしょう。
NECは事実関係を認めた上で「軍事利用されるとは考えていなかった」と説明していますが、国家による組織的な調達活動に対しては、政府と企業の連携強化と輸出管理の一層の厳格化が求められています。
 
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			       
			      