2025-09-29 コメント投稿する ▼
外務省OB再就職に天下り批判 パソナや丸紅顧問就任で国民不信拡大
駐タイ特命全権大使を務めた人物はチャロン・ポカパングループ顧問、駐ポーランド大使経験者はパソナグループ顧問、駐パキスタン大使は日本・パキスタン協会副会長に就任している。 外務省は透明性確保のため再就職先を公表していると説明する。 しかし「情報公開しているから問題はない」という理屈では、国民の不信は払拭されない。
外務省OBの天下りが再び浮上
外務省は2025年9月、課長・企画官級以上の職員が2024年4月から2025年3月に退職後再就職した先を公表した。そこには人材派遣会社の株式会社パソナグループ、タイの巨大財閥チャロン・ポカパングループ、公益財団法人日本・パキスタン協会などが並んだ。大使経験者が企業顧問や団体幹部に移る構図は、かつて批判を浴びた「天下り」の典型と映る。
駐タイ特命全権大使を務めた人物はチャロン・ポカパングループ顧問、駐ポーランド大使経験者はパソナグループ顧問、駐パキスタン大使は日本・パキスタン協会副会長に就任している。さらに在ウィーン国際機関代表部大使は万博協会儀典長、駐エストニア大使は丸紅株式会社へ、在チリ大使は関西学院大学教授となった。外務省OBの肩書は強力な看板であり、国際的な信用を背景に企業や団体に取り込まれている実態が浮かぶ。
「企業の利益のための人脈利用だ」
「天下りは結局なくなっていない」
「大使経験者を顧問に迎える意味は何か」
「国民より企業優先の政治につながる」
「外務省は本気で規制する気があるのか」
利益誘導の疑念と国民不信
問題視されるのは、こうした再就職が国民の利益ではなく企業の便益につながる可能性である。外交官OBは各国政府や国際機関との強いネットワークを持つ。これを活用すれば企業の国際ビジネスは有利になるが、国益より私的利益を優先する危険性が高い。特に人材派遣や大財閥といった分野は政策と密接に絡むため、利益誘導の温床になりかねない。
外務省は透明性確保のため再就職先を公表していると説明する。しかし「情報公開しているから問題はない」という理屈では、国民の不信は払拭されない。むしろ「公然たる天下り」との批判が強まるだけだ。
天下り慣行の根強さ
国家公務員法は再就職規制を設けているが、抜け道は多く、省庁ごとに調整される実態がある。天下り批判は数十年繰り返されてきたが、外務省の今回の公表資料は制度の限界を改めて示した。民間企業が元大使を高待遇で迎える構造は変わらず、国民の目には「ドロ船政権」と結び付いた旧態依然の姿に映る。
再就職先の一部は公益団体や大学であり、経験の社会還元という見方も可能だ。しかし丸紅やパソナのように経済的利害が直接絡む企業に収まるケースは、国民に説明できる合理性が乏しい。結局「元外交官ブランド」を利用した人脈営業に過ぎないのではないかという批判が根強い。
改革なき公表は形骸化
公表制度だけでは天下りを止められない。むしろ「公開さえすれば許される」という免罪符になっている。外務省が国民の信頼を回復するには、退職後数年間は企業顧問などに就けない厳格な規制を導入する必要がある。併せて再就職の監視機関を強化し、違反時には罰則を科すべきだ。
外交官の知見は国民共有の財産であり、特定企業の利害に奉仕させてはならない。天下りの温存は政治と行政への信頼を損なう。国益を守るべき外務省こそ、自らの人事慣行を改める覚悟を示す必要がある。