2025-10-14 コメント投稿する ▼
中国のレアアース輸出規制強化に岩屋外相が強い懸念、世界供給7割独占で日本に打撃
中国は10月9日に規制強化を発表し、米国などが反発していましたが、日本も世界のサプライチェーンへの影響拡大を懸念しています。 当初、スズキは生産停止の理由を公表していませんでしたが、中国によるレアアース輸出規制の影響であることが判明しています。 この問題は日本が初めて経験するわけではなく、2010年の尖閣諸島問題を発端とした中国によるレアアース輸出制限を世界に先駆けて経験していました。
岩屋毅外相は2025年10月14日の記者会見で、中国がレアアースや関連技術などの輸出規制を強化すると発表したことに対し、強い懸念を表明しました。中国は10月9日に規制強化を発表し、米国などが反発していましたが、日本も世界のサプライチェーンへの影響拡大を懸念しています。
世界供給の7割を中国が独占
岩屋氏は、中国には従来、輸出管理で日本を含む世界のサプライチェーンに影響を及ぼすことがないよう申し入れていると述べました。今回の措置で影響がさらに拡大することを強く懸念していると強調しています。
中国商務省が10月9日に発表した声明によると、中国産レアアースが使用された製品を輸出する外国企業は同省から輸出ライセンスを取得する必要があります。また、レアアースの採掘、磁石の製造、鉱物のリサイクルに関する技術も同省の許可がない限り禁止されます。
「レアアース規制は日本経済への直接攻撃だ」
「中国依存から脱却できない日本政府の責任は重い」
「尖閣問題の時の教訓が全く活かされてない」
「資源安保をもっと真剣に考えるべきだった」
「これがチャイナリスクの現実、企業は対策急げ」
軍事用途は原則不許可
軍事用途に関しては原則として許可されず、半導体の研究開発に使われる一部のレアアース製品については個別に審査を行うとしています。レアアースは自動車や防衛産業などハイテク分野で欠かせない素材としてさまざまな用途に使用されています。
中国政府が新たな規制をどのように施行するかは不明ですが、レアアースは米中間の貿易摩擦における対立点の一つであり、中国はこの分野での主導的な立場を対米交渉で活用してきました。中国は世界供給の約70パーセントを占めています。
今回管理対象となったのは、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの7種類です。単体だけでなく、酸化物、合金、混合物、化合物、永久磁石を含む関連製品も含まれます。
日本企業に実害が発生
レアアース規制の影響は日本も例外ではありません。すでに日本の自動車メーカーに実害をもたらしています。もっとも象徴的な事例がスズキです。報道によると、同社は小型車スイフトの国内生産を停止せざるを得ない状況に追い込まれました。
当初、スズキは生産停止の理由を公表していませんでしたが、中国によるレアアース輸出規制の影響であることが判明しています。この問題は日本が初めて経験するわけではなく、2010年の尖閣諸島問題を発端とした中国によるレアアース輸出制限を世界に先駆けて経験していました。
しかし、その教訓を活かした対策は十分に進んでいなかったことが、今回の事態で明らかになりました。日本は2010年当時、中国への依存度が90パーセントを超えていましたが、現在も依存度は高止まりしています。
精錬では中国が9割支配
レアアースの埋蔵量、生産量、精錬量における中国のシェアはいずれも世界1位であり、中国の影響力は圧倒的です。特に精錬部門になると、中国の市場支配力はさらに際立ち、90パーセント超を占めています。
レアアースは世界各地に存在するものの、高濃度で鉱石化された鉱床は限られます。さらに、レアアースはそれ単独の鉱石ではなく、他の鉱物や放射線物質に混ざって存在するため、分離が困難です。
精錬には希硫酸や硝酸などの大量の化学薬品を用いるため、環境負荷は極めて大きいものです。米国では1970年代以降、環境保護運動の高まりと規制強化が進み、さらに中国との価格競争も加わって、鉱山閉鎖が相次ぎました。
トランプ政権との交渉材料
中国は今回の規制強化を、近く予定するトランプ米大統領との会談を前に米国に揺さぶりをかける狙いがあるとみられています。トランプ米政権は米国の利益にとって重要であることから、4月に発表した相互関税からレアアースを含む重要鉱物を除外していました。
しかし、中国は6月のロンドンでの米中通商協議で、レアアース輸出管理の緩和と引き換えに、米国側がジェットエンジンなどの航空機部品や半導体などの輸出管理を緩和することに合意したとされます。中国のレアアース輸出管理カードによって、米中の関税戦争は事実上の休戦となりました。
中国工業情報化部は2025年8月22日、レアアース採掘・精錬分離総量調整管理弁法を施行したと発表しています。国家がレアアースの採掘、精錬、分離の全工程において総量を管理することを明記しました。
日本の対応は後手に
レアアースの供給途絶リスクは産業界に混乱を招いています。米中は通商協議の枠組みを設け、貿易戦争は事実上休戦となっているものの、輸出管理は強化しており供給リスクは残ります。
いま日本に問われているのは、安定供給の確保をどのように実現するかです。2010年の尖閣問題時の教訓を活かし、オーストラリアなど他国への投資や技術開発による使用量削減など、多角的な戦略が求められています。
しかし、日本政府の対応は後手に回っており、ドロ船政権の無策ぶりが露呈しています。資源安保は国家の根幹に関わる問題であり、中国依存からの脱却は急務です。企業任せにせず、政府主導での戦略的な取り組みが必要とされています。